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第四話:空色の硝子

何と聞けばいいのか。

言葉を探しているうちに、時間が過ぎていく。


「柊さん?」


箸にたくあんを持った紡が、壮一郎を見ていた。

手が、止まっていたか。


「…お出かけ、しませんか」

「いいですね! どこへ?」

「…海へ」


やったぁ、とはしゃぎ始めた紡を見ながら、残りの朝食を口に運んだ。


以前、車窓から見た砂浜に降りた。

砂を踏みしめながら、2人で歩く。


「カニ!」


泥の上を走るカニを追って、紡が走った。

カニは穴へと逃げ込み、紡はじっと覗き込む。


離れたところで別のカニが走り、紡はそちらへと走り出す。


壮一郎は砂の上にレジャーシートを広げ、荷物を置いた。


繰り返す波の音。

少し冷たい潮風。


カニを追いかける紡の方へ、歩を進める。

紡が振り返った。


「捕まえました!」

「やりましたね」


摘んだ小さなカニを見始めた紡に、壮一郎は口を開いた。


「紡さんは、欲しいものがありますか?」

「ありますよ? たくさん」


紡がカニを裏返す。

壮一郎は、紡が陰に入る位置に立った。


「…そこにあるのか、ないのか。見えない時は?」

「んー…」


紡が、カニを放した。

カニは走り、穴の中へと消える。


「開けるの、怖いんですか?」


見上げる紡に、壮一郎は視線を落とした。


「…そうかも、しれません」

「じゃあ、その時は一緒にいます!」


紡が笑う。


「一緒に開ければ、嬉しいは2倍、がっかりは半分です! …たぶん!」

「そう、でしょうか…」

「開けて、あったらラッキー、ですよ!」


紡は地面へと視線を落とし、泥を掘り始めた。

いないなぁ、と呟きながら範囲を広げていく。


「…あ!」


何かを握った紡が、波打ち際へと走った。

海水で洗ったそれを、手を広げて見せてくる。


「きれいな硝子、見つけました!」


歪な形の、角が削れた空色の硝子。

良かったですね、と言うと紡は嬉しそうに笑った。


開ける時は、一緒に。

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