4話「戦争」
その後、偶然居合わせた住民らの通報により、事態はますます大きくなる。
しばらくすると警察がやって来て事情聴取を受けることになったので、大人しく署に連行されて事情を説明した。
当然ながら、まったく理解されずに十中八九捕まることが確定したので、オロカは反抗の意志を示して、署の人間をあらかた殺害し脱走する。
墓の街に戻ると、現場を調べていた警察を発見。オロカの存在に気が付いた警察が銃を向けて来たので、撃たれる前に全員殺害した。
オロカの目的は墓を守ることでしかなかったので、そのまま家に篭り続ける。
すると今度は、警備隊や軍隊が街中だというのに兵器を投入してやって来てしまう。
「抵抗をやめて大人しく出てきなさい」という最後の呼びかけにも応じることはなく、オロカは正面衝突を望んだ。
「久しぶりだなー、この魔法……」
勇者として活躍した時代でもそう使わなかった、超大規模な魔法での奇襲攻撃。
巨大な魔法陣を展開して、全方位に向けて光の玉を機関銃のごとく放つ。
弧を描きながら放たれる光の玉は、街を取り囲む人間に無作為に命中して、周囲に血飛沫を撒き散らすことになる。
それをもってして、オロカと国との戦争が本格的に開始される。
絶え間なく降り注ぐ弾丸の雨。大抵は墓に遮られて、地面に空薬莢の絨毯が形成される。
時々、隙間を掻い潜って家や相棒の墓まで飛んでくるが、その弾丸に限ってのみバリアを形成して防ぐ。
もちろんオロカも速射魔法を撃ち返していく。銃と違って追尾や方向転換が可能なので、一発一発を確実に敵にぶつけて、一撃で命を刈り取る。突撃する間も与えずに、一方的に敵を蹂躙した。
敵の前線の真上に光の玉を空中設置しておくことで、それがいつ自分達に降り注ぐか分からない恐怖を植え付けたりと、工夫を凝らしながら必死に戦った。
最初のうちは圧倒的にオロカ側が優勢だった。攻撃によって墓に込めた大切な記憶が失われてはいったが、相棒との思い出さえ残ればそれでいい。そうやって言い聞かせて割り切って、目の前のことに集中した。
しかし、戦争が長引くにつれて、状況に変化が見られるようになる。
(はあ……はあっ……)
それはオロカの体力の限界だった。
何日も何日も警戒を怠らずに休みなく攻撃を続けているうちに、すっかり疲弊してしまったのだ。
当然と言えば当然のことだった。長年の経験から魔力消費を極限まで減らして、圧倒的なまでのエネルギー効率を手にしていたオロカだが、それでも一人の底力なんてたかが知れている。
数百人殺害しようと数千人殺害しようと、まだまだ何万何十万の人間が押し寄せてくる。
無数に同じ作業を繰り返しているうちに、ついには立つこともままならなくなってしまう。
(…………)
もはやここまで。伝説の英雄も現代の武力には抗えず、魔法も技術に及ぶことなく。敗北の現実を突きつけられることとなる。
最期まで抗うか、大人しく降伏するか。長く葛藤した末にオロカは、
「万事休す……かなぁ……」
後者を選択した。
家の中から姿を現すと、両手を上に掲げて意思を示しながら、警備隊らの前へとふらふらと赴く。
向こう側の統率者に条件付きで降伏する旨を伝えて、向こうもそれを承諾。最終的に両者合意のもとに案が呑まれることになった。
万に匹敵する数の犠牲を払って、ようやく戦争に終止符が打たれたのだ。
それからオロカは連行された末に、問答無用で死刑判決が下される。
数週間程度の時間を設けられた後に、断頭台の前に引き連れられることになる。
断頭台の周りには、英雄の処刑と聞いた民衆が細胞のごとくギチギチと集まっていて、それぞれオロカに蔑みや非難の言葉を投げ付けていた。
オロカの服は襟元が剥がされていて、蒼く細々しい肌が少しばかり露出している。
手は腕ごと縄で縛られていて、側にいる男二人に体を押されて、断頭台に向けて進行する。
オロカは一切の抵抗を見せず、速やかに頭部を半円形の基盤に固定されて、目を瞑った。
執行人は準備が整ったことを確認すると、すぐさまレバーを引いて、ロープで上部に固定されていた刃を落とした。
重さ20kgにもなる刃が落下して、その細々しいオロカの体を、綺麗に二つへと分けた。
反動で頭部を失った体が少しだけ跳ね上がって、処刑台を外れて地面に接地した。
オロカの生涯は、こうしてあっけなく終わることとなった。




