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第82話 大繁盛
少し、時間をずらして入った。
オープン日に真っ先に行くのは——なんか、違う気がしたから。
扉を開けた瞬間、思わず足が止まった。
「これは……凄いな……」
ハウジングが、違う。
今まで見てきた店とは、次元が違う。
洗練されている。
俺の店と比べるのも失礼なくらいだ。
どこをどう作ればこうなるのか、見当もつかない。
でも——それより。
「人が多すぎるな!?」
店内が、埋まっている。
そうか。
ルシアには8年間の実績がある。
上位ランカーとしての人脈がある。
俺みたいに0から始めたわけじゃない。
オープン日に知り合いが押し寄せてくるのは——当たり前だ。
羨ましいとか、そういうんじゃない。
ただ……凄いな、と思った。
奥の方にルシアがいる。
声をかけようとして——やめた。
ルシアは、来てくれた一人一人に挨拶をしていた。
丁寧に。
真剣に。
あの獰猛な顔じゃなくて——真っ直ぐな顔で。
邪魔は、できない。
俺は静かに、来た道を戻る。
お祝いは——また今度でいい。
ルシアの店は、大丈夫そうだ。
それだけわかれば、十分だった。




