膝枕の女神
意識の底から這い上がってきた俺を待っていたのは、鉄の臭いでも砂塵の味でもなく、柔らかな陽だまりのような温もりだった。
ゆっくりと目を開けると、白と金の美しいコントラストが目に飛び込んでくる。カソックの生地は上質で、その下にある太ももは、枕にするにはあまりに心地よい弾力を持っていた。力を抜けば沈み込み、けれどもしっかりと支えてくれる絶妙な柔らかさ。
「あら……起きたのですね」
彼女が動くたびに、カソックの裾がシュルっと音を立て、温かな体温が空気を伝って届く。その肌の感触を想像させるようなしなやかさと、包み込むような優しさは、戦い疲れた心身を癒やす至高の休息となった。
「ぽ……ポラリス?」
「おはようございます……無宗さん」
俺と目が合うと、ポラリスは目を細めて、穏やかに微笑した。
「っ……///」
……なんの夢だ、これは。
「ちょーっと待ってください!何してるんですかポラリス。寝起きのご主人様に“ご奉仕”するのは(ピー)奴隷である私の役目ですよ!?」
ルナは頬をぷっくりと膨らませて、ポラリスを睨みつけた。
「お前を(ピー)奴隷にした覚えはないんだが……」
「え……あれは遊びだったんですか!?」
「いや、どれだよ」
いや、こいつにはディープキスされたからな。何とも言えない気分だ……
「あら、どうやら皆さんが来たみたいですよ?」
階段を駆け上がる音が聞こえる。
「無宗!」
俺を見た瞬間、クリアたちの瞳が潤んだ。
安心しているようだが、どことなく悲しみも混じっているような気がした。
「良かった〜。ってポラリス!何膝枕してんの!」
3人がジト目で俺とポラリスを見つめる。
「ズルい」
「わ……わたしも」
「アルマも!」
結局、俺は全員に密着されてしまった。
「……っ!?」
俺に触れた瞬間、みんなが驚き、表情が少し暗くなったのを感じた。
理由はわかってる。俺の体温が低いからだ。むしろ冷たいと言った方が正しいかもしれない。
それほどまでに、俺の生命力は低下していた。
皆に寿命のことを話すべきか迷っている。ポラリスはもう気づいてそうだが、黙ってくれているのだろう。
「おう、起きたかァ……無宗」
「キラリオス……俺はどれくらい眠ってた?」
「1ヶ月だ」
「……1ヶ月か。……今の俺には大きいな」
「それは────どういう……」
ルナが心配そうに俺を見つめた。
「気にするな。それより……次の大罪魔人を────」
「待ってください。私は……もうご主人様に戦って欲しくありません」
「アルマも」
「わ……わたしも……」
「私は……無理して大罪魔人を倒さなくてもいいと思う。やっぱり……無宗には死んで欲しくない」
「お前ら……」
ルナたちが心配してくれているのはわかる。
だが、それじゃダメだ。
“虚無の頂”は残り寿命の7割を代償に支払う。
俺の現在の寿命は11年といったところだ。
俺があいつらより早く死ぬことは確定している。
俺が死んだら、もうあいつらを守ってやれない。
大罪魔人とかいう“危険要素”を残しては絶対に死ねない。
だから────
「わかった。大罪魔人討伐はやめるよ」
ルナたちの顔が明るくなった。
(ポラリス……聞こえるか?)
ポラリスが俺の方を向いた。
(あら……念話ですか?もしかして……わたくしと秘密のお話をしたいとか?もう……無宗さんはえっちですね。いいですよ?)
(違う。勝手に話を進めるな。いいから、ここから一番近い大罪魔人はどこだ?)
ポラリスは少し俯いた。
(やはり……戦うんですね。わたくしとしては、依頼した立場ですが……少し反対でしょうか)
(俺じゃ勝てないのか?)
(いえ……貴方が大罪魔人に後れを取ることはないでしょう。これはわたくしの感情的な判断です。気にしないでください)
フェリが首を傾げた。
「無宗……どうしたの?黙り込んで」
あ……やべっ。
「いや……なんでも?」
俺はポラリスの方を見た。
(1番近いのは巨人大陸────傲慢の魔人アラゾニア……方角は、貴方の向きから北へまっすぐです)
(……ありがとう)
ポラリスはまっすぐ、俺を見つめた。
(間違っても……死なないでくださいね)
俺はグッドサインを出した。
「ご主人様?どうしたんですか、急に……」
「気にするな。親指の運動をしてただけだ」
「プッ……ふふっ……」
ポラリスが吹き出した。
こいつ……俺の嘘が下手だと言いたいのか?まぁ……自覚はあるけど……
クリアが首を傾げた。
「……変なの」
────夜
俺はルナたちが完全に寝静まったことを確認し、宿を抜け出した。
方向はだいたいわかっている。
よし────
「無宗」
「……っ!?」
話しかけてきたのはキラリオスだった。
「お前かよ……驚かせやがって」
「まぁ気にすんな。────それより……行くんだろぉ?大罪魔人討伐」
「なんだ、気づいてたのか」
「まぁな。ただ、仲間を心配させんなよ。……それを言いに来ただけだ」
俺は少し笑った。
「心配すんな。すぐ終わらせるよ」
“飛翔”
俺は静かに飛び立った。
次は巨人大陸だ。
「大罪魔人を消す────それだけだ」
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
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