第69話 新たなる戦場
「全体範囲攻撃きます!」
ドゴーン!!!
「全員回避しま……1名被弾!このままじゃ回復が間に合いませんよ!」
「くそっ! 一旦立て直――」
ルシア「おおおおおおおおおお!」
「「「え?」」」
「リーダー! ルシアさんが突っ込んで回復時間稼いでくれてます!」
「凄い……ボスのHPがガンガン削れていってます!」
「すみません……回復しました! いけます!」
「よ、よし! 皆もルシアさんに続け!」
「応ーーーーー!!!!」
ふー……まあ、なんとかクリアは出来たな。
流石に最新の高難易度ダンジョンだけのことはある。
危うい場面も、まあクリアしたから良しとするか。
「お疲れにゃ!ルシアちゃん!」
「にゃっこさん、お疲れ様」
「ルシアちゃんは相変わらず強いのにゃ~。流石は上位ランカー様!」
「全力でやってるだけよ」
「またまた~。そんなクールなルシアちゃんもまた良いにゃ!」
にゃっこさんとは、何度か高難易度PTで一緒になったことがある。
戦闘も上手だけど……何よりこうやって気さくに話しかけてくれる。
とても良い人だと思う。
「さて!今日の目標もクリア出来たし……いつものカフェにでも休憩しに行くかにゃ!」
「……?カフェ?リアルの話?」
「にゃははは!違う違う。
ほら、PT募集でカフェとか喫茶店とか色々お店の募集があるでしょ?そっちの話にゃ」
「ああ……お店ロールプレイとかいう……」
存在は知っていたが、正直全く興味がなかった。
MMOなんて戦闘コンテンツがメイン。
クリアしてレアアイテムを手に入れて、自分のキャラを強化するのが全て。
ずっとそう思ってやってきた8年間。
「ん?もしかしてルシアちゃんはお店行った事ないにゃ?」
「ああ、まあ……ああいうのは……
その人達を否定する訳じゃないが、戦闘しない人達のコンテンツでしょ?」
「それは違うよ、ルシアちゃん」
真剣な眼差しで、にゃっこさんが私を見る。
何故か少し姿勢を正す。
「あの人たちはね?あそこで戦っているんだよ」
……戦っている?
一瞬、意味がわからなかった。
何を言っているんだ、この人は。
店で?
会話して?
それが、戦闘?
ありえない。
そんなものは戦いじゃない。
……なのに。
なぜか、その言葉を――
完全には否定できなかった。
「……はは」
思わず、笑いが漏れる。
「ル、ルシアちゃん……?」
「なんだ、それは……」
自分でもわかる。
これは、呆れでも嘲笑でもない。
むしろ――
「……面白いじゃないか」
胸の奥が、わずかにざわつく。
そうか。
私はいつの間にか、このゲームを攻略し尽くした気になっていた。
戦闘だけが全てだと、どこかで決めつけていた。
……はは。
笑いが、止まらない。
ふふ……。
否定できない。
あの一言が、頭から離れない。
「あそこで戦っている」
……戦場、か。
「ふふふ……」
獰猛な捕食者のように、口元が歪む。
「私の知らない“戦場”が、まだあったとはな」
「にゃっこさん、感謝する!」
私は、まだ見たことのない場所へ――
自分の目で確かめに行くことにした。




