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衆に優れた人物は、②

幸運に恵まれれば、たちまち有頂天になり、まるで全てが自分の力量だ、と得意がる。

(周囲からは耐えがたい存在と思われ、憎まれる)

運命が反転し、かげりがさしはじめると、途端に落胆してしまい、卑屈な人間に成り下がる。


この性向は、君主の場合であれば、さらに悪い結果をもたらす。

逆境に見舞われると、このタイプの君主は、それに耐えるとか対策を考えることはしない。

それよりも、「逃げること」を優先してしまうのだ。

このタイプの君主に共通することであるが、好運に恵まれていた時期に、その有利な状況を上手に活用し、逆境に入った時の防衛策も準備も、何も考えないことである。

スキピオの言葉が残っている。

「ローマ人は、負けた時もくじけず、勝った時もおごらない」


「政略論」


※スキピオ:スキピオ・アフリカヌス

 古代ローマ共和国の将軍・政治家で、第二次ポエニ戦争においてカルタゴの名将ハンニバルを破ったことで知られる。

生没年:紀元前236年頃―紀元前183年頃。

最大の功は、紀元前202年のザマの戦いでカルタゴの英雄ハンニバルを決定的に撃破し、ローマを勝利へ導いた。

その後、「アフリカヌス(アフリカの征服者)」の尊称を得た。

古代ローマ屈指の戦略家・名将の一人 であり、古代ローマを地中海の覇権国家へ押し上げる転換点を作った人物である。


以下、歴史的具体例を、示す。

1. フランス王ルイ12世(イタリア戦争)

マキャベリ自身が『君主論』で失敗例として挙げた人物。

好運に恵まれた時期に慢心し、逆境に転じると耐えられず撤退した典型。

●好運の時期

1499年、ルイ12世はミラノをほぼ無抵抗で占領。

現地の貴族もフランスを歓迎し、支配は容易だった。

(占領は「運」によるもので、主体的能力ではなかった)

●慢心と誤算

ヴェネツィアの支援を過信し、イタリア政治の複雑さを軽視していた。

教皇権力を強化し、スペインをナポリに招き入れるなど、敵を増やす判断を連発。

(マキャベリは「好運に酔い、将来の危険を予見しなかった」と批判)

●逆境での崩壊

スペインと教皇の反転攻勢で一気に不利陥った。

結果として、ルイ12世は持久戦の準備もなく、撤退を繰り返し、最終的にイタリアから追い出された。

(マキャベリ曰く「好運の時期に防衛策を整えなかったため、逆境に耐えられなかった」)


2. 古代ローマ帝国末期の皇帝たち(特に3世紀危機期)

軍の支持という「幸運」で即位したものの、逆境では逃亡・放棄する皇帝が続出した。

●好運の時期

軍団の支持を得て即位する「軍人皇帝」が次々に誕生した。

即位直後は軍の勢いで勝利を得る者も多かった。

●慢心と準備不足

皇帝たちは短期的勝利に酔い、帝国全体の防衛体制を整備しなかった。

また、経済改革・行政改革を怠り、危機に備える制度は、実にもろかった。

●逆境での逃避

ゴート族・ササン朝の侵攻が激化すると、皇帝自身が戦場から逃亡したり、軍に見捨てられて殺害される例が続出した。

「幸運で即位 → 慢心 → 危機で逃避・崩壊」という構造の典型的な例である。


3. 旧日本軍(太平洋戦争)

●好運の時期

日清・日露戦争の勝利、第一次大戦の戦勝国という「成功体験」だった。

これが「自分たちは特別だ、神国だ」という過信、慢心を生んだ。

●慢心と誤算

米英とのの国力差を無視し、「短期決戦で勝てる」という根拠の薄い楽観論が日本軍内に強くなった。

兵站を軽視し、長期戦への備え不足など、構造的な問題を放置してしまった。。

(成り上がりものの過信、慢心、愚かな誤算とする説もある)

●逆境での崩壊

ミッドウェー敗北後、戦略的撤退や持久戦の準備ができず、場当たり的な作戦を繰り返した。

逆境に耐える制度も計画もなく、組織全体がボロボロと崩壊していった。

その後、アメリカ軍と沖縄戦で敗北し、東京大空襲他各地で大規模な爆撃と国民の多大な犠牲、ついには広島、長崎への原爆投下の悲劇を生み、連合国側に無条件降伏となった。


成り上がり者は、すぐに浮かれ、過信と慢心に走る。

成功継続の努力もしないし、危機管理対策にも関心がない。

本当の実力がないから、少しでもピンチになれば、自己保身を優先するし、それも徹底できず、スタコラと逃げだし。それも失敗、破滅を迎える。


現日本の政権担当者は、さて、どうなのか。

「負けた時もくじけず、勝った時もおごらない」の気概はあるのだろうか。


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