第79話 数億マネの使い道
離れてみて、わかることがある。
同じ場所にいた時には、見えなかったものだった。
8年間、私は戦闘だけを見ていた。
レベル、装備、クリア速度。
それ以外は——正直、下に見ていた。
店なんて、戦闘しない人間のコンテンツだと思っていた。
でも。
あの店は楽しかった。
客がいつも笑っていた。
初めて来た客が、次の日また来ていた。
常連が増えるたびに、店の空気が変わっていった。
あれは——戦いだった。
勝ち負けのない戦いを、私は初めて見ていた。
にゃっこさんの言った通りだった。
そして私は——その戦場から、逃げた。
「話が、長いよ」
あの一言は、アルトが悪いんじゃない。
気づいていなかったのは、私だった。
ずっと自分のことしか考えていなかった。
アルトの顔が浮かぶ。
「リナ、話がある。聞いてくれるか」
「どうしたんです?改まって?」
リナが首を傾ける。
「自慢じゃないが……8年間、戦闘で貯めてきたマネがある。数億マネほど」
「す、数億!?」
椅子が小さく軋んだ。
「何も使う事がなかったからな。ただ貯まっていっただけだ」
「それが……どうしたんです?」
「使おうと思う」
「え、何を買うんです?」
ルシアは、少しだけ視線を落とした。
「店だ」
「……え?」
「自分の店を持とうと思う。リナ、手伝ってくれるか?」
一瞬、沈黙があった。
「……えええええ!」
リナが立ち上がる。
「勿論手伝いますよ!でも!ルシアが店!?あのルシアが!?」
「そのルシアだ」
「いや待ってください整理させてください、ルシアが、店を、やる?」
「ああ」
「ルシアが!?」
「だから、そうだと言っている」
「……わかりました」
リナが、真剣な顔になる。
「全力で手伝います」
ルシアは小さく笑った。
立ち止まっている理由は、もうなかった。
——さて。
まずは、ハウスを探すとしよう。




