謁見で王を敵に回した結果、姫を助けることになりました。
俺たちは今、王宮に来ている。
俺たちを案内しているこの騎士。見ればわかる。かなりの手練れだ。
「負内無宗。これからお前は玉座の間に通される。くれぐれも無礼な真似はするなよ。めんどくさくなるからさぁ」
俺は返事をしなかった。だって礼儀作法とかめんどいからな。
大きな扉が開く。
階段の上の玉座には威厳のある男が鎮座していた。身に纏う王の雰囲気は王冠や服装ではなく男そのものから溢れていた。
国王の脇には王妃や王女、側近である部下たちが控え、玉座の両脇には近衛騎士たちが微動だにせず整列していた。
「おいお前ら頭が高い!アルベルト・フォード・アルテミラ陛下の御前だぞ!」
衛兵の一人が怒鳴った。
しかし俺を含め、パーティーメンバーは誰一人として跪かなかった。
「あちゃー、こりゃ終わったな」
案内人の騎士がそっと呟いた。
「お前ら無礼だぞ!」
「悪いな。俺は跪くと気分が悪くなるんだ。気にしないで続けてくれ」
「貴様ッ!!」
場の空気は最悪だ。
「静まれ」
国王の一言で部屋中が静まり返った。
「負内無宗……と言ったな。お前が元奴隷であるという情報は掴んでいる。異議はあるか?」
「ない。だったらどうする」
「選択肢を与えよう、無宗。
余の配下となれば――お前が奴隷であった過去は、国家として“なかったこと”にする」
「だが拒むなら……この国の法は、お前を守らぬ」
俺はただ笑った。
それは恐怖を与えるためでも、挑発でもない。
純粋に面白かったからだ。
「勘違いするな。
お前からの評価が俺に影響を及ぼすことはない」
次の瞬間、皆の視界から俺の姿が消えた。
「────っ!?」
国王のこめかみに、冷たい感触。
指先が、銃の形を作っている。
「バーン。……なんてな」
「王から離れろ!!」
「動くな!!」
剣を抜いた兵の手が、震えていた。
「……下がれ、無宗」
その声には、怒りも焦りもなかった。
ただ────その瞳は冷徹だった。
「余は生涯忘れぬ。
王の前で、刃を向けた男の名を」
────その場にいた私も、
その光景を見ていた。
私はセフィリア・エル・アルテミラ。このアルテミラ王国の第一王女だ。
私は勇者との婚約が決まっていた。勇者は誰にでも分け隔てなく接する誠実な男────の皮を被ったクズだった。彼の目には皆等しく道具のように映っていた。
それは私も例外ではなかった。
「あぁ僕のセフィリア。君はそのままでいてくれよ。余計なことは考えず、ただ僕の言うことに従ってればいいんだ」
「君に意思なんて必要ない。ただ僕の物でいればいい。それが全てでそれこそが君の幸せなのだから」
父の前では“いい人”を完璧に演じている。故に父の評価は高い。
あれでも父は家族思いだ。私のことを想って誠実に見える勇者を婚約相手に選んだことも知っている。
だからこそ“嫌だ”とは言えない。父を否定することになる気がしたからだ。
だから────
「勘違いするな。
お前からの評価が俺に影響を及ぼすことはない」
────王の言葉を、拒んだ。
それだけで、胸がざわついた。
父の命令に逆らう者など、今まで一人もいなかったから。
羨ましい。
ただ、それだけだった。
そして私は王宮から脱出する計画を立てた。
父を否定しないために。そして私が“私”であるために。
ローブを身につけ、フードで顔を隠し、裏門の見張りが交代するタイミングを見計らって外に抜け出した。
外に出るとまだ城の兵が周りを巡回していた。
私は隠れるように裏路地に入った。
「ここまで来れば大丈夫」
「おいおい女の子一人でこんな裏路地来たら危ないぜ」
「!?」
私は三人の男に囲まれていた。
「って……その青い髪に紫の瞳。もしかして……」
「うひょー。こいつは上玉だ」
「セフィリア・エル・アルテミラ王女……だな?」
「……っ」
「こいつ攫って、身代金たんまりだぜ」
どうする……このままじゃ捕まる。
「残念でしたね。私は今、1人じゃありません」
男は私が指さした方向に振り返る。
今だ!
私は走り出した。
「おい逃げたぞ!追え!」
裏路地の出口が見えた。逃げられる!
「……っ!?」
その瞬間私は腕を掴まれ裏路地に引きずり込まれた。
「嫌っ!やめて離して!!」
服を脱がされかける。
「少しは楽しませろよ」
「助け……」
あぁ……私、間違ってたのかな。あのまま王宮で勇者と結婚する道を選んでいれば、まだマシだったのかな。
もうおしまいだ。こんな裏路地に助けは来ない……
「無理やりは良くないぞー」
「だ……誰だ!?」
バゴォォォォォンッ
その瞬間、私を押さえつけていた男が蹴り飛ばされた。
「テメェッ何しやがる!」
「寄ってたかって1人をいじめるのは良くないんじゃないの?」
「あ……あなたは……」
その男はどこか抜けているような雰囲気だった。
「あれ……君どこかで会ったっけ?まぁどうでもいいけど」
しかし、気づいた時には残りの2人も吹っ飛ばされていた。
「大丈夫?……じゃないか。怪我はない?」
この人なら、私を“私”として見てくれる気がした。
間違いない。この男は……
負内無宗だ。
※活動報告に第一王女のセフィリアのイメージイラストを載せました。興味がある方はぜひ見に来てください。
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