魔導殺し7
「お前が魔導殺しか?」
依頼を終えたギブンの前に一人の老騎士が訪れる。
「だとしたら?」
「私の名前はルドベキア・ゲルドガルド。少しばかりお遊びが過ぎたようだなお前は」
ルドベキアはバチバチと唸る剣を抜き、一気に飛び出す。もちろん狙いは仮面の男――ギブンだ。
先程まで前方にいたはずだが、ルドベキアを見失ったギヴンは慌ててバチバチと鳴る後方へと振り返る。ルドベキアの剣を魔導殺しでギリギリで受けた。
「それは悪手だ」
一言発するとギヴンの体中に稲妻が走る。ギヴンは痛みの声を押し殺しすぐその場を離れようとする。
「耐えるか」
ギヴンは離れようと地を蹴ったはずだが、ルドベキアの元へと吸い寄せられる。回避をする余裕もなく剣を振るわれ――
体を捻り間一髪だが大剣で受ける。だがそれは受けてはいけない一撃、稲妻が再び体を撃ち抜く。
「がはっ‥」
ギヴンは稲妻を浴びながら吹き飛ばされた。一瞬過ぎて、ルドベキアの剣の動きなどほとんど見えなかった。見えたときにはこちらは受けにまわっている。
――圧倒的な実力差――
ギヴンの生死などどうでもいいと言わんばかりにルドベキアはゆっくりと歩きこちらに向かってきている。仮面が吹き飛ばされた衝撃で外れており、さらにギヴンの首元が顕になっていた。ギヴンにつけられている首輪が見えたのだろう。
「奴隷か…」
ルドベキアは静かに呟くと、懐から小さい笛を取り出す。取り出したのは魔道具【解呪の小笛】だ。口に加えると甲高い音が吹いた本人にだけ聞こえる。するとギヴンの首輪が白く発光し次第にポロポロと崩れ落ちる。ギヴンの側に落ちている魔導殺しをルドベキアは手に持とうとしたがすぐに離した。
「剣を持て」
ルドベキアに強く言われたギヴンは思わずビクッとなる。恐る恐る剣を持つ。そして再び構える。戦闘が始ま―――
―――らなかった。ルドベキアはくるりとギヴンに背中を見せ歩き出そうとした。ギヴン思わず叫ぶ。
「オイ。やんねーのか?」
ルドベキアは地に落ちてる仮面に向かって剣を振るう。バチバチと音を立てながら仮面は粉々になった。
「魔導殺しは死に任務は達成された」
「なんだそりゃ?」
「さっさと剣を持てゆくぞ」
黙ってギヴンは大剣を担いだ。自分がやっていた過ちは十分すぎるほどわかっている。だからこそギヴンにはルドベキアが殺さずに情けをかけてくれたことがわからなかった。わからない答えを探すためにもルドベキアに生かされたこの命、この恩義を一生かけても返さねばと胸に誓った。
―――帝都宮殿―――
八本の剣が掲げられた国旗、それを象徴するかのような形に作られた玉座。そしてこの玉座に座る男こそハイドフェルド帝国皇帝ダリア・インペリアリスである。とても皇帝とは思えない口調のダリアは口を開く。
「さて。ルドベキア」
老練たる騎士は報告を始める。
「はい。この私ルドベキア・ゲルドガルド。この身を持ってして魔導殺し討伐完了したことをここに報告いたします」
ダリアはルドベキアの報告に興味がないのかルドベキアの隣にいる赤腕の男――ギヴンを見つめる。
「ご苦労。で、ルドベキア。横にいる彼はどうしたんだい?」
「…拾いました。コイツはいずれ帝国の力になるかと」
「あーそう。君がそう言うんだからそうなんだろうね」
「・・・」
「まあ彼の処分は君に任せるよ」
ダリアはギヴンの横にある剣を見る。
「それにしても大きい剣だね。とても重そうで僕には持てないよ。八剣だって持てないんじゃない?宝物庫にも似たような大きな剣あったけど誰も使わないからなぁ」
「それも踏まえて力になるかと」
「役立つなら身分とはずモノでも何でも構わない。それが現皇帝の方針だからね。傲慢な魔法使いたちが消えたおかげでこれからやれることは増えていくだろうしね。また引き続きこれまでの任務に戻ってよ」
―――この後ギヴンはルドベキア・ゲルドガルドに弟子入りすることになる。厳しい修行や任務それらをこなし、その強さが帝国に認められゲルドガルドの家名を貰い受けることに。ここに帝国八剣【魔導殺し】ギヴン・ゲルドガルドが誕生した。




