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国家にとって、法律を作っておきながら、

国家にとって、法律を作っておきながら、その法律を守らないことほど有害なことはない。

特に法律を作った当の人々がそれを守らない場合は、文句なく最悪だ。


国家にとってもう一つ有害なことは、様々な人間を糾弾し、攻撃することにより、国民の間にとげとげしい雰囲気を醸し出すことである。


「政略論」


マキアベリ氏が述べる「法律を守らない国家の害」「国民同士を敵対させる害」は、歴史上しばしば国家崩壊の前兆として現れている。

以下に、実際の歴史で確認できる代表的な実例を示す。


1. 「法律を作りながら守らない国家」の実例

● ローマ末期(紀元3世紀の「軍人皇帝時代」)

ローマ帝国では皇帝が頻繁に交代し、自ら制定した財政法や軍規を守らず、軍への買収的な給金増額を繰り返した。

結果として、法の安定性が失われ、軍の忠誠は「法」ではなく「金をくれる皇帝」へと向かい、国家秩序が崩壊した。


これはマキアベリ氏が『政略論』で警告した「法を守らない支配者が国家を腐敗させる」典型例になる。


● フランス革命期のジャコバン政権(1793–94)

「自由・平等」を掲げたにもかかわらず、法の手続きを無視した革命裁判所が横行し、恣意的な逮捕・処刑が続いた。

制定した憲法(1793年憲法)すら施行せず、非常措置を常態化させたため、国家の法秩序は完全に崩壊した。

マキアベリ氏的に言えば、「法を守らない立法者」こそ最悪であるという状況。


● ヴェネツィア共和国末期(18世紀)

かつて厳格だった貴族法が形骸化し、貴族自身が法を破り、密貿易や買収に関与した。

法の権威が失われ、国家の統制力が弱まり、ナポレオンの侵攻で一気に崩壊した。


2. 「国民同士を攻撃し、敵対心を煽る国家」の実例。

● ローマ共和国末期(グラックス兄弟以降)

政治家が民衆派 vs 元老院派の対立を煽り、互いを「国家の敵」と呼んで攻撃した。

結果、市民同士の暴力・暗殺・内戦へと発展し、共和国は崩壊して帝政へ移行した。

マキアベリ氏が述べる「国民間のとげとげしい雰囲気」が国家を滅ぼした典型になる。


● スペイン内戦前夜(1930年代)

左右両陣営が互いを「人民の敵」「ファシスト」「反国家勢力」と糾弾し、

メディア・議会・街頭での相互攻撃が激化。

国民の分断が深まり、最終的に全面的な内戦へと発展した。


● ユーゴスラビア崩壊(1990年代)

政治指導者が民族間の不信と敵意を煽り、

「他民族は脅威だ」という宣伝を繰り返した。

国民間の敵対が暴力へ転化し、国家は分裂した。


また、日本においても、実例がある。

1. 律令国家の形骸化(奈良〜平安)

律令は厳格な官僚制を規定したが、貴族が自ら律令を守らず、私的な荘園拡大を進めた。

結果、公地公民制が崩壊し、国家財政が破綻した。

法を守らない支配層が国家の基盤を弱めた典型例である。


2. 鎌倉末期〜南北朝:武家法の無視と内紛

鎌倉幕府は御成敗式目を制定したものの、北条得宗家が恣意的に法を運用し、御家人の不満が爆発した。

その後の南北朝期では、敵対を煽る動員(南朝 vs 北朝)が続き、国土が荒廃してしまった。

法の軽視と国民分断が長期混乱を招くことになった。


3. 江戸幕府後期:法の二重基準と社会不信

幕府は倹約令を乱発したが、大名や幕閣が守らず、庶民だけに負担を強いた。

これが社会の不信を高め、幕府権威の失墜につながった。


4. 昭和前期:軍部の「統帥権」濫用と国民分断

法律上は文民統制が想定されていたが、軍部が法解釈をねじ曲げて政治介入を繰り返した。

さらに、政党政治を「国賊」「売国」と攻撃し、国民の間に敵対感情を醸成した。

結果、議会政治が崩壊し、国家は破局へ向かった。


世界史においても、日本史においても、

① 法を守らない支配層 が 国家の弱体化 の原因を作る。

② 国民分断の煽動 から、 内部崩壊 に到る。

というマキアベリ氏の警句を裏付ける事例が多い。


その国家の健全な持続を望むなら、守れない法律を制定しないこと。

また、国民を分断するような扇動には、しかるべき監視を行う。

月並みな結論にはなるけれど、それができなかったのが、人類の性向と、その歴史なのかもしれない。


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