影1
オルデス王国王都オルデス。
城塞都市エルドラからさらに西に位置する。王都は先々代の国王時代に多くの改変を行った際にできた都市の一つである。当時の王が居城する王城を王都の高台に置いた。そしてその周りを中心に各産業が発達していった形となる。改変と一言で現しても良かれ悪かれは必ず存在する。多くの国民にとっては良い方向に進んでいったであろう。悪い方向に進まざるを得ない者たちもいた。その一つとして古くから貴族として営んでいる者たちだ。改変は最初に貴族に目を向けられた。多くの貴族は制限を受け、中には地位を剥奪された貴族、最悪の場合は処刑(暗殺)された貴族もいた。しかしこの事実は情報操作という圧政により一般の国民には知られてはいない。知らなかった故に各々が比較的自由に営み今の輝かしい都市が、国が出来上がっていったのも事実だ。
王都オルデスは他の国に比べて珍しいモノがたくさんある。有名な所で言えば王城自身が当てはまるだろう。王城は石材だけではなく木材も使われている。そしてそれらには黒漆に近いモノで塗られており黒く輝いている。これらは先々代こだわりだ。他にもまだある。その一つが堀である。一般的にこの世界の国というと都市全体を高い壁で囲み中心に城を置くという都市がほとんどである。だが王都オルデスは高台にある王城を中心に3重の堀に覆われている。高い壁に囲われていないために都市の灯りは遠くから見てもひと目でわかる。その明るさ自由さが更に活気づけている循環である。初めて王都を見た者は明るさや活気の強さに驚いている。そして驚いた者達は皆口を揃えて言う。
「王都オルデスは眠らない」
眠らない――夜でも明るいというにも理由はある。それは先々代の王が昼間の太陽光を吸収し蓄えるという新しい魔法を生み出し魔術として広め魔導具を作り都市に配置した。この魔道具にはこの街を出たら使えなくなってしまうという先々代の魔法の制約がある。そしてこの魔法は先々代のオリジナルであるために解読することは不可能。まあ魔道具自体を盗もうと思えば盗めることは確かだ。明るいということは人だけではなくもちろん魔物や害を呼び寄せることもある。
そういった数々の面は他国からすれば防衛面に置いてあまりにも無防備や愚かだと今でも言われている。そして都市一番の愚かな場所に向かって歩いている女がいる。
女――見た目は一言で言えば美人。通り過ぎる者、皆思わず振り返ってしまう。身長は170ほど。年齢は20半ばくらいだろうか。銀色の長い髪を後ろで結び、細く尖った耳、青みがかった灰色の目、赤褐色とまではいかないがそれに近い色黒の肌。
長い黒いブーツを履き、太ももや巨大な乳房上部や肩周りは露出している。特殊な黒い服を着ている。もはや下着に近いというべきか。
そのような姿の美人が現れたなら釘付けになるのは仕方がないことだろう。だが彼女は、このようなことに慣れているのかと言わんばかりの立ち振る舞いで人混みの中を歩いていく。
歩けば巨大な乳房は揺れるが揺れるのは乳房ばかりではない。彼女の細長い耳には赤い大きめなピアス―――おそらく魔道具であろう。更に腰には2本の変わった形のしている剣を下げている。刀身は90センチほど。持ち手の下の部分が1本は飛び出ており、もう1本は凹んでいる。鞘も両方黒色である。
武器から発せられる威圧感は並大抵のモノではない。故に使い手である彼女もそれに近いであろう。だが素晴らしい美貌によりそこに目を向けることは一般人はないだろう。
剣を扱うから冒険者あるいは騎士であろうか。この世界は普通はそう考える。こんなに堂々と歩いていく彼女はそれはそうであろうと考えるだろう。だが彼女の職業は暗殺者――裏の人間だ。
彼女はまだ歩いていく。
暗殺者がこのオルデスで誰を殺すのであろうか。
その答えは殺さない。
彼女の今回の目的は殺しではないからだ。
では何であろうか?
―――招集がかかったからだ。
彼女が所属する組織から。
そして目的地にたどり着いた彼女は扉に手をかける。




