第3章 不機嫌な朝
翌朝、ソウタが少し遅く起きた。ほんの少しだけ。
「大丈夫?」
心配して声をかけるセイヤ。ソウタが聞き返す。
「何が?」
「いや…珍しいから、起きれないの…」
セイヤは、ソウタの顔色をうかがう。特に反応は無い。セイヤが続ける。
「疲れてんのかな、って…」
言いしな、ソウタの顔色が変わる。
「疲れるよ、そりゃ」
あからさまに不機嫌。
「替わってくれ、たまには」
それを言われると、セイヤは困ってしまう。
「そりゃ、替われるもんなら替りたいけど…」
いつも通りの反応。ソウタは鼻で笑う。
「無理だろ。お前、動けないんだから」
セイヤは何も言い返せない。
「せいぜいここで心配だけしてろ。俺は仕事してくる」
「俺だって、仕事してる…!」
言い返して、セイヤは「しまった」と思った。「動けない」のは事実だが、「働けない」とは思われたくなくて…つい、口から出た。今言うべき言葉じゃない。気まずい空気。ソウタが舌打ちする。
「うざい。何もできないのに『大丈夫?』とか聞いてくんな」
ひどい、無神経だ、心配しているのに…と、口に出すべきでない言葉しか浮かんでこなくて、セイヤは黙っている。
「ダンマリかよ…。嫌なら今日、俺、外で泊まってくるわ」
ソウタは出ていった。
「いってらっしゃい」
反射的にセイヤが言う。聞こえたかどうか分からない。言葉の裏にある、ごめん、力になりたい、帰ってきて…色々な思いも、届いたかどうか分からない。
「泊まれる場所なんて…無いだろ」
呟く。でも無いとは言いきれない。壁の向こうがどうなっていて、何があるかなんて、セイヤには分からない。ソウタの気持ちも、分からない。とにかく何も知らない。知りたいのに──。




