全てを奪われた俺、命を削って“虚無”にします。
仲間を全員失った。魂を奪われ、磔のコレクションにされた。
全てを奪い尽くすその魔人の姿は────まさに“強欲”だった。
理解が追いついた瞬間、怒りや憎悪、殺意や恨み、不安、恐怖、悲しみ、絶望、後悔、大量の負の感情が俺の中で膨れ上がり────俺の何かがブツッと音を立てて切れた。
俺はニヤリと笑った。
「跡形もなく……消し飛ばしてやる」
限界まで見開かれた目からは涙が溢れていた。
その瞬間────凄まじい重圧が辺り一帯を支配し、空気が変わった。
プレオネクシアは何かを感じ取り、一歩後ろに下がった。
俺は涙を拭った。
全てを取り返す。手段は選ばない。
────たとえ、寿命を縮めることになったとしても。
『む……無宗様!?まさか……“アレ”を使うんですか?まだ未完成で危険です!』
この状況を覆すには……これしかない。
『たとえ、命を削っても……ですか?』
「ああ……」
それは────基本的に詠唱が不要な俺が、唯一詠唱を必要とする“諸刃の剣”。
俺の瞳は光を失っていた。
そこには自分に対する怒り、守れなかった後悔、そして敗北寸前まで自分を追い込んだプレオネクシアへの殺意だけが、ひしひしと渦巻いていた。
「度重なる苦、尽きることのない不満。自らを恨み、呪い、嫌悪し、延々と繰り返す怒り、嘆き、悲しみの輪廻に囚われし傀儡。苦の極地に達し、やがて何も感じなくなり、無は始まる────」
「絶対理不尽領域“虚無の頂”」
────その瞬間、純白の世界が展開された。
そこには、俺とプレオネクシアだけが立っていた。
プレオネクシアは笑顔を失った。
「奪えるのは自分だけだと思ってた?……逆だよ」
「お前が“強欲”なら、俺はそれを超える“強欲”だ。
……お前から全てを奪い尽くしてやる。」
プレオネクシアは顔を歪ませた。
「何も感じないだろ。今のお前は“虚無”だ。
失った力や能力はどこへ行ったと思う?」
全身が震える。大きく見開かれた目には“絶望”だけが映っていた。
プレオネクシアは恐怖していた。
それは何万年も生きてきて、初めての感情だった。
しかし、今のプレオネクシアには逃げる力も、防ぐ力もない。
目の前には自分より遥かに強い存在が立っている。
その力はさっきまでの比じゃない。
そう、奪われた力は────
「理解できたみたいだね。じゃあ────死ね」
限界まで強く握られた拳がプレオネクシアの顔面に叩き込まれた。
ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッッッッッッ!!!!!
初めて解放した“全力”。それは、今まで無意識に抑えていた力。銀河系を余裕で消し飛ばすその力も、この領域から溢れ出した瞬間、強化バフとして俺に還元される。膨れ上がる力に制限などない。
今のプレオネクシアの力は“ダニ以下”だ。
逃げる力も、避ける力も、防御する力もない。
さっきのように復活する力すらも、俺の強化バフとなった。
“絶対理不尽領域”。そこから生還する術などない。
待っているのは“確定された死”のみだ。
プレオネクシアは塵一つ残さず消し飛んだ。
喉の奥から、熱いというよりは“沸騰した鉛”のような塊がせり上がってきた。
堪えきれず溢れたそれは、鮮血というにはあまりに濁り、どす黒い塊となって地面にぶちまけられる。
自分の内側で、何か決定的な「時間」が壊れ、体外へ漏れ出していく感覚に、激しいめまいがした。
体温が下がっていくのを感じる。
俺は、眠るように意識を失った。
絶対理不尽領域は解除され、そこには一人の少女だけが立っていた。
「貴方の運命は見えづらいですね……
この結末を知っていたら────あんな依頼しなかったのに……」
少女は倒れた俺の頬に触れた。
「これでは“貸し”にするなんておこがましいですね」
こうして、強欲の魔人────プレオネクシア戦は大きな代償と引き換えに勝利を収めたのだった。
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