第80話 私にしか出来ない店
「どんなお店にするんです?もしかして……俺さんの……」
リナが、途中で口をつぐんだ。
なんとなく、わかっていた。
ルシアがあの店に行かなくなったのを。
でも——聞いてはいけない気がした。
沈黙が、少し続く。
「うん?」
ルシアが首を傾ける。
「あいつの店と同じにしたら——
あいつに負けを認めるようなもんだろう?」
ニヤリと、久しぶりに楽しそうに笑う。
あの顔だ、とリナは思った。
獰猛で、楽しそうで、何かを狙っている時のルシアの顔。
「私は私にしか出来ない店を作る。どこにもない、私だけの店だ」
「……ルシアらしいですね」
思わず笑った。
何があったかは知らない。
聞くつもりもない。
でも——ルシアが笑っているなら、それでいい。
「リナ」
「はい」
「お前には苦労をかけるかもしれないが……頼むぞ」
「苦労は最初からする覚悟です」
「そうか」
ルシアが、また笑う。
「では早速だが——ハウス探しから始めるぞ」
「え、今からですか!?」
「当たり前だろう。時間は有限だ」
「ルシア!少し待ってください!心の準備が——」
「リナ」
「は、はい」
「走るぞ」
「え——ちょ、ルシア!?待って——」
迷う理由は、もうどこにもなかった。
リナは走った。
ルシアの背中を追いながら——なぜか、笑いが止まらなかった。
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