信頼を超えた理解
遥か上空に吹っ飛ばされたフェリ。
直後に放たれた不可避な数万のトゲ。
為す術はない。
三本のトゲがフェリを貫いた。
「ぐはっ……」
口元から血が溢れ出す。
その瞬間────フェリは大闘技場の外に弾き出された。
「うぉっ……これは派手にやられたな」
「む……無宗……」
掠れた弱々しい声だった。
「待ってろ、今治すから」
トゲを抜き、回復魔法をかける。
「で、戦ってみてどうだった?」
「特訓前よりは……戦えた。でも────」
少しの沈黙の後、静かに言った。
「即死技すら……使われなかった」
フェリは唇を噛み締めた。
戦う前にしたアドバイス。
“即死技に気をつけろ”
それ以前の問題。即死技を使われるほど強くなかった。
(わたしは……無宗が思ってるほど強くなかった。
期待に応えられない。こんなんじゃ……無宗と一緒に戦えない)
フェリの頬を一筋の涙が伝っていた。
治療を終え、フェリの涙をそっと拭った。
「大丈夫」
「ダメ……なの。これじゃ」
俺は優しく微笑んだ。
フェリの心を読んだわけではない。ただ、なんとなくフェリの気持ちがわかった気がした。
「お前に“即死技”の存在を伝えた理由は二つだ」
「ふた……つ?」
「一つ目は心配だから。当たり前だろ?
何かの間違いで大闘技場の安全装置が発動しなかったら、ガチの即死だ。
お前が戦う四天王は、4人の中で、一番危険だからな」
「ふ……二つ目は?」
「お前の強さを知ってるからだ」
フェリは目を丸くした。
「俺の見る目は絶対だ。見込み違いなんかじゃない。
お前を相手にしたら、マドローニは絶対即死技を使う。そう知ってるからな」
信じてるなんて言わない。これは信頼を超えた“理解”だ。
フェリの瞳はこれ以上ないほど見開かれた。
フェリは言葉の意味に気づいたと同時に、俺に抱きついた。
匂い、肌のやわらかさ、温もり。フェリを全身で感じる。
「絶対……勝つね」
吐息混じりの囁きが鼓膜を撫でる。その声には、どことなく甘さがあった。
「フェ……フェリさん!?」
フェリは勢いよく立ち上がり、くるりと回った。
「もう一戦……する」
決意に満ちたフェリの口角は、少し上がって見えた。
────二戦目
「なんだぁ?まだ死んでなかったのかぁ」
「さっきまでとは……違う」
「おもしれぇ」
すでにフェリの姿はなかった。気づいた時には、マドローニの腹部に拳がめり込んでいた。
「うっ……!?」
そのまま何度も拳を叩き込んだ。1分間で200発の拳が炸裂した。
さらに、マドローニを斜め上方に蹴り飛ばし、すぐさまダブルスレッジハンマーで叩き落とした。
「やっと……馴染んできた」
今までの修行で大幅に上がった力。まだ完全には制御できていなかった。
フェリはさっきの戦いで、感覚を掴み始めていた。
「くっ……」
マドローニが手をかざすと、辺りに散らばる大きめの石が弾丸のようにフェリに打ち込まれた。
フェリはいくつかかわし、残りを素手で弾いた。
気づくと、マドローニが背後で拳を構えていた。
「……っ!?」
(いつの間に?)
ダァァァァァァァァァァンッ!!
フェリは咄嗟に防御したが、衝撃で10m後退させられた。
フェリの足元が膨れ上がり突き出す。
このまま上空へ吹っ飛ばされたら、間違いなく詰む。
咄嗟に跳んで回避。着地点からさらに巨大な土の拳が飛び出し、上空へ弾き飛ばされた。
空中では逃げ場がない。
身体強化の魔法しか持たないフェリが空中にいる状態で、前回のように数万のトゲを放たれたら、為す術はない。
どうしようもない危機的状況で、フェリが考えついた作戦は一つしかなかった。
「力で……ゴリ押す」
“パワーブースト”
全身強化に使っていたエネルギーを脚に全集中させた。
極限まで強化された脚で空を蹴った。
閃光が空間を裂いた。
「空気を……蹴ったのか?」
気づくと、フェリはマドローニの目と鼻の先にいた。
「……っ!?」
その瞬間、時が止まったように見えた。
「これで……決着」
全身に纏っていた強化オーラを脚に集中させた分、威力は今までの比じゃなかった。
フェリのバックスピンキックがマドローニの顔面に決まった瞬間────光が弾けた。
蹴り飛ばされたマドローニはあたりの木々をなぎ倒しながら、巨大な岩にめり込んだ。
昨日更新する予定でしたが、ミスで更新してませんでした。
すみません。




