餞別
「レイル、今は寒い。しっかりと暖かい恰好しろ。ほら、俺の腹巻をやる」
ベン爺はそう言って、腹巻をくれた。
俺はそれを服の中に着る。
「温かいよ。ありがとう、ベン爺」
「お前は一流の狩人だ。どこに行っても通用する。俺が保証してやる。だから、大丈夫だ。そして、クリフの仇をとってくれてありがとうな。あいつは俺の戦友だったんだ」
そう言って頭を撫でられた。
「ごめんね、僕のせいで……今まで修行をつけてくれてありがとう」
「いっぱい助けてくれたのに、何も返せずにごめんなさい」
アランとレミが頭を下げる。
「アランは何も悪くない。よく妹を守ったな。そしてレミ、君は被害者だ。気にしなくていいんだよ」
俺はアランとレミにそう答える。
「今までありがとよ。ロクサスもお前のお陰でようやくまともになった。なった、んだけどなあ。お前は凄い奴だよ。元気でな」
「……行っちゃうのね。本当は何者なのか聞きたかったわ」
「二人にはとても世話になった。御飯美味しかったよ。何者かは……秘密だ」
俺は口元に指をあてて答える。
最後に、ソフィアが俺の元にやってくる。
「いままで本当にありがとう。とっても楽しかったわ! これ、私が作ったから、旅先で食べなさい。あんたが好きな肉が多めに入れてあるから」
ソフィアはそう言って、俺にサンドイッチを渡してくれた。
「ありがとう。大事に食べる」
「これからどこに行くの?」
「そうだな、王都に行こうと思う」
「そっか。気を付けて行きなさいよ。あんたは強いけど、どこか抜けているから。」
そう言ったソフィアの足が、少しだけ震えていることに気付く。
「ばれた? 本当は少しだけ……少しだけ怖いわ。普段鈍感な癖に、こんな時だけ気付くんだから」
「大丈夫。大丈夫だよ、ソフィア」
俺はにっこりと微笑む。
「何言ってんのよ。あ、忘れてた。まだ餞別があるの」
ソフィアはそう言って、俺の頬に軽く口付けをする。
「前、私のために怒ってくれたの。嬉しかったわ。ばいばい」
「ああ。さよなら」
俺はソフィアに別れを告げ、村を出た。
◇◇◇
レイルが旅立った後、アミラが言う。
「ねえ。もし、村のために戦って、と頼んだら戦ってくれたのかな? レイル君って強いんでしょ? なら……」
「いくらレイルでも、何千人も倒すのは無理よ。それに、村のために何千人も殺して、なんて言えないわ」
「そうよね……ソフィア、私、怖いわ。これから何千人もの兵が私達を殺すために来るんでしょ? 怖くてたまらない」
アミラの顔は恐怖で青くなっている。
「アミラ、やっぱりお前だけでも……」
店主がアミラに声をかける。
「嫌よ! 私だけ逃げるなんて! 一人だけで逃げて、私どこに行けばいいのよ! 誰も知り合いも居ないのに、行く宛もなく逃げて。知り合い皆殺されて、故郷もなくなって……領主に追われて、生きていける訳ないじゃない!」
「分かるわ、アミラ。私も怖い。結局、貴方も、私も故郷を捨てられなかったんだから。せめて最後まで足掻くわよ」
ソフィアは悲しそうに、そう言った。
一方、都市ラービスにおいて領主に報告が届いていた。
「なに!? スマイルの奴がやられただと⁉ そんな馬鹿なことがあるか! 元ミスリル等級の冒険者が相手では、村人が百人居たって勝負になるまい」
領主であるホーキンス子爵が大声を上げる。
「ですが……伝令によると、数日経ってもなんの音沙汰もないと」
部下の兵士が、跪きながら説明する。
「ううむ……どういうことだ? もうしばらく連絡を待て」
「あまり待つとお坊ちゃまが……」
「あの馬鹿め……大人しくしておけ、と伝えろ」
(あの馬鹿息子はなぜトラブルばかり持ってくるのだ……あの馬鹿が領主では可愛い娘が心配だ)
ホーキンス子爵は頭を抱える。
ホーキンス子爵は馬鹿なハビエルよりも可愛い八歳の長女を愛していた。
最近本気で、次期領主は娘の方が良いのではないかと考えるくらいに。
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