第4章 セイヤの世界
セイヤはぐるぐると考えていた。ソウタは、仕事を休みたかったんだろうか。だるい、重い、動けない…それがソウタにとってどれほど辛いことなのか、分かりたくても分からなかった。セイヤは、仕事を始める。その場から1ミリも動かずに。
ソウタもなんとなく体が重い気がしたが、もともと動けない体なので問題ない。それよりも気が重い。仕事をすれば、ソウタのことを考えてしまうから。セイヤが仕事を休むのは、ソウタが休んだ時だけ。それと、ソウタがいない時──
「泊まってくるのかよ、まじで…」
ソウタの言ったことが頭の中を回る。ソウタがいなければセイヤの仕事は無いが、逆にセイヤがいなくてもソウタの仕事は一応可能だ。仕事の質はかなり落ちるが、毎日の帰還は必ずしも義務ではない。それに、もしセイヤと同じ体を持つ同居人がもう一体いれば、そこへ帰ったっていい。…いい。
「いいわけねぇだろ!」
セイヤが空間に向かって叫ぶ。葛藤。見えない壁の向こうの世界が恨めしい。知らないことが恨めしい。何がソウタを疲れさせ、何に自分がムカついているのか分からない。大きく溜め息をついてから、セイヤは、"情報源"の分別を始めた。
いつもの、「変わりばえしない」、特に何とも呼べないものたち…のはずなのに──
「何だよ、これ」
同居人のものではない長い毛が、やたら絡まり分別作業の邪魔をする。いつもの収集物さえ、その毛のせいで異質なものになっている。一塊に形状を変えた収集物をなんとか解いていく。その中から出てきたのは、良くないもの。液体。ゴム。そして、臭い。
セイヤが頭を抱える。
「ごめん、ソウタ…」
無神経は自分だと気がつく。
「なんで俺、気づかなかったんだろう」
ソウタが何を持ってかえっても、受けとれる自信があった。けれど、そうしてあげたい気持ちが大きくなりすぎて、いつしかただ吸いこむだけになっていた。何を持ってかえってきたのかなんて考えもせずに。
自分よりずっと小さな体でこの異物たちを集め、体を重たくしながらもいつも通りの仕事量を、ちゃんとこなして帰ってきたソウタ。どれほど過酷な一日だったことか。
「泊まるなら昨日だろ、バカ…」
夕方。ソウタは、いつも通り帰ってきた。




