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2話「襲撃」

 オロカは日用品や食料を買いに、近くのビル街を歩いて訪れる。

 周りにはスーツ姿の社会人や、主婦や学生の姿。まばらな年齢層が入り乱れている中に、オロカも紛れていた。


 だが、明らかにオロカだけが異彩を放っていた。多少奇抜な服を着た人間もいるが、オロカの魔導服に関しては時代から明らかに系統が違う。

 それでも人々の目を引かないのは、周りがオロカのことをすでに周知しているからであろう。

 よくこの辺りに来るのもあって、驚かれるのはごく稀な出来事だった。


 オロカは生活に必要な物をある程度買い揃えると、街中にも関わらず古風で不気味な雰囲気を放つ店の中に入る。

 そこでは謎の粉末や生き物の死骸など、見るからにゲテモノばかりが売られていて、オロカはその品々を嬉々として購入する。

 これらはもちろん、すべて実験や薬の開発などに用いられる。

 大抵は失敗に終わるが、たまに人類に有益なものが出来上がることがあり、度々表彰されることもあったり。

 数千年衰えることなく生きていられるのも、その賜物である。


「よし、これで全部買えたかなー……」


 用事を済ませたオロカは、買い忘れがないかよく確認しながら、適当に辺りを散策し始める。

 家に帰ったら、嫌なことなど忘れてたくさん研究に没頭しよう。そう考えていたときのことだった。


(……っ!)


 オロカはふと足を止めると、家の方向を振り向いて、何かを気にして走り出す。

 自身の墓の街の中に、侵入者が入り込んだのを感知したのだ。

 急いで向かおうとすると、突然強い頭痛がしてきて、オロカは思わず頭を押さえる。


(これは……まさかっ……!)


 大切な墓が壊されている。オロカは瞬時に悟った。

 これまで詳細に覚えていた1595年前の記憶や、2161年前の記憶。さらには3253年前のかけがえのない思い出までもが、複数人の手によってどんどん壊されていくのを身をもって感じる。

 そこまで重要な出来事は起きていなかったはずだが、本当にそうなのかは定かではない。


 今すぐに止めなくてはならない。オロカは魔法を行使して、何もない空間に魔法陣を展開して、箒を取り出す。

 箒に飛び乗るように跨ると、そのまま全速力で空を駆け抜けた。

 普段は見かけないオロカの焦り様を、街の人間は不思議そうに見上げていた。




 ものの十数秒で墓の街は見えてくる。

 オロカは地面に突っ込む勢いで高度を下げると、タイミングを見計らって箒から飛び降りて、勢い良く地面に着地した。

 視線の先には、一人の大男が棍棒を持っていた。そのすぐ側には、すでにいくつか壊れた無惨な墓の姿。

 オロカは、こちらを振り向く大男を睨み付けながら話しかける。


「何やってるんですか……勝手に人様の領地を荒らして……。それが国のやることですかっ……!」


 大男が返す。


「国? 知らねえよ。俺達はただこのバカでかい墓が気に入らなかっただけだ。こんな無駄なもん残すくらいなら、ビルの一つや二つでも建てたほうがよっぽど有意義だしな。もう壊しちゃってるし、このまま解体でいいよなぁ?」

「そう……あくまでシラを切るつもりなんですね……。わざわざ使いなんて寄越して、壊してしまったものは仕方がない……か……。タダでは返しませんからね……?」


 オロカは構えを取って迎撃体制に入ろうとする。

 すると、


「おっと魔法か? そうはさせねえよ」


 大男はホルスターから拳銃を取り出して、引き金に指をかけずにオロカへと向け始める。


「動いたら撃つぞ? あんたは不老不死だが、べつに無敵ではない。実験に失敗して救急搬送されてる姿をよく見かけるからな。このまま大人しく解体される様を見ときな」


 オロカは自身に迫る危機を理解して、大きなため息をつく。


「はあ……。その道具がどういう経緯で生まれたのか、習ったことはないんですか?」

「?」


 オロカは、物怖じすることなく親指と人差し指を立てたかと思うと、それをすぐに大男へと向けて、


「容赦はしませんから……。バンッ……」


 放った。

 人差し指の先から突如放たれる光の玉。目視不可能な速度で空を走ると、瞬く間にそれは大男の肩に命中する。


「がはっ……!」


 大男は痛みのあまり棍棒を落として、その場で悶えて動けなくなる。


「銃は私を基に開発されたんですよ? オマージュ元が負けるとでも?」


 オロカはそんなセリフを吐きながら、自身の周りにいくつもの魔法陣を同時に展開して、そこから無数の光の玉を同じように発射する。

 一度花火のように打ち上がった光の玉は、それぞれすべての侵入者に向けて落下していき、いずれも命中。全員がまともに動けない状態と化す。

 一瞬にして、オロカはすべての侵入者をあっという間に片付けてしまった。


「まったくもう……」


 オロカがそう溢す。

 無数の光の玉を高速で放ち続ける。それが速射魔法と呼ばれる、オロカの戦闘スタイルだった。

 魔法の威力自体は大したことはないが、圧倒的なまでの速度と物量で押し切ることで、相手を翻弄する。

 さらにオロカは、この光の玉に属性を付与したり、通常の数倍まで飛距離を伸ばしたりと、攻撃パターンにバリエーションをつけることで、強者としての地位を確立する。

 その甲斐あってか、対人戦では敵なし。大抵の魔物も秒殺。足りない分の火力を相棒が担うことで、オロカ達はドラゴンを倒して、魔王を倒して伝説の英雄となった。


 それから数千年の時を経て、平和になってやがて魔法を扱う者がいなくなったときに、とある一人の職人は考える。

 オロカの速射魔法を、誰でも手軽に扱えるようにはなれないだろうかと。

 そうしてその職人が生涯をかけて幾千もの開発を繰り返した結果、生み出されたのが銃と名付けられた代物である。

 生まれた当初は欠点も数多くあったが、時代を重ねるごとに改良が重ねられて、今では本当に誰もが速射魔法を擬似的に扱えるようになる。

 技術の進歩によって、人々は魔法に匹敵、あるいは凌駕し得るほどの力を身に付けたのだ。

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