第66話 ハウジング
さて、どうしたもんかな。
まずはハウジングなんだが。
「机と椅子を作って並べただけじゃ、
流石に店とは言わないよな」
……当たり前だ。
自分で言ってて、少し苦笑する。
こんな時は、文明の利器だ。
ハウジング 店 作り方。
検索、ポチ。
「お?」
動画サイトに、山ほど出てくる。
カフェ風ハウジング。
内装例。
初心者向け。
上級者向け。
……多すぎる。
適当に一つ、再生する。
「……え?」
思わず声が出た。
家具を、そのまま使ってない。
重ねてる。
埋めてる。
ずらしてる。
「いや、センス皆やばいな……?」
扉が、扉じゃない。
棚と板と装飾品の寄せ集めだ。
でも、どう見ても扉にしか見えない。
「……どういう頭してんの、これ」
家具を見てるんじゃない。
完成形を先に見て、逆算してる感じだ。
理解できない。
でも――真似はできる。
「こりゃあ……動画見て勉強するしかないな」
とりあえず。
この動画で使ってる材料を、全部集める。
それからだ。
――数日後。
ようやく、材料が揃った。
……揃った、だけだ。
ここからが本番。
作り始める。
「……あ」
ずれる。
位置を微調整。
回転。
角度。
また、ずれる。
「……なんでだよ」
動画と同じように置いてる。
はずなのに。
少しだけ、噛み合わない。
一度壊す。
置き直す。
また壊す。
気付けば、何時間も経っている。
「……」
言葉が出ない。
出す余裕もない。
毎日、少しずつ。
何時間も。
失敗して、直して、また失敗して。
それでも。
「……あ、できた」
でも、達成感がない。
動画と、同じ形。
同じ配置。
同じ雰囲気。
一瞬だけ、肩の力が抜ける。
「……よし」
でも、すぐ気付く。
このままじゃ――
動画のコピーだ。
同じものを作りたいわけじゃない。
配置をずらす。
装飾を一つ減らす。
色を変える。
「……あ」
今度は、感覚が掴める。
「……こう、か」
最初より、手が止まらない。
ずれても、理由がわかる。
段々、動画を見なくなる。
自分で置いて。
自分で壊して。
自分で直す。
気付けば。
大幅に、変わっていた。
俺が置いた理由が、全部ある。
「……」
良いとも、悪いとも、思わない。
ただ。
「……やっと、形になったな」
二週間。
毎日、ログインして。
何時間も、これだけをやって。
ようやく。
初めて、自分の店だと思えた。




