思い込み最強魔人
目の前には爪を噛みながら震えている少年がいた。
「怖い……なんで……僕を殺しに来たの?」
少年の額には、小さく黄色い2本の角が生えていた。
……傲慢の魔人────アラゾニアだ。
「理由くらいわかってるだろ、アラゾニア。アリスを……喰ったくせに。」
チョコラーテの瞳には静かな殺意が湧いていた。
「このガキが……傲慢の魔人……」
明らかに異質だった。今まででまともに言葉をかわせる大罪魔人はほとんどいなかった。
強欲の魔人────プレオネクシアですらカタコト、または奪った魂の声を使ってしか会話ができないレベル。
それどころか、この魔人はかなり人に近い。黄色い角がなければ普通の少年と見分けがつかないだろう。
だが……
「お前……見た目に反して、かなり人を食ってるんだな」
アラゾニアの背後にはどす黒い何かが蠢いていた。
それは、今まで喰われた人々の怨念だった。
しかし、アラゾニアは怯えるように震えていた。
「ぼ……僕はただ……ご飯を食べていただけなのに────何で……そんな目で見るの?」
チョコラーテの額に青筋が浮かんだ。
「ふざけるのも大概にしろ!アラゾニアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
瞬きの瞬間────チョコラーテがアラゾニアを蹴り飛ばした。
地面から大量の鉄のトゲが突き出し、吹っ飛んだアラゾニアを串刺しにした。
「がはっ……」
アラゾニアが黒い血を吐き出した。
すかさず、チョコラーテがアラゾニアの頭上に飛んだ。
チョコラーテの腕が凄まじい勢いで伸びる。
拳が空を切り裂き、アラゾニアの腹部にめり込む。
そのまま凄まじいラッシュでアラゾニアもろとも地面を破壊した。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダッッッ!!
鳴り響く破壊音に混じり、アラゾニアのうめき声が聞こえる。
「い゙だい゙……な゙ん゙……で……」
そのままチョコラーテの拳が空高く上がった。エネルギーが集束して直径100mほどのダイアモンドの拳ができあがった。
「このまま跡形もなく……潰れてしまえばいいのだ」
巨大なダイアの拳がアラゾニアを叩き潰した。
“ダイアモンドフィスト”
ドカァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!
俺は遠くで、その光景を眺めていた。
「ずいぶん一方的だな。……何でこれで負けてるんだ?」
『説明しましょう、無宗様!
それはですね〜、なんと───』
その瞬間、違和感を感じた。
「なんだ……この感覚は」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い……痛い!
ねぇ、何でこんなことするの?何でこんなに僕を虐げるの?僕が弱いと思ってるの?そうかな?そうなのかな?そうだよね!?」
「クソ……これじゃまだ倒しきれないのだ」
「僕だって強いんだ!負けないんだ!最強なんだ!こんなに虐げられていいわけがないんだ!
僕は強い!僕は強い僕は強い僕は強い僕は強い、僕は強いんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッ!!
凄まじい覇気が世界を震わせた。
黄色いオーラがアラゾニアを包んでいた。
「僕は……強い!」
その瞬間────アラゾニアの膝が、チョコラーテの顔面にめり込んでいた。
「……っ!?」
『傲慢の魔人────アラゾニア。その能力は、傲慢になるほど強くなる。言ってしまえば思い込んだ通りに強くなっちゃいます!もちろん制限はないですよ〜。つまり、無限の可能性を秘めた“チート能力”ってわけでーす!』
チョコラーテはぐちゃぐちゃに変形するまで殴られ、蹴り飛ばされた。
大木に激突したチョコラーテは風船が膨らむように、元の形に戻った。
「はぁ……はぁ……死ぬかと思ったのだ」
『聖剣の能力“性質変換”で、丈夫で柔軟性がある体に変えてるみたいですね。ほぼ攻撃が効きませんよ?これ』
「え、不死身じゃん」
しかしダメージを受けづらいからといって、勝てる訳じゃない。
防御に徹していてはいつまでも勝敗がつかないからだ。
それに────
「はぁ……はぁ……」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!
「僕は強いんだ。攻撃も最強なんだ。効かないなんて“ありえない”!」
「アラゾニアの思い込み次第では、それすら無効化される」
「僕はなんでもできるんだ!できないことは無いんだ!できるできるできるできるできるできるできるできるできる……できるんだぁぁぁぁぁぁ!!」
その瞬間、あたりの重力が数百倍に跳ね上がった。
「か……体が……重いのだ」
いくら巨人族トップクラスの身体能力を持つチョコラーテでも、立っているだけで精一杯だった。
重い拳が何度もチョコラーテに叩き込まれた。
チョコラーテの顔がボコボコに膨れ上がり、大量の痣が浮かび、血まみれになっていた。
もう、チョコラーテの防御は効いていなかった。
「僕、そろそろ限界だったんだよね。ボコしてもボコしてもゴキブリみたいな生命力で生き残ってさぁ……」
チョコラーテに人差し指の先端を向けた。
指先に膨大な炎が凝縮された。
周辺には火花が散っている。
辺り一帯の温度が急激に上昇した。
「無様に死ね。チョコラーテ・クロパッド」
俺は軽やかな足取りで歩いていた。
アラゾニアの横で立ち止まり、その指を掴んだ。
「死ぬのはお前な?」
アラゾニアは目を丸くした。
「は?何で?重力は!?」
そのままアラゾニアの指をへし折った。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!!」
極限まで凝縮された炎は制御を失い────
ドカァァァァァァァァァァァァァァァンッッッ!!
半径10kmを巻き込んで暴発した。
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