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第四話:コーヒー

翌朝。

壮一郎は出勤前に、紡にキーホルダーを差し出した。


「昨日は、眠そうだったので」

「えぇ?! わたし、何もない…」

「それでいいんですよ。…私は、持ち歩くものはちょっと…」

「すみません、ありがとうございます…!」


紡の手にペンギンを下ろすと、頬ずりをした。


「ひいらぎさんって名前にして、大事にします!」

「…名前は、再考してください。では、行ってきます」

「えぇ、ダメですか?! いってらっしゃい!」


編集部に到着後、柊は編集部長室の扉を叩いた。


「休みと情報、ありがとうございました」

「あ、楽しめたみたいだね? 良かった良かった」


柊はカフェで買ったクッキーの箱を瀬川に差し出す。


「お土産です」

「ありがとう。たくさんあるから、みんなに配ってもいいかな?」

「よろしくお願いします」


にこにことしながら、「そういえば」と瀬川が切り出す。


「白雨君、いい感じだね」

「…作品の話ですか?」

「そうそう。作品の重力、コントロールが身についてきたんじゃない?」


柊は作品を思い浮かべ、比較する。


「確かに…今回はやや軽くなっています」

「どういう変化をしていくのか、今後が楽しみだね」

「…そう、ですね」


瀬川の言葉に、柊は頷いた。



デスクに戻り、柊はコーヒーのドリップパックを取り出した。

休憩室へ歩きながら、瀬川の言葉を反芻する。


「…コントロールが、身についた」


カップにドリップパックをセットし、湯を注ぐ。


「記憶は忘れても、技術は身につく…」


湯が落ちていくのを、じっと眺める。

人に関する記憶は、残らなくても。


「自転車の乗り方みたいなもの、か…?」


柊は、漉し終えたドリップパックをゴミ箱へ捨てた。




昼休み。

柊はメッセージを開いた。


『そろそろお昼ですね。お弁当、食べましたか?』


数秒後、既読となり。


『これから、公園に行ってたべます!』


柊は『しっかり休息すること』と返信した。




夕方、帰宅すると紡はまだ帰っていなかった。

冷蔵庫を開き、目に付いた豚肉を手に取る。


「久しぶりに、作ってもいいですね」


壮一郎は林檎を手に取った。

軽くレシピに目を通し、調理を開始する。


玄関の開く音がして、紡が顔を覗かせた。


「ただいま?」

「おかえりなさい。今日はいま作っているので、待っててください」

「わぁ、ありがとうございます!」


荷物をソファに置き、紡がキッチンに入ってきた。


「お手伝い、何ができますか?」


壮一郎は少し考え。

キャベツの千切りを依頼した。

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