この一撃で終わるはずだった
俺のはらわたは煮えくり返っていた。
仲間の魂を奪い、踏みにじられたからだ。
今すぐにもこの魔人を抹殺したい。
だが今、怒りに身を任せても負けるだけだ。
仲間ごと巻き込んで奴を殺すか、防戦に徹するか。
二択しかない絶望的な状況は変わっていない。
巨大な風の斬撃が俺たちを襲う。
「俺様に任せろぁぁぁぁッ!」
キラリオスが聖剣で受け止めた瞬間、斬撃が消えた。
「す……すごい」
まるで、ライムの電解無効みたいだ。
聖剣の能力か?どうやって攻撃を消してるんだ。
「俺様に作戦がある。お前ら、あの野郎の攻撃を誘発させろ」
「え……?」
フェリが疑問を浮かべていた。
「攻撃は全て、俺様が対応する」
どういうことだ。まるで、攻撃を受けることにメリットがあるみたいな────
「……っ!!」
俺は意味を理解した。
「わかった。間違っても赤青紫には触れるなよ」
「わーってるよ」
「と……とりあえず……わかった」
わかってない奴の反応だが、やるべき事は伝わってるみたいだな。
「フェリ」
「な……何?」
「雷神化するぞ」
「え……?」
フェリが困惑した表情を浮かべていた。
「でも……クリアが」
「俺がクリアの代わりになる。やることは同じだ。できるな?」
フェリは静かに頷いた。
「“パワーブースト”」
「全属性魔術“雷”付与」
「複合スキル“雷神化”」
その瞬間────巨大な氷柱が俺たちに降り注いだ。
「それ────」
俺とフェリの声が重なった。
「残像……」
「残像だ」
「て……テメェら……仲良いな」
「あはは……」
「当然……」
フェリはドヤ顔でピースした。
それから俺たちは、何度もプレオネクシアの攻撃を誘発させた。
雷、竜巻、斬撃、鉄の棘、エネルギー波、様々な攻撃をキラリオスに防がせた。
1時間以上が経過していた。
「はぁ……はぁ……」
フェリが息を荒くしている。そろそろ限界が近いみたいだな。
「キラリオス……まだか?」
キラリオスは不敵に微笑んだ。
「もう充分だァ。待たせたな、テメェらァ!」
キラリオスは聖剣を構えた。
「さっきからイラつかせやがってよぉ……やっとテメェを殺せるなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
キラリオスの持つ大渦の聖剣ゼフィル・レイ。
その真の能力は、聖剣の中にある大渦に受けた攻撃を蓄積すること。
そして────
「その薄気味わりぃ笑顔が二度とできねぇようにしてやるよっ!死ねぇぇぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
一気に解放する。
キラリオスはプレオネクシアの真下に移動していた。
“フルバースト”
ドキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッッッ!!
魔人の足元から、超高密度の翡翠の閃光が垂直に走った。
視界が緑に染まる暇すらなく、光柱は魔人の胴体を一瞬で灼き切り、その頭部を粉塵へと変えて天を衝く。
直後、遅れてやってきた超重圧の衝撃波が周囲の地面を爆ぜさせ、その余波は遥か上空の雲海を円形状に消し飛ばした。
細く凝縮された究極の旋風は、ただ一気に解放するよりも威力が高くなる。
そして上に向かって放ったことで、周りを巻き込まずに渾身の一撃を叩き込んだのだ。
辺りが静まり返った。
「やっと……終わった」
「もう……俺様はァ限界だ」
「はぁ……なんかドッと疲れが押し寄せてきたな」
もう休もう。ルナたちとゆっくりしたいな。
あれ……そういえば、ルナたちは……
違和感が走った。
「待て、何かおかしい」
プレオネクシアの檻が消えてない。
それどころか────
「……っ!?」
頭が復活している。
プレオネクシアの頭は紫だ。一撃で仕留められなかったということは────敗北を意味していた。
キラリオスの聖剣が消え、プレオネクシアの手に渡った。
「クソ……が……」
キラリオスが倒れた。
「バカな……」
俺が横を向いた瞬間────フェリが、プレオネクシアの霊手に殴り飛ばされた。
ヤバい!このままじゃ、フェリが青い檻に触れてしまう。
助けようとした時、俺の周りを囲うように紫の糸が張り巡らされていた。
動けないっ!
フェリがぶつかる直前、檻の色が紫に変化した。
「……っ!?」
ドカァァァァァァァァァァァァァァンッ!!
プレオネクシアは勝ち誇ったように微笑んだ。
その背後にはルナ、クリア、フェリ、アルマ、キラリオスの魂が磔にされていた。
「無宗……無宗……無宗……ご主人様────助けて」
プレオネクシアは笑いながら囁いた。
それはルナたちの声だった。
「あ……あ……」
頭が真っ白になった。
「ナカマ……ダイジ……ダッタノニナァ」
理解が追いついた瞬間、怒りや憎悪、殺意や恨み、不安、恐怖、悲しみ、絶望、後悔、大量の負の感情が俺の中で膨れ上がり────俺の何かがブツッと音を立てて切れた。
俺はニヤリと笑った。
「跡形もなく……消し飛ばしてやる」
限界まで見開かれた目からは涙が溢れていた。
その瞬間────凄まじい重圧が辺り一帯を支配し、空気が変わった。
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