消滅1
帝国との戦にはまだ日がある。
街は戦に備えて王国騎士団が在中しているせいか少しピリついている雰囲気だ。シャルルも参加をして作戦会議もまた行われていることだろう。
ハートには関係ない話だが。
そしてそんなハートは暇つぶしのために街を散策している。
ある程度街を見て回ったので今は路地裏を歩いている所だ。
路地裏は思ってるよりも暗いな。
電気もないしこんな所に明かりをわざわざ付けるほどでもないか。見たところなにもないしな。
何かをないかと探しているがあるはずもなく。
目的もなくただ歩き続ける。そんな時―――
「おじさんなにしてるの?」
後ろから可愛げな声が。ハートは振り返る。
そこには片手に果物を持っている少し小汚い子が。
―――女の子
いつのまに?
おいおいそれよりもおじさんだと?
アラサーはまだお兄さんだろ!?
少々がっかりしながらハートは答える。
『ただ散歩してるだけだよ』
「ふぅん。こんな所何もないのに。へんなおじさん」
女の子は不思議そうにハートを見ている。
その時、ガサガサ。シュッ。小さななにかがハートの頭に引っ付く。ハートは気づいていない様子。だが女の子は見えたようだ。
しかし路地裏のため薄暗い。電気などないのだ。当たり前だ。
「あれー?おじさん頭になんかついたよー。でもここだと暗くて見えないなー」
ハートが確認する間もなく。
女の子は片手をこちらに向ける。
そして魔法を唱える。
「えいっ!ライト!」
顔に魔法の光を浴びるハート。
光によりハートの顔がドロドロに溶けていく。
ポトッと虫がハートの足元に落ちる。
「これで見えるはず!ん?あれ?おじさん!顔がないよ!」
あれ?目が見えない。おかしい。
自分で顔に手で触れようとするが何もない。
スカッスカッと手が空を切る。
え?マジかよ。
子供の生活魔法で顔消し飛ばされてるじゃねーか。全身に浴びていたら気づくことなくご臨終コースだったわこれは。
顔が段々と元通りになっていく。
女の子は目をパチパチとしたまま空いた口が塞がらない。
自然にもう片方の手に持っていた果物を落としてしまう。
ハートは必死に言い訳を始めた。
『驚かせちゃったかな〜初めてみただろう〜これはこういう魔法なんだよ〜あはは〜』
「・・・そうなの?」
『そっそうだよ〜。あはは〜。でもこのことは他の人には喋っちゃダメだからね。おじさんとの約束だよー』
「・・・」
ハートは金貨を一枚女の子の手に渡しギュッと握りしめらせる。
そして地面に落ちている果物に指を指す。
『これはおじさんが魔法で驚かせて落としちゃったその果物代だよ』
女の子は指を開き手の平にのった金貨を見てさらに驚く。
「・・・え?これ金貨だよ!おじさんほんとにいいの?」
『もっもちろんだよ!このことはおじさんとの秘密だからね!』
口止め料だよ。
「・・・わかった!おじさんのこと誰にも言わない!おじさんありがとう!」
それだけ言うと女の子は走ってどこかに行ってしまった。
女の子の走っている顔は笑顔で溢れている。
へんなおじさんから貰った物でも金貨は金貨だ。
対象的にハートの顔は青ざめている。
生活魔法ですら生死に関わる一撃。
魔法からはとにかく逃げよう。危険ダメゼッタイ。




