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古代ローマ人は、紛争に対処するにあたって、

古代ローマ人は、紛争に対処するにあたって、賢明な君主ならば誰もが行うことをしたのであった。

つまり、眼前の紛争にのみ役立つ対策を講じたのではない。

将来起こり得るものにも、対策を忘れなかったのである。

ローマ人は、あらゆる努力をはらい、それらが、まだ芽でしかないうちに、摘み取ってしまうことを忘れなかったのである。

将来起こりうる紛争も、芽のうちに摘み取っておけば、対策も容易になる。

医療であっても、効果を発揮させるためには「間に合う」ことが重要であるからだ。

古代のローマ人は、現代の知識人連中が何度も口にする「時の恵みを待つ」という態度を好まなかった。

それ以上に、彼ら自身の力量と判断力を頼りにあいたのである。

何故なら、時は、一切のものをもたらすからであり、「善」であっても、「悪」であっても、ともに連れて来るからである。


「君主論」


古代ローマにおける「芽のうちに摘む」実例を、下記に例示する。


1. ラテン同盟の解体(紀元前338年)

状況: ラテン諸都市がローマに対し反乱の兆しを見せた。

それに対し、ローマは、反乱が本格化する前に軍事行動を開始した。

同盟を解体し、都市ごとに異なる権利(市民権・自治権)を付与し、反乱の「連帯」を構造的に不可能にした。

マキアベリ氏的には、「敵対勢力が結束する前に、個別に分断して処理する」ということで、これは『君主論』で繰り返される「危険は小さいうちに処理せよ」の典型例である。


2. サムニウム戦争における「早期介入」

状況: サムニウム族がカンパニアへ圧力をかけ、ローマの勢力圏に影響が及ぶ兆候があった。

それに対し、ローマは、まだローマ本体が攻撃されていない段階で軍事介入し、カプアを保護し、サムニウムの拡大を阻止した。

マキアベリ氏的には、「火が自分の家に燃え移る前に、隣家の火を消す」であり、ローマは「将来の脅威」を現在の脅威として扱い、「対処」したのである。


3. カルタゴに対する「予防的警戒」(第二次ポエニ戦争前)

状況: ハンニバルがサグントゥムを攻撃し、ローマの勢力圏に接近した。

それに対し、ローマは、サグントゥム攻撃の段階でカルタゴに使節を送り、戦争の責任を問いただした。

その交渉決裂後、即座に宣戦布告した。

マキアベリ氏的には、「敵が強大化してから戦うのは愚かである」ということ。

ローマはハンニバルの勢力拡大を「芽」として認識し、早期に対処しようとした。


4. 第三次ポエニ戦争:カトーの「カルタゴ滅ぶべし」

状況: カルタゴは軍事的には弱体化していたが、経済的に再興しつつあった。

それに対し、ローマは、カトーが毎回の演説で「カルタゴは滅ぼされねばならぬ」と主張した。

そして、経済的復活という「将来の脅威」を理由に、カルタゴを完全破壊した。

マキアベリ氏的には、「時の恵みを待つな。時は善も悪も運んでくる」である。

ローマは「脅威の再発」を許さなかった。


5. 同盟市戦争(紀元前91–88年)前の「市民権付与」政策

状況: イタリア同盟諸都市が不満を蓄積し、反乱の兆しがあった。

それに対し、ローマは、反乱が拡大する前に、一部の都市に市民権を付与し、した反乱勢力の分断に成功した。

マキアベリ氏的に言えば、「不満が爆発する前に、制度改革で火種を消す」であり、ローマは「政治的譲歩」を戦略的に使ったのである。


『君主論』でも『政略論』でも、マキアベリ氏は、古代ローマを次の点で称賛する。

危機を予測し、先手を打つ能力。

敵対勢力を分断し、結束を許さない制度設計。

時の流れに身を任せず、自ら行動する主体性。

脅威が小さいうちに処理する冷徹な判断力。


さて、現代日本にも、マキアベリ氏が強調した「紛争・危機は芽のうちに摘み取れ」という原則がそのまま当てはまる領域が複数存在する。

以下に例示する。


1. 人口減少・少子化(典型的な、「芽を摘み損ねた」例)

人口減少は、発生初期(1990年代)に強い対策を打てば効果が大きかったが、現在は構造的危機に発展している。

マキアベリ氏は「病は初期なら治療が容易だが、進行すると治療が難しい」と述べている。

少子化はまさに初期に痛みを伴う改革を避けた結果、後で巨大な負担となった「典型例」ともいえる。

出生率対策は「即効性」より「早期着手」が重要で、移民政策・教育投資・都市計画など、長期的視点での制度改革が不可欠であったが、ほぼ、手つかずだった。。


2. インフラ老朽化:早期補修の重要性

高度成長期に建設された橋梁・トンネル・上下水道が一斉に寿命を迎えている。

マキアベリ氏の警句の通り、「危機は小さいうちに処理せよ」である。

老朽化は「見えない危機」であり、事故が起きてからでは遅い。

(既に、何件も人身被害も発生している、大規模事故の不安も高い)

現代日本への示唆としては、予防保全型のインフラ管理、地方自治体の財政支援とデジタル管理の強化も必要になって来る。


3. 災害対策(地震・豪雨)

古代ローマ的「先手」が最も成功している分野であり、日本はここでは古代ローマに近い。

ハザードマップ、耐震基準の強化、早期避難システム等は、これらは「芽のうちに摘む」思想に近い。

マキアベリ氏的に言えば、「時の恵みを待つのではなく、自らの判断で危機を先取りする」。

災害対策は日本が最も成功している「マキャベリ的政策領域」である。。


4. サイバーセキュリティ:脅威は「芽」の段階でしか見えない。

背景として、政府機関・企業への攻撃が増加し。AIを利用した攻撃の高度化も発生している。

マキアベリ氏的に言えば、「敵が強大化してからでは遅い」ので、「兆候」の段階で対処する必要がある。

当然、政府・企業のセキュリティ投資の早期強化、人材育成(ホワイトハッカー育成)、

重要インフラのゼロトラスト化が必要になる。


5. 外交・安全保障:ローマ的「予防外交」の必要性

例示すれば、台湾海峡の緊張、北朝鮮のミサイル、エネルギー安全保障等。

マキアベリ氏的に言えば、「敵が力を蓄えてから戦うのは愚かである」で、古代ローマは「潜在的脅威」を理由に行動した。(現実的に、相当、対処が遅れてしまった)

現代日本への示唆としては、「近隣諸国と関係を悪化させない努力」と並行して、経済安全保障(半導体・レアアース)、同盟強化(米国・豪州・インド)、防衛産業の再構築が、重要になる。


個人の生活であっても、

「危機は初期にしか安く、簡単に解決できない」

「痛みを伴う努力を先送りすると、後で対処コスト、痛みが跳ね上がる」

「時まかせ、運まかせ」では、長く不安な生活を強いられるし、自分が苦しむことになる。


国家の安全管理は、個人の健康管理にも、似通った部分があるようだ。

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