ご飯を食べながら会話するのはマナー的にアウト
「冗談……じゃ無さそうだな。しかし俺より力が出て親爺さんより巧いなんざ話に聞く英雄だのみたいな化け物連中位だが、旅人を名乗るそんな身なりの奴の話なんざ聞いたことねぇぞ」
ふむ、どうやら自身についての情報は手にはいらないようだ。というか化け物と形容されるような集団と同列に語るほどだろうか? 記憶を失う前の自分は一体何だったのか真剣に考えたほうがいいのかもしれないと考えたが、考えたところで仕方ないので一旦脇に置くことにした。
俺より云々ということはこのおっさんの名前がシバなのだろう。どうやらこの集団の中では一番偉いというか、リーダーにあたるのだろうか。おやじさんというのがカンサスという人なのだろう。どうやらこの集団内にはいないようだが、故人だったりするのかもしれない。
考えていると料理が運ばれてきた。パンとスープ、それからステーキにサラダというメニューは至って普通な食事だと思う。ある意味初めての食事になるわけで、変においしすぎるものを食べて以降の食事のたびにがっかりしたり、まずいものを食べて悲しい思い出になったりはしないはずだ。
「まあいい、おまえさん飯の後は暇かい?」
とりあえずはメインのステーキから食べる。何肉かは知らないものの香辛料や調味料で味を調えられた肉はただ焼くだけというシンプルな工程で幾重もの複雑な楽しみを生み出す。肉厚なステーキは歯に噛みごたえという満足感をあっはい一応暇ですもぐもぐ。
「何、ヘリオが世話になったみたいだし実際にこの目で確かめたいと思ってな。ついでに言えばミグとミナサに一度そういうレベルを経験させておきたい」
「シバさん、俺は入っていないんですか?」
「お前は親爺さんとよく死合ってただろうがよ」
いや一噛み毎にこんがりした表面の香りと肉汁が織りなすハーモニーを、より高い次元に推し進める丁度いい塩梅の味付けだとしっかり味わいつつも、柔らかなパンを皿に残った汁をつけて食べるとこれまた淡白なパンのうまみにあれ若い二人の目がキラキラしてるけどそんな喜ぶような事あったっけ?
「ロニーより強いおじじより強い?」
「ヘリオが手も足も出ない?」
サラダがある分スープには野菜が少ないかななんて思ったが、ごろっとした食べごたえを残しつつも丁寧に煮込まれた事が伺えるスープは、塩味が無いというあっさりなんてレベルではない味付けのはずなのに何故か伝わってくる美味しさ、これが野菜のうまみを最大限にあ、そういうところに反応してたんだ君たち。
どうも丁寧語の人がロニーなのだろうか? これでこの人たちの名前はコンプリートというわけだ。というか戦闘民族の集まりなのかな? 子供というほどでもないが、さっきは若干疲れてたみたいなのにそんな話で元気になるとか。
「というわけでだ、飯食ったら練兵場いこうや」
軽いノリで誘ってるけど、いかついおっさんがいかにもな笑顔でそういうことを言うと、なんていうか、こう、凄みみたいなものがあるよね。




