逃げてたら女の子とキスしてしまいました。
「……そろそろ時間ですね」
少女は静かに呟いた。
少女の動きに迷いはなかった。的確に、そして無駄なく、運命の流れに身を任せ行動をしている。
すべてを見通し、すべてを理解する。そんな彼女の願いは尽きることがない。
「わたくしとの運命……貴方は逆らうことができますか?
……負内無宗」
少女は静かに笑い、ルナたちから逃げる俺が向かう曲がり角へと足を進めた。
リビングにて……
「うーん……」
俺は悩みを抱えていた。
それはフェリの両親探しだ。何もやっていないように見えて、空いた時間などにちょくちょく情報収集はしているのだ。
世界には多種多様な種族がいる。
人間、魔族、エルフ、妖精、巨人、天人、そして獣人など……
噂ではこの世界のどこかに獣人の王国があるらしいが、その場所は謎に包まれているようだ。
ギルドや酒場での聞き込み、さらには無宗教の奴らにも調べさせてみたが、全くと言っていいほど情報が出てこないのだ。
こんなことなら、奴隷商のドレムから情報を吐かせればよかったと、今更思うのだった。
え……お前の力なら獣人王国なんか余裕で見つけられるだろって?
はぁ……そんなチート能力でゴリ押しの人生の何が楽しいんだよ。
まぁそういうわけで、俺は誠実にフェリの親探しをしたいのだ。
フェリのためにも早く、そして確実に親を見つけるのが目標だ。
と言っても、手がかりの欠片も見つからず、お手上げ状態だ。
それでも俺は考え続けた。何週間も考え続けたせいで脳が疲れていた。思考がまとまらない。
俺は次第に溶け始めていた。
「ぽぇ~……無理だぽ」
「ご……ご主人様!?なんでスライムみたいに溶けてるんですか!?」
「ルナ、どいて!緊急処置をするよ。必殺“熱湯スプラッシュ”!!」
ぶしゃぁぁぁぁっ!
クリアがバケツに入った100度の熱湯を俺の顔面にぶっかけた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!目が……目がぁ……」
……って、熱くない?あ、そうか。俺にダメージはないんだった。
「どう?正気に戻った?」
「うん。正気かどうか疑わしいのはお前だよ、クリア。まともな奴はそもそもこんなことしないだろ。普通こういう時って冷水じゃないの?
“熱湯スプラッシュ”!!じゃねぇよ!!!」
「まぁまぁ……」
「おい、マジふざけんなよ……」
「でも無宗、最近考え事ばっかじゃーん。アルマ、心配だよ」
「た……たまには……息抜きも大事……」
どうやら皆、俺を心配していたようだ。
「いいですね!息抜き!ご主人様、早速出かけましょう!」
「最近ずーっと家でのんびりしてたから、ちょうどいいかもね」
「そうだな、とりあえず外で息抜きしよう」
そうして俺たちは仕度をして、外へ出た。
「お前ら……服、めっちゃいい感じじゃん」
「そ……そうですか!?ご主人様!!」
「きゃはは、アルマはなんでも似合うからね~」
皆オシャレで可愛らしい服装だ。
というか、アルマはどうやって服を着てるんだ?霊体用の服でも売ってるのか?
『では教えちゃいましょう!個体名アルマは霊体のため、自由に服装を変化させることができるのです!』
そうなのか……
『無宗様……こんな可愛い美少女たちに囲まれてお出かけなんて……隅に置けませんなぁ、このこのぉ~』
うっせぇ。別にいいだろ……
ザワノスシステムはいつからこんなふうになってしまったんだ……
「いつの間に服を買ったんだ……」
「この前女子だけで買い物に行った時に買ったんですよ。もちろん勝負下着も────」
「ちょっ……ルナ!その口塞げ!」
「ん!?」
クリアが急いでルナの口を塞いだ。(物理的に)
「てゆーか、逆に無宗はその服しか持ってないよね」
「みんなで……無宗の服……選んだら楽しそう……」
「きゃははっ。それさんせー」
「いいですね!行きましょう、ご主人様!」
「ちょまっ……おいっ……」
俺はその場のノリに流されて、服屋に連れ込まれた。
いやぁ……前よりも服の種類が増えてるな……
「いらっしゃいませ。あ、無宗様!それにルナちゃんたちも……今日は何をお求めですか?」
「今日はご主人様の服を買いに来ました!」
「いいですね。無宗様なら“なんでも”似合うと思いますよ」
「はい!私も、ご主人様は“なんでも”似合うと思います」
なぜ“なんでも”を強調しているのだろうか……
俺はその意味を、後で思い知ることになる。
ルナたちがギランと光った目で、俺を見てニヤけている。
悪寒がする……
……なんか怖いんだよなぁ。
まずはフェリが選んだ服だ。
薄紫のパーカーにゆるめのパンツ、そしてスニーカー。
いい感じだ。俺は少しホッとした。
良かった……悪い予感はきっと勘違い────
「じゃあ次は、アルマのベストチョイスね」
これは……執事服か。少し雲行きが怪しくなってきたな……
「きゃぁぁっ♡執事服のご主人様もキマってて素敵です!」
「似合ってる」
「次は私のベストチョイスです!」
試着室のカーテンが開く。
「……。」
そこにはロン毛カツラ+メイド服の俺が立っていた。
やったなお前。何が嬉しくて女装をしなきゃいけないんや。
「か……可愛いんですけど!?」
「可愛い……」
「上目遣いで“ご主人様”って言ってもらっていいですか?」
「よし、わかったルナ。それがお前の遺言だな?」
「ご……ご主人様!?その強く握った拳を下ろしてください。お願いですから!」
それからは地獄だった。全身タイツ、鬼、カブト虫のコスプレ、ケモ耳……
俺はルナたちの着せ替え人形と化した。
「じゃあ、次はアルマの番ね。無宗、これよろしく~」
試着室のカーテン越しに渡されたのは、露出度MAXのバニー衣装だった。
「……。」
俺は素早くいつもの服に着替えて────逃走した。
「あ!無宗が逃げた!」
「追いますよ、みんな!まだ、フリフリスカートを履かせてないんですから!!」
くっ……あいつら速いな。
やろうと思えば光速で逃げることもできるが、それで生じるソニックブームで街を破壊してしまうだろう。よってスピードが制限されるわけだが……
曲がり角に差し掛かった時────
ドンッ
「きゃっ」
「うわっ」
死角から突然現れた少女とぶつかり、押し倒してしまった。
「見つけた、無宗!」
「観念してください!ご主人さ……」
悪気はない。マジで事故なのだが────
俺は少女を押し倒し、俺の唇が彼女の唇に重なっていた。
「ご主人……様?」
ルナは目を見開き、呼吸が止まった。
その衝撃的な光景に脳の処理が追いつかず、ただただ唖然と立ち尽くすのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
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