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2話:―気に入らねぇ

「すみません、(わたくし)の代わりにこの書類の提出をお願いしても宜しいでしょうか?

 この学園は広くて、職員室の場所の把握もいまいち出来ていなくて…」


「い、はい(イエス)皇女殿下(ユアマジェスティ)!!」



 3時限目の『物理基礎』の科目が終わり、教師が教室を退室した頃。


 転入生であるシャーリィは、他の生徒に自分が頼まれたお願い事を委託して(押し付けて)いた。



 その傍らには、ユウマが最も敵対視しているファングの姿もあった。


 彼はシャーリィが配属されるクラスであるD組の中にいる貴族の中でも最も地位としての地位が高い『ローヴェイン家』。

 彼に与えられた『学園内での彼女の護衛役』を全うしている最中であった。



(皇女特権行使しすぎだろ…)


 そんな様子をユウマは横目で眺める。




 ―SHRが終わった後、ミーナは教室を後にした。


 それからというものの、シャーリィはクラスメイトに目をつけては色々なお願い事(命令)を押し付けていた。



 やれ「購買で飲み物を買ってきて欲しい」だの、やれ「図書館で本を借りてきて欲しい」だの。

 その命令は、多岐にわたるものだった。


 そして、押し付ける理由は決まって「転入してきたばかりで右も左も分からない」と言う。



 転入初日にして、いや、生まれながらにして『スクールカースト最上位』の権威を手に入れたシャーリィを止められる者は誰もいなかった。





「…あの、『ユウマ・アイサカ』さんで宜しくて?」



 その毒牙は、いよいよユウマに向けられた。



「…何か御用でしょうか?」


 ユウマは、自分に出来る最大限の敬語を使って皇女殿下に接する。




(―気に入らねぇ)




「すみませんが、図書館で『世界の地上絵』という本を借りてきてくれませんか?

 私、この学園に来たばかりですから図書館の場所も分からなくて…」




(―気に入らねぇ)




「…皇女殿下、確かさっき貸出に行かせた生徒で三人目でしたよね?

 お言葉ですが、図書館の1回ごとの貸出最大数は正当な理由が無い限り『三冊』が上限なので、これ以上お借りすることは出来ませんよ」


「ええ、もちろん心得ていますわ」




(―気に入らねぇ)




「―ですから、あなたの貸出冊数で借りてきてくださいますと助かりますわ♪」




 その言葉はユウマの沸点を突破させた。






「イ・ヤ・で・す」






「―は?」




 瞬間。




 ユウマは隣に立つファングによって、椅子に座っていた状態から体を組み倒された。



「がっ…!?」


 突然のことに状況の整理が追いつかないユウマ。

 ただファングが自分に危害を加えた、ということだけは分かっていた。




「テメェ、何しや」

「無礼者!!ここにおわす御方をどなたと心得る!!!」



(水戸〇門かよ)



 何故自分がお願いを拒否しただけでここまでされないといけないのか、と考えていたユウマだったがファングが放った怒声に内心鼻で笑っていた。



「んだよ、皇女殿下がどうした?」


「貴様!!この御方に楯突くつもりか!!!」


「まさか。

 ただお願い事を断っただけだろ?」



 怒りの矛先を向けるファングをおちょくるような言葉遣いで、ユウマはファングを挑発する。




「…貴様、言葉を選べ。

 答えを直すなら今の内だぞ」


 冷静さを少し取り戻したファングはユウマの胸倉を掴む手を放して、立ち上がって制服を整える。



「何が『言葉を選べ』だ。

『生徒』同士の会話だろ?だったらこれぐらいは普通だろ。むしろ何で俺は断っただけで乱暴を受けないといけねぇんだよ」



 そのユウマの言葉に、その場にいた全員が凍りつく。


 元々2人のやり取りで注目を集めていたが、皇女殿下を馬鹿にしたような発言をユウマが放ったことによって、一瞬にして教室に緊張の糸が張り巡らされる。




「―そうか」


 と、それだけ言ってファングはシャーリィに傅く。



「―如何致しましょう、皇女殿下(マジェスティ)

 あなたの命令1つあれば、見事にこの者の首を討ち取ってみせますが」


「はぁ!?

 何でそれだけで処刑()されなきゃなんねぇんだよ!?」



 ユウマはその理不尽を訴える。


 それに対してファングは無機質に、ゴミを見るような目でユウマを睨みながら答える。



「黙れ俗物。現時点をもって貴様を『国家反逆罪』として逮捕する」


「だから何で断っただけでそんな仕打ちを受けなきゃなんねぇんだよって聞いてんだ、このカタブツが!!」






「まぁまぁ」



 徐々に熱を帯びていく、いや、最初から爆発していた2人の間に割って入ったのは、他でもないシャーリィだった。



「皇女殿下?」

「あんだよ?」



 怒りを鎮める2人の間でシャーリィは両手の平を重ね合わせて、あくまで『お願い』として。








「―わたくし、お2人の決闘を見てみたいですわ!」



 と、満面の笑みで2人にワガママを押す。




 それに対しての2人反応は。



「面白れぇ」「面白い」


 と、満更でもない反応だった。




(前々から思っていた)



(この醜い人間(クソ野郎)と)


(この底辺野郎(クソ野郎)と)




 決着をつけねば、と。


 ユウマとファングの両名は、互いを睨みつけ合い威嚇する。




(―気に入らねぇ)


(―気に食わない)





(面白いことになったわ)



 2人は皇女殿下の掌の上で踊らされている事にも気付かず。






「「―受けて立つ!」」




 決闘の申し込みを成立させてしまった。

毎日更新



継 続 終 了



継続期間:7月3日〜7月4日

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