ザック兄弟4
ザック兄弟は緊張感に包まれていた。一撃でも受けたら次はない。そう思えば思うほどに張り詰められた空気を感じずにはいられなかった。
本来ならサードアイクラスの魔物に出会うことは死を意味するようなものだ。ハートという謎の男が幾度も攻撃を受け続けているおかげで、冷静さを保つことができている。だが冷静になり考えれば考えるほど体全体が訴えてくる。逃げろと。
しかし逃げるにも自分達兄弟だけでは無理だ。
マイヤーに至っては恐怖のあまりに喋ることも動くこともうまくはいかない。まずは弟をどうにかしなければ。
「マイヤー!怯むな!」
ザックの声が響く。
マイヤーは体を震えを感じつつもサードアイに目を向ける。
「一発だ!マイヤー!一発だけかませ。そしたら俺がなんとかしてやる。だから武器をしっかりと握れ!」
マイヤーは武器を構えて小さい声で返事をした。
ザックの耳にはきちんと届いていた。
――震えた小さな声が。
もちろん自身の体も震えている。
震えている原因―――恐怖からだ。
己自身も覚悟を決めなければならないと強く拳を握る。
「ハートいけるか?」
ハートは親指を立てる。
『ああ今度こそ任せろ。いくぜ』
「うおお」
3人はサードアイへと駆け出した。
サードアイからしてみれば向かってくる敵が3人に増えようが大差ないことだ。サードアイは雄叫びをあげる。
「ヴォォオオオオオ!」
サードアイは武器の能力を更に強めた。一瞬にして木々は見えなくなり霧煙に包まれていく。3メートル先が見えないほどの白さに覆われる。だがハートはきっちりとサードアイを捕らえていた。
『ハッハッハ!もうそれは効かんのだよデカブツ君』
サードアイからしてみれば向かってこようが同じように叩き潰すだけだ。棍棒をハートに振りかざす。躱すハート。そこに武器を出し変えた一撃が迫る。ハートに直撃しドゴォンと大きな音を立てた。
サードアイは確かな手応えを感じ地面を見た。だがハートはいなかった。どこに消えたのかというような表情。
必死に辺りを探す。すると自身の持つ武器の影から人影が。
武器に目をやるとハートが武器に引っ付いて――
―――サードアイは突如、顔に強い衝撃を受けた。
衝撃による痛みと共に吹き飛ばされて地面に倒れる。その痛みに声を上げざるを得ない。
「ヴォオォー」
ザック兄弟はこの隙を見逃さなかった。ザックがマイヤーの名前を呼びかけるとマイヤーが大きな鎚を光らせ倒れているサードアイの顎を全力で叩く。
〘ランページビート/猛る衝撃〙
マイヤーの鎚は顎――金属にでもぶつかったような音を立てる。
だが怯むことなくマイヤーはさらに全力で叩き続ける。
さらなる痛みにサードアイは吠える。そしてマイヤーを睨む。
「ヴォオオオオオオ!」
マイヤーへと棍棒を向け―――
ザックはここまで計算をしていた。
マイヤーに向けられることを。
そして魔法を唱える。
〘ゾーンオブクァグマイアー/泥沼の呼び声〙
サードアイの周りが一瞬に沼地となっていく。
沼地に沈みかけるサードアイ。
必死に沼地から出ようともがき始める。
ザックはそれも見越してさらに魔法を唱える。
〘ウォーターチェイン/濁水の鎖(水の鎖)〙
泥沼の中から泥の混じった水でできた鎖が飛び出しサードアイの手足を次々に拘束していく。サードアイは大きな声を上げ、抜け出そうと暴れ始めるがザックは冷静にハート達に声をかける。
「この魔法は長くは持たない。逃げるぞ」
『先に行ってくれ。後からすぐ追う』
ザックはハートに何かを言いたそうな顔をしていたがマイヤーと共にその場から抜け出した。ハートはすぐにサードアイに近づき腕を盾に変える。そして必死に泥沼でもがいているサードアイの顔面を殴り始めた。
『これは俺の分!これも俺の分!そしてコイツも俺の分だ!』
力強い音ともにサードアイの顔に衝撃が何度も走る。
サードアイの前に腕を組みながら語り始めるハート。
『正直に言おう。俺はお前を舐めていた。教訓になったよ見かけで判断してはイケないと。だが見かけ道理のままがいい時もあると思うんだ。お前はソレだ!』
ハートは腕を尖らせた。その形は先端から尖って広がっている。スコップに見た目は近い。そしてそのスコップにした腕をサードアイの額にある目の中に突き刺した。
『これは貰ってくぞ』
そして眼球を丸々ほじくり返した。
ゴキュっと大きな音が―――
そして激痛が襲った。
堪らずにサードアイは絶叫する。
「ヴァヴァアアアーアヴァーーー」
眼球は紫色の輝きを放ちハートの手に握られている。
そしてハートはその場を後にした。
『これ売れそうだよなーめっちゃキレイー』




