元ご主人様に再会しましたが、俺の辞書に“服従”の文字はありません。
奴隷商館にて────
その男は、ある“異常事態”の報告を受けていた。
「本当ですか?にわかには信じがたいですね」
「全て本当の話だ」
「奴隷が主人に逆らい、隷属の首輪を外す……あってはならないことです」
「俺の奴隷を……しつけ直してくれ」
「いいでしょう。私のしつけ不足が原因かもしれませんしね。この奴隷商兼“調教師”のドレム・チョウキョレアが、その奴隷をしつけ直しましょう」
その頃俺たちは、
「ご……ご主人様。本当にいいんですか?」
「なんでも買ってくれるの!?」
「もちろんだ。喰帝討伐でたっぷり稼いだからな」
ルナとクリアが目を輝かせている。
「今日は好きなだけ買うぞ!!」
そして、
俺たちは服屋に来ていた。
「お前たちはどんな服がいいんだ?」
「私は機能性重視でしょうか。弓使いに適した服が欲しいです」
「私は可愛いのがいい!」
その後も服選びは続き、
「緑と紫で迷ってるのですがどっちが良いでしょうか」
「うーん……どっちも似合ってるけどな。あくまで俺の意見だが緑とかどうだ?」
「いいですね!緑にします」
「やっぱりピンク!ピンクだよね」
「クリアはピンクが好きなんだな」
「うん!」
2人とも楽しそうで何よりだ。
「良かったら試着とかしてみますか?」
服屋のお姉さんが話しかけてきた。
「いいね。ルナ、クリア、試着してみな」
「はい!」
2人は楽しそうに試着室に入っていく。
「しかしお客様、珍しいですね。奴隷に服を買い与える人は滅多にいないですよ」
「そうなのか?でもそれは俺には関係ないかな」
服屋のお姉さんが少し驚く。
「……優しいのですね。お客様は」
「試着できましたよ。ご主人様」
そして試着室のカーテンが開いた。
「おぉ」
ルナは軽装のアーチャー装備を身につけていた。
胸元と腰回りを革でしっかりと固定した動きやすい服で、短めのスカートの下からは引き締まった太ももがのぞいている。
肩には深緑のマントを羽織り、腰には矢筒と小さなポーチ。
見た目は可憐だが、実戦向きの装備だと一目でわかる。
「私も試着したよ」
クリアが選んだのは、淡いピンクを基調としたローブだった。
白を混ぜた柔らかな色合いで、全体にフリルやリボンがあしらわれている。
一見すると可愛さ重視の服装だが、生地はしっかりしており、動きやすさも考えられているようだった。
フード付きのローブに、腰元には魔道具を収めるためのベルト。
まるで魔法少女のような装いだが、これがこの世界では立派な魔法使いの服なのだろう。
「2人ともすごい似合ってるじゃん。かわいいよ」
「……っ!?」
「か……かわ!?」
2人の顔が一瞬で赤くなる。
「いきなりそういうコト言うんだから……」
「あはは……なんだか照れちゃいますね」
「俺、なんか余計なこと言っちゃった?」
「いいえ?」
「全然」
するとルナは言いづらそうに口を開く。
「あの……ご主人様。下着を見に行きたいんですが」
「あぁ全然いいよ。今日はなんでも買っていい日だからな」
「そういうことじゃなくて……」
「私たちの下着を見る気?」
「いや、そんなことしねぇよ」
俺は店の外で待つことにした。
30分後、
「終わりましたよ。ご主人様。」
「OK。じゃあ会計を……」
「無宗は服買わなくていいの?」
「あ……」
すっかり忘れていた。
そして俺の服選びが始まった。
「パーカーとかないかな?」
「ぱーかー?」
「なにそれ」
「フードがついた服だよ」
服屋のお姉さんが口を開く。
「ぱーかー?かどうかは分かりませんが、フードがついた上着ならございますよ」
見た目はパーカーの白く薄い生地の服が出てきた。
「他の色はないのか?」
「申し訳ありません。この店にはこの色以外ないんですよ」
まぁ色くらい自分で変えられるし大丈夫だろう。
「ご主人様!このコートとかどうでしょうか」
「たしかにシンプルな黒でかっこいい」
「お客様にお似合いだと思いますよ」
「試しに着てみるか」
着てみると、足元まである薄い生地のコートだった。
「似合ってます、ご主人様」
「いいんじゃない」
「いいね。これを買おう」
「お買い上げありがとうございました」
俺たちは服屋を出た。
「ルナ。その買い物袋を俺にくれ」
「いえ、私が持ちますよ?」
「まぁいいから」
ルナが俺に荷物を渡す。
“アイテム収納”
「荷物が消えた!?」
「アイテムボックスだよ」
「たしかに、これは便利ですね」
「しかしご主人様、変わったファッションですね。コートの下にぱーかー?を着るなんて」
「俺、結構パーカー好きなんだよね」
「いいんじゃないの」
その後も俺たちは買い物を楽しんだ。
串焼きの肉を食べ、
「この肉おいしい!」
「おいしいです」
そして最近流行りのスイーツも食べた。
「この包み焼き菓子、美味しいです!」
前世ではクレープと呼ばれていたな。
クレープを食べ歩きしていると、ロン毛の男が4人の奴隷を連れて俺たちの前に現れた。
「久しぶりですね。ルナ、そしてムソウ」
「……っ!!」
ルナは俺の袖をぎゅっと握った。
ムソウか……今は“負内無宗”なんだがな。
「誰?」
ルナの震えが、背中越しに伝わってくる。
────だからこそ、俺は一歩前に出た。
今の俺は違う。怯える側じゃない。守る側だ。
「お前は……」
「ドレム・チョウキョレア。覚えているでしょう?」
男はニヤリと笑う。
「あなた達の最初の“ご主人様”ですよ」
子供の頃の記憶が蘇る。
バチンッ……
バチンッ……
「いたい……やめて」
「わかってませんねぇ。言うことを聞かない奴隷に未来などありません」
「ぐすん……ぐすん」
「あはは……泣いても意味ないですよ。奴隷の涙に価値はありませんからね」
「服従することこそが奴隷の幸せなのですから」
その言葉とともに、俺は鞭や暴力を延々と受け続けた。
ここじゃアレですので、場所を移しましょう。
街のど真ん中で騒ぎを起こすのもやばいと思ったから、俺たちは人気のない森に移動した。
「その服、そしてさっき食べていたスイーツ。ずいぶん楽しそうでしたね」
「お前には関係のないことだ」
「どうやって隷属の首輪を外したのかは知りませんが、あなたが人として幸せになることは許されません」
「私たちが何しようが自由でしょ」
そのクリアの言葉を聞いてドレムは笑いだした。
「奴隷が自由に?はは、冗談でしょう」
ドレムは笑顔のまま告げた。
「あなたにはもう一度、服従してもらいます」
俺は鼻で笑った。
「残念だったな。今の俺の辞書に“服従”の二文字は存在しないんだ」
「その余裕の表情……気に入らないですね。後でしつけるのが楽しみです」
俺は不敵な笑みを浮かべた。
「やってみろ。今度は俺がしつけてやる」
※活動報告にクレープを楽しむ“ルナ・クリア・無宗”のイラストを載せました。興味があれば、ぜひ見に来てください。
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