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民衆の賛同を得るには、

民衆の賛同を得るには、どの方法だと容易で、どの方法だと困難になるのか。


容易なのは、次の方法である。

民衆に対して、こうすれば得で、反対にこうすれば損になると、具体的明確に説明し説得することである。

あるいは、こうすれば勇敢であるとの評価を得られ、別の方法では臆病で卑劣と思われるだろうと、説くのである。

たとえ、その背後に、どれほどの困難が控えていたとしても、どれほどの犠牲が発生するリスクがあったとしても、「表面上」ならば「得に見え立派に見えそう」なことならば、民衆を説得するのは、困難ではない。


逆に、どれほど有効な政策であったとしても、表面上は問題になりそうだったり、地味なものであった場合は、民衆の賛同を得ることは、実に困難になる。


「政略論」


歴史的実例を示す。


◆ 民衆の支持を得やすい政策(表面上の利益・名誉を強調できるもの)

1. 古代ローマが「宗教儀礼」を利用して民衆を動員した例

マキアベリ氏は、古代ローマがしばしば「宗教的な兆し」「吉兆」を利用し、民衆に「勇敢であり、神意に沿う」という印象を与え、戦争や公共事業への支持を容易に得たと述べている。

実際には政治的必要に応じて解釈を変えていたが、表面上は立派に見えるため民衆は納得したと記されている。


2. ローマの指導者が「勇敢さ」を演出して支持を得た例

ローマの執政官や将軍は、しばしば「勇気」「名誉」を強調する演説を行い、民衆に「この戦争は栄光をもたらす」と説いた。

マキアベリ氏は、「民衆は名誉・勇敢さの物語に弱く、実際の犠牲や困難が見えにくい場合は簡単に賛同する」と指摘している。


逆に、 民衆の支持を得にくい政策(地味・痛みを伴うが有効なもの)

1. 腐敗した共和国を立て直すための「厳罰・制度改革」

マキアベリ氏は、腐敗した国家を立て直すには「劇的な処罰」「制度の全面改革」が必要だが、

これらは表面上「残酷」に見えるため、民衆の支持を得るのが極めて難しいと述べている。

しかし、長期的には国家の安定に不可欠であるとも指摘する。


2. 自由を守るための「告発制度」や「内部対立の許容」

『政略論』では、ローマが自由を維持できた理由として「告発制度」「民衆と貴族の対立の制度化」を挙げている。

しれらは表面上は「争いを生む」「不和を助長する」ように見えるため、民衆は直感的に嫌がり、支持を得にくいとされた。

しかし、実際には、こうした制度が腐敗を防ぎ、共和国を強くしたと分析されている。


日本の事例で考えれば、

① 現代政治・行政

支持されやすい政策(表面上の利益・名誉が大きく見える)

1. 「減税」や「給付金」など即効性のある目に見える利益。

  減税、給付金、補助金などは、短期的に「得をする」ことが明確で、支持が集まりやすい。 

  しかし、財政負担や将来世代への影響は見えにくいため、反対が起きにくい。


2. 「大規模イベント」「インフラの目玉事業」

  国際イベント、巨大建設プロジェクトなどは「誇らしい」「勇敢」「国の格が上がる」という 

  印象を与えやすい。

  しかし、実際の費用対効果や維持費は見えにくいため、賛同が得やすい。


逆に、支持されにくい政策(地味・痛みを伴うが長期的に有効)として、

1. 行政改革・規制改革(既得権の調整)

 効果が出るまで時間がかかり、痛みが先に来る。

 表面上は「不便になる」「負担が増える」と見えるため反発されやすい。

2. 財政健全化(増税・社会保障改革)

 長期的には必要でも、短期的には「損」に見えるため支持が得にくい。

 マキアベリ氏的に言えば「表面上の不利益」が強く、民衆の賛同は難しい。

3. 環境政策(脱炭素・規制強化)

 長期的には有効だが、短期的にはコスト増や生活の不便が生じる。

「地味」「成果が見えにくい」ため、支持が割れやすい。


尚、日本史における同様の現象も例示する。

支持されやすい政策(名誉・勇敢さ・わかりやすい利益)

 1. 戦国大名の「華やかな軍事行動」

  合戦での勝利は「勇敢」「名誉」として民衆の支持を得やすかった。

  しかし、実際には兵糧負担や徴発など、民衆に重い負担がかかっていた。

 2. 江戸幕府の「見栄えの良い公共事業」

  大規模な城郭・堤防・街道整備は「立派」「繁栄の象徴」として歓迎された。

  しかし、実際には膨大な労役・年貢負担が伴った。

3. 明治政府の「富国強兵」スローガン

 近代化・軍備増強は「国の名誉」「強い日本」というイメージで支持されやすかった。

 しかし、徴兵制や増税などの負担は重かった。


支持されにくい政策(地味・痛みを伴うが有効)

 1. 江戸幕府の「倹約令」

  物価安定や財政健全化を狙ったが、民衆には「楽しみを奪う」「窮屈」と映り、反発された。

  また、効果も長期的で見えにくい。

  2. 幕末の「開国政策」

  長期的には不可避で有効だったが、当時は「屈辱」「損」と見られ、強い反発を受けた。

  表面上の「名誉の喪失」が大きく見えたため。

 3. 明治政府の「地租改正」

  近代国家の財政基盤を作るためには不可欠だった。

  しかし、農民にとっては「負担増」「損」に見え、激しい反対運動が起きた。

 4. 昭和初期の「財政緊縮(高橋是清の政策)」

  経済安定には有効だったが、軍部からは「国防を削る地味で不人気な政策」と見られ、支持

  を得にくかった。



以上、「民衆に人気のある政策」と「不人気の政策」の両面を調べてみた。

民衆に人気のある政策を掲げ、実行すれば、当然、その時点の民衆の支持率は向上する。

しかし、国家にとって、「本当に有効な政策であるか、そうではないか」とは、別の問題になる。

ポピュリズム(大衆迎合)政治の大きな欠点でもある。

また、民主主義政治全般が持つ、リスクでもある。

その意味で、マキアベリ氏の警句は、冷酷なほどにポピュリズムの欠陥を見抜いている。

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