3話「殺害」
オロカは侵入者全員を一箇所に集めて縄で締め上げる。
受けた被害は百数十基程度。実に百数十年分の記憶がこの一瞬にしてなくなってしまった。
(最悪だ……あの子との思い出がっ……)
もしかしたら、重要な情報が込められていたかもしれない。ただ墓を壊されただけでは済まない見た目以上の損害が、オロカを襲った。
オロカは侵入者をどう片すべきが悩み始める。連行するか、あるいは……
「おやおや、これはまあ……」
「……!」
そこに、聞き覚えのある声をした人物がやって来る。
毎日のように聞く、というかさっき話し別れたばかりのうざったい声。国の人間だった。
男の周りにはなぜか複数人の警備隊の姿。まるで準備万端と言わんばかりの対応。
男は、
「いけませんねえ、こんなことをしては。たとえ魔女様と言えど、この国では法律こそが絶対。その物達と共についてきていただきますよ?」
無駄なことは一切述べずにそう言う。
「あなた方が仕向けたんですよね? 準備していないと、この短時間でここまで来ることはできない。それが国家のあるべき姿で?」
「間違った前提で話を進めないでいただきたいものです。根拠がない以上はあなたの発言は妄言に過ぎません。詳しくは署で聞かせてください」
「……権力ってのはつくづく厄介だなぁ」
オロカは再び親指と人差し指を立てて、今度は男に対して向ける。
側にいる警備隊も銃を構えて、オロカに射線を向ける。緊迫した状況が生まれる。
「分かっているでしょう、こんなことをしても意味がないと。あなたは話の分かる方だ。手を下ろして大人しく従うことです」
オロカは微笑む。
「ふふっ、一つ勘違いをしておられませんか?」
「……?」
「あなたの目の前にいるのは数千年前生まれの人間。必要とあらば、種族問わず数々の生命を躊躇うことなく自らの手で屠ってきた正真正銘の英雄ですよ? 現代の倫理で推し量れると思うだなんて、いささか思慮が浅いですね!」
男は、
「なっ……! う、撃……」
だが言い終わる前に、オロカは一切躊躇うことなくエネルギーを放出した。
炎の属性が増やされた無数の光の玉は、一瞬のうちに相手を包み込んで、燃え上がらせるに至る。
男達は、なす術もなく炎に呑まれて、苦しみ悶えて焼かれていく。
先ほどまでの余裕そうな口ぶりは、もうそこにはなかった。
最初は大声を出してのたうち回っていたが、次第に声は掠れて、最後には事切れる。
「うん、せいせいした」
オロカは国の人間を殺害して、満面の笑みを浮かべる。
そして背後へと振り返り、
「じゃあ、次はあなた方ですね!」
そこにいる侵入者に向けて言い放った。
オロカは、各々命乞いや情けない声で泣く大男達にも、まとめて私刑を下した。
平和なこの世界に、僅かな亀裂が生じる。亀裂の進行は、留まることをまるで知らなかった。




