第21話 一人ではないという事。
「では、問題が無ければ、予定通りに進めてください。人の割り振りは作業頭のエイクの指示に従って下さい。エイク、よろしくね。」
「はーい。」
「今年の作業員は足りている?」
「ああ。新しくデニスんとこの息子も二人入るし。今んところ、体調が悪い奴もいねえし。」
「そう?よろしくね。何かあったら言ってきて。」
春先からの農業公社の予定の確認会。
10に分れた農地の管理を任せている人たちが集まってきた。研究員も農業指導員も揃っての、春の定例会議だ。
それぞれの所に試験場から農業指導員を派遣している。人員と作業の全体的な管理業務の頭はエイク。収量と保管の管理も担っている。もう10年以上のベテランだ。
「なあ。うちの領でもなあ、牛を飼ったらどうだべな?」
「牛?」
「ああ、肥やしは隣の領から買ってんべ?それをな、自領でまかなえたらいいべと思ってな。まあ、すぐには無理だべげんじょ。」
「うーん。採算が取れるかしら?」
「公社の区画の北西部の向こう側は耕地に向かねえがら、そこの者たちは細々と家畜飼ってんべ?」
「そうね。」
「そこをなあ、公社化して牛、飼うのどうだべな?あそこからなら肥やし運ぶのも簡単だしな。どうだべ?肥やし代も運搬費もばかになんねえべ?」
「エイクさん、凄いですね!いい考えだと思います。牛の飼料を変えたら、土への影響も変わるかも…いい研究材料になりそうです!!」
ゲルトが身を乗り出して興奮している。
牛、ねえ…
「生き物を飼うなら、獣医も専属でいるだろうし、家畜の知識のある人がいるだろうし…もちろん飼育員もいるだろう?肥やしだけじゃなくて、牛自体の商品価値が無ければ採算は難しくない?」
ハンスがわりと冷静に意見を述べる。
「実はな、エリックが言ってたんだ。場長と年末に領内を見て回ってたべ?あそこの地区にも行ったんだべ?あそこは確かに、あんまり豊かな土地じゃねえし。広いげどな。」
「まあ、そうね。」
「そんで、思いついたらしいぞ。俺もな、その話聞いてがら、いろいろ調べてみたんだげども、広さは充分。いんのは、柵、牛、牛舎、作業員、作業員宿舎…さっきの話がらな、牛を食用にすんなら出荷か?加工所か?あど、もちろん牛糞が肥やしになるまで発酵させる場所な。エリックともっと詰めたがったげど…忙しいんだべ?」
「僕のアカデミア時代の知り合いに、家畜系の専門の人いるし。聞いてみるよ。」
わいわいとみんな盛り上がっている。そうねえ…面白い話だとは思う。
でも、これ以上?一人でやっていける気がしない。
「まだあ、場長、むずかし顔して!一人でやんべど考えでんべ?無理無理!」
「そうですよ。これ以上はお一人では無理です。いまだってギリギリなんですから!」
「だって…みんなホントはやってみたいんでしょう?」
「今はな、エリックもいるしなあ。みんなでならできんでねえが?な?」




