第11話 最後に会った人。
「近衛第3師団長、お忙しい中、わざわざ時間を取っていただきありがとうございます。」
「いえ、こちらこそ勤務の都合に合わせて頂いて、すみませんでした。」
すっくと立った姿勢がさすがにきれいだ。
ソファーをすすめると、にっこり笑って座った。
三男のマーカスもいい男だったらしいが、次男坊もなかなか。硬派な色男、と言ったところか。この若さで師団長まで上がるくらいだ。努力もしたんだろう。
「この度は、弟さんが残念なことになってしまい…犯人もまだ見つかりませんし。」
「ああ、いや。お手数をお掛けしております。」
「目撃情報も少ないもので。なにか気が付いたことがあれば教えて頂けると助かります。」
「目撃者が、いたんですか?」
「はい。最後に会っていたのは女性らしいですね。」
「そうですか…」
「では、まず、テオドール様から見て、弟さんはどんな方でしたか?」
「そうですね…自由な奴でしたね。」
「ああ、ご長男さんもおっしゃっておりました。お金は何に使っていらしたんでしょうね?随分あちこちから借りていたようですが。」
「さあ…詳しくはわかりませんが、女ではないでしょうか?」
「やはり、女ですよねえ。これ、と言った女性が浮かんでこないんですよねえ。」
「たくさんいましたからね。」
膝の上で手を組んで、微動だにしない。騎士、って感じかな。
「ところで、話は変わりますが、公爵夫人にマルデ侯爵とマーカスさんの縁談を持ち込んだのはテオドール様だとお伺いしたんですが?」
「え?」
「あ、違いましたか?社交に詳しいテオドール様が紹介したのかと。」
「いえ。私ではありません。」
「ああ、そうでしたか、すみません。社交にほとんど出てこないご令嬢の情報など、なかなか入ってこないですものね。それにしても、急な結婚でしたよね?婚約期間がほとんどないような。マルデ侯爵についてはどのように?」
「妹さんの結婚が近いので、行き遅れの姉がいては世間体が悪いから急いでいるんだ、と聞いておりました。うちのマーカスも、ふらふらせずに落ち着いてほしいと思っておりましたので、とてもいいお話かと思いました。結婚したらさすがに落ち着くだろうと。」
「なるほど。」
「ところで、話はそれますが、従姉妹のフローレンス嬢、いえ、妃のご懐妊おめでとうございます。お父様も御喜びでした。テオドール様もマーカスさんも妹のように可愛がっていらしたと伺いました。こんな時ですが、良かったですね。」
「え…あ、ありがとうございます。」
ん?
「これで伯爵家も安泰ですね。」
「・・・・・」
「テオドール様?」
「え、ああ、そうですね。私はそろそろ仕事に戻ります。」
「ああ、お時間取らせて申し訳ございませんでした。では、最後に一つだけ。」
「はい?」
「マーカスさんは殺されたときに、かなりの金額のお金を持っていたらしいんですよ。最後に会ったのが女性だとして、あんなふうに、ねえ?」
「ああ、女性の手で首を絞めたぐらいで死ぬのか、ってことですか?」
「そうそう、そうなんです!」
「酒を飲んで油断したところで、紐かなんか使えば可能でしょうね。」
「そうですか!さすが師団長殿!疑問だったんです。ありがとうございます!」
「いえ。」
一礼して、ドアを出ていく次男坊を見送る。
さて、これで聞き取り調査も終了かな。




