元奴隷Sランク冒険者、今度は奴隷少女を救います。
人気のない森で、俺たちは向かい合っていた。
相手は、かつて俺を奴隷としてしつけた男────ドレム。
「しかしおかしいですね。本来隷属の首輪は、無理に外したり破壊したりすると、奴隷が死ぬように設計されているんですがね」
「そ……そうなの?」
「はい。てっきりご主人様なら知ってると思ってましたが……」
初耳である。ていうか俺、首輪破壊したときワンチャン死んでたってこと?怖すぎだろ。
ドレムが不敵な笑みを浮かべる。
「やれ」
その瞬間、ゴツい男の奴隷三人が俺に殴り掛かる。
1人目の攻撃をかわして裏拳で吹っ飛ばす。
2人目も同様にかわし、今度はデコピンで弾き飛ばす。
3人目は素手で掴み、そのまま地面へ投げ捨てた。
「……っ!?Sランク冒険者という噂は本当のようですね」
「もう終わりか?」
ドレムはニヤリと笑い、後ろを向いた。
「出番ですよ」
ドレムの後ろには茶髪ボブヘアの獣人少女の奴隷がいた。
「お……女の子ですか?」
「この子は珍しい獣人の奴隷です。戦闘力は人間の比じゃありません。Sランクのあなたはどれだけ持ちこたえられるでしょうかね」
獣人少女はどこかためらいの表情を見せる。
「さっさとあいつをボコボコにしろ」
「……っ!?」
獣人少女が一瞬で距離を詰め、凄まじい衝撃波とともに俺を吹っ飛ばす。
バゴォォォォォォォォンッ!!
「無宗!」
「ご主人様!」
「いやぁ……いい一撃だね」
「……っ!?」
俺は獣人少女の背後に立っていた。
「まぁダメージはないんだけどね」
獣人少女は、俺の何気ないデコピン一発で吹っ飛んだ。
バァァァァァンッ!
吹っ飛ばした方向から獣人少女が勢いよく飛びかかり、俺にラッシュ攻撃を仕掛ける。
ダダダダダダダダダダダダダダッ!!!
俺は全て片手で弾いた。
獣人少女が拳を強く握る。
「……っ」
俺は獣人少女が全力の一撃を放とうとした瞬間の一瞬の躊躇を感じ取った。
ダァァァァァァァァァァァンッ!!
俺は攻撃を片手で受け止め、手刀で気絶させた。
「そんな……馬鹿な!獣人族だぞ!!」
「次はお前だ」
ドレムに近づこうとした瞬間、俺の背後から放たれた矢が直撃した。もちろん俺に攻撃は無効だがな。
後ろを振り返ると、ルナが弓を構えていた。
「いやっ……なんで……体が勝手に」
ルナの首元には黒い刻印が刻まれていた。
「私は、一度しつけた奴隷を主人の有無関係なしに自分の支配下に置けるのですよ。なぜかあなたには効かないみたいですがね」
「……っ!?」
ドレムが勝ち誇った表情でニヤける。
「見ていればわかりますよ。あなた、仲間思いですよね?」
「申し訳ありません……ご主人様」
「まさか自分の仲間を傷つけるなんて……できませんよね?」
その考えは間違ってはいない。だがそれがどうした?ルナを傷つけずに支配を解除すればいいだけの話だ。
俺は手をかざした。
「来い。ベルゼリオン」
俺は異空間にしまっていたベルゼリオンを呼び出した。
「すまないルナ。一瞬だけ我慢してくれ」
「え?」
ベルゼリオンの刀身から溢れ出した黒い液体がルナにまとわりつく。
「きゃっ!」
「ルナ!」
「な……何をしているんですか」
ベルゼリオンのスキル────非実体捕食と液体捕食。その合わせ技だ。
「お前の支配の刻印を捕食しただけだ」
「じ……自由に動けます!」
「は……はぁ!?ふざけるな!!」
ドレムから余裕の表情が消え失せた。
「最強の獣人奴隷を倒したかと思えば刻印を捕食?いい加減にしろ!そんなイージーモードな人生があってたまるか!!!」
「これが現実だドレム。というわけで借りは返すぜ」
俺はドレムを空高く蹴り飛ばした。
ドォォォォォォォォォォォンッ!
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「さらばだドレム」
ダァァァァァァァァァァァンッ
ドレムが遠くの山に落下した。
「終わったね無宗」
「ご主人様。ありがとうございます」
「スッキリしたぜ」
俺は呟いた。
帰ろうと歩き始めた、その時。
ふと下を見ると────気絶した獣人少女の頬を、一筋の涙が伝っていた。
「お父さん……お母さん……会いたいよ……」
「……」
獣人少女にベルゼリオンを向ける。
「無宗!?」
「何をするんですか!?」
黒い液体が獣人少女を覆う。
「心配するな。ベルゼリオンでこいつにかけられた隷属術式とドレムの刻印を捕食しただけだ。」
ガシャンッ
隷属の首輪が外れた。
奴隷ではなくなるが、死ぬことはないだろう。
「本当に奴隷を解放できるなんて……」
「まぁ、無宗だしね」
獣人少女が目覚める。
「ここは……」
「俺たちが借りてる宿屋だ」
獣人少女は思い出したかのように周りを見渡す。
「心配するな。ドレムはいない。そしてお前はもう奴隷じゃない」
「うそ……首輪がない。……夢じゃないよね?」
「もう君は自由だよ」
獣人少女は少し嬉しそうだった。
「でもなんで解放してくれたの?」
「そういう気分だっただけだ」
「気分なんだ……」
クリアが苦笑いを浮かべる。
「あなたの名前はなんていうんですか?」
「フェリ……」
「フェリ、お前親に会いたいか?」
「……っ!?会いたい!!」
「じゃあその親探し、協力してやるよ」
「いいの?……でもなんで?」
「面白そうだからだ」
ルナがフェリの耳元で囁く。
「ああ言ってますけど、私たちのご主人様……本当は優しいんですよ?」
「ルナ、余計なことを言うな」
それからフェリの服を買いに行った。奴隷服のままじゃかわいそうだからな。
そして4人で一緒に夕食を食べた。
「おいしい……」
フェリが涙を流す。まともな食事は久しぶりだったのだろう。
「わたし……こんな幸せでいいのかな」
「フェリはもう奴隷じゃない。これからなんだってできるんだ。だから自分が幸せじゃいけないなんて思うな」
「……っ!!うん!」
夜……
一部屋で四人が生活するには狭いな。
そろそろ宿屋から一軒家に移ってもいいかもしれない。
右にはルナ、左にはクリア、上にはフェリ。
「なんでこうなった……」
「なんででしょうね?」
「俺、別の場所で寝ていいか?」
「ダメです」
「ダメ」
「……だ、ダメ」
3人の声が揃った。
3人が俺の体に密着している。
大丈夫……俺は賢者だ。
翌朝、
やった。勝ったぞ。……俺は耐えたんだ。
「おはようございます、ご主人様」
「どうしたの無宗。そんなにニヤニヤして……」
「なんでもないさ」
一方、街では……
「おい、あの噂聞いたか?」
「新人Sランク冒険者の無宗が元奴隷ってやつだろ。本当なのか?」
ドレムとの一件から、俺が元奴隷であるという噂が流れ始めていた。
※活動報告にフェリの立ち絵を載せました。
あの無宗を吹っ飛ばしたケモ耳少女の見た目が気になる人は、ぜひ見に来てください。
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