キスしたらヒロイン達に裁判されて有罪になりました。
悪気はない。マジで事故なのだが────
俺は少女を押し倒し、俺の唇が彼女の唇に重なっていた。
「ご主人……様?」
「ちがっ……これは……」
下を向くと少女が顔を赤らめ、目を逸らす。
彼女の柔らかな黄緑色の髪が乱れて、その白い頬を隠すようにハラリと落ちた。
「わたくし……初めてでしたのに……」
「……っ!?」
クリアがジト目で俺を見つめる。
「こ……これは事故なんだ────」
そして俺は家のリビングで、ミニ裁判にかけられていた。
「そ……それでは……裁判を、は……始めます」
フェリは裁判官のような服装で、よくある判決を下すハンマーを持っていた。
なんでそんなもん買ってんだよ……
「ひ……被告人……負内無宗。前へ」
俺は一歩前へ出た。
ダンッ……
薄暗い部屋で、俺にスポットライトが当てられた。
この部屋にこんなライトあったっけ……
「弁護人、ざ……罪状説明を……お願いします」
「はい!スーパーウルトラ弁護人のルナです。今日はこの超極悪犯罪者のご主人様を、絶対に有罪にします!」
もっとも、この場に俺の味方がいない時点で、俺の有罪は確定しているわけだが……
「被告人の負内無宗は服を選んであげている私たちから逃げ……」
それは仕方ないやろ……
「あろうことか……あろうことか!!か弱い女の子を押し倒し……なんと!!“キッス”をしたのです!
唇と唇で……マウス・トゥ・マウスですよ!?
許せません!
……罰として私との1日デート刑を求刑します」
「あ、ズルい!それなら私も!」
「きゃはっ。抜けがけはだーめ」
「そ……それでは、被害者のポラリスさん。い……意見をお願いします」
「はい……わたくしは今まで“そういうコト”をした経験がなく……殿方とのキスは初めてでして……」
「初めて!?」
「ファーストキス!?」
「わたくしの初めてを奪ったからには、責任……取ってくれますよね?」
「……っ!?」
急な上目遣いやめろ!
くっ……これはやばい。一体どうすれば……
「どーするんですか?ご主人様」
ルナが口を尖らせている。
「ちょ……ちょっと考えさせてくれ」
「フェリ裁判長、判決を……」
「被告人、負内無宗は────」
ドクン……ドクン……
心臓の鼓動が頭の中に響き渡る。
「有罪」
あーもう!
いや、わかってたけどさぁ。さすがに理不尽では?
「罰として、毎晩寝る前にわたしたちの頭をなでなでしてキスの刑です。も……もちろん……唇に……」
「……っ!?」
「きゃははっ。ナイスフェリ!」
「異議なーし」
「異議はないです」
「ま……マジか」
どうやら、俺に拒否権はないらしい。
「それで……ポラリスさんだっけ?」
「ポラリスでいいですよ」
「わかった、ポラリス。どう責任を取ればいいんだ?」
「そうですね……それでは────」
「大罪魔人を……全て討伐してもらいましょうか」
「大罪魔人ですか?」
「なにそれ」
「ええ、正確にはそのドロップアイテムの核“大罪の意志”を集めて欲しいのです」
「理由は?」
「ただ純粋に欲しいだけですよ。綺麗ですからね」
少し怪しい……
「ちなみにそいつらは強いのか?」
「貴方が倒した魔王よりも……」
それはやばくないか?キスの代償にしては大きすぎる気が……
しかし、面白そうだな……
「大罪魔人は全部で七体。そのうち一体は貴方が倒してしまいましたが」
ちょっと待て、そんな奴は倒した覚えがないぞ。
しかも、魔王越えなんて……普通は覚えてるはずなんだが。
「ちなみに、その魔人というのは?」
「暴食の魔人ヴォラシティ────喰帝です」
喰帝の正式名称ってヴォラシティだったんだ……
まぁ、でもたしかにそれなら納得だ。あれは序盤の敵にしては強すぎた気がする。まぁ、俺の前では無力だがな。
え……つまり、大罪の意志って暴食の意志みたいに無双の刃の材料になるって事か?
『無双の刃って、かなり入手しづらいんですよ~無宗様。
ベルゼリオンは偶然の産物みたいなものです。可能性がないわけではないですが、低いと思いますよ?』
だとしても黒影を倒せる可能性があるなら、大罪の意志をこのポラリスとかいう少女に渡すのは避けたい。
「うーん……」
「大丈夫ですよ。至高の領域に適合できるのは暴食の意志だけですからね」
「!?」
なんだ……この見透かされているような感じは……
それに────
「なぜ、そう言い切れる」
「感覚的にわかるのですよ。結果や運命、未来が」
「あと、デメリットしかないとは限りませんよ?」
ポラリスはくるりと後ろを向き、少し得意げに答えた。
「きっと、貴方の“探し物”の手がかりになるでしょうから」
「お前……何者だ」
ポラリスは軽く微笑んだ。
「わたくしはポラリス・アルネーラ
────星導の勇者です」
活動報告にポラリスの立ち絵を載せました。興味があったらぜひ見に来てください。
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