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へイエス先生復活

お立ち寄りいただきありがとうございます。


 翌朝、ドアが小さくノックされ、オドネル先生が現れた。

「なんだか大変な騒ぎになっているぞ。まず、君のことを王家や君の家が探し回っている。陛下は王子を叱責し、王子はしょげかえっている。王家の事務室は、たくさんの婚約解消の書類が来ていて、その対応で大忙しだ。君のおじさんは宰相に呼ばれて、いままでのことを訊かれている。王子の取り巻きたちはみんな高位貴族のぼっちゃんたちだったのだが、みんな婚約を解消されて、それぞれの家はなんとかもとに戻れないか大騒ぎのようだ。私はこれから宰相たちに魅了の魔石についての質問を受ける。だが、魅了をかけられていた者たちにとって、あまり良い答えはできないんだなあ。王家や高位貴族たちは、こういう呪いよけをしてあるのだが、心に空きがあるとそれにかかってしまうんだ。つまり、みんな心が空きだらけだったということで、だらけきっていたからこその大惨事だから、これはもう元には戻れないだろう。ま、自業自得だ。」

「そうですか・・・」

「君は話をしたければ家に戻ればいいし、したくなければここが一番安全だろう。ま、そんなわけで、私はちょっと宰相のところに行ってくるよ。」

「はい、ありがとうございました。行ってらっしゃい。」

「ああそうだ、私には妻がいるのだが、君になにか服を持ってこれるが、いるか?」

ジュリアはふふふと笑って、「お気遣いありがとうございます。でも、制服で慣れてますので、大丈夫です。」と言った。


 オドネルが慌ただしくそう言って出ていくと、部屋はまたへイエスの寝息だけが聞こえるようになった。

「ジュリアー」

「はーい。」

「なにかお手伝いするー」

「ありがとう。あのね、私の部屋からハンカチと刺繍の道具を持ってきてもらえる?」

「わかったー」


 間もなくカカオとリープがハンカチと刺繍道具を抱えてきてくれた。

「ありがとう。」

「あとねー、うちがすごいよー。」

「ませきのことでおじさんがおしろに呼び出されたのー。おばさんはおこってずっとお酒のんでるー」

「ジュリアのおへやにはいろうとしたけど、どうしてもかぎがあけられなくて、おじさんが斧でドアを壊そうとしたんだけど、それもできなくてすごーく怒ってたよー」

「ねえジュリアー。ぼくたちのことがわかったらだめなんでしょ?ドアがあかないことでジュリアが魔女だっておじさんが言ってたよ。」

「まあ、ひどいわ。でもどうしよう。あなたたちのことが知れるとまた面倒なことになるわよね。どこかに逃げちゃいたいけど、そうすると誰にも会えなくて寂しいし、困ったわ。」

「しばらくは隠れててー」

「はい、ありがとねー」


 困ったな。まさか自分が魔女だと言われるとは予想してなかったわ。魔女ということにされてしまったら、私、大悪人になっちゃうのかしら。

どうしよう・・・


 だめだわ、考えても頭がまわらない。

そうだわ、先生が話ができるまでに回復したら相談しよう。

先生ならきっとなにかいい案を教えてくれるわ。


 そうと決めたら、刺繍、刺繍。

ジュリアは一生懸命集中して刺繍をはじめた。


 「できた!」

部屋がとっぷりと暗くなった頃、刺繍が完成した。

こんな時なのに、何か作るのって楽しいことね、とジュリアは思った。

ハンカチを眺めていると、すっと手に触るものがあった。

見ると、へイエスの手だった。「先生、お目覚めですか!」

「ああ、よく寝た。」

「ご気分は?」

「大丈夫、眠いだけだよ。君はずっと居てくれたのか?」

「もちろんです。先生は私の命の恩人ですもの。」

「そんな大げさなことを言うな。ん?今、いつだ?授業があるのか?」

「いいえ、今は土曜日の夜です。明日は日曜日ですからお休みですよ。」

「そうか・・・それで君はなぜ制服を着ているのだ?」

「ああ、これは、その・・・私、服を持ってなくて、お仕着せか制服しかなくて、それで制服を着てます。」

「おお、そこまでの仕打ちを受けていたのか。」

「先生、はやく元気になってください。先生に相談したいことがいっぱいあるんです。」

「ああ、なんだ?もう大丈夫だから言ってごらん。」

「ほんとに?ほんとにもう大丈夫ですか?」

「大丈夫だ。ただ、ちょっと疲れたから横になっていてもいいかな。」

「もちろんです。あの、何か、スープか何か作ります。私、ずっとお料理もしていたのでだいたいのものは作れます。」

「凄いな、君は。では、キッチンにパンがあるだろう。それと、卵でなにか作ってくれるか?正直言うと、私はスープというものはあまり好きじゃないんだ。」

「ふふふ、わかりました。お台所漁ってもいいですか?」

「ああ、なんでも使ってくれ。美味しければ大歓迎だ。」


 しばらくして、ジュリアはパンにソーセージにポテトに目玉焼きにトマトサラダを持ってきた。

「おおっ、うまそうだ。これを見て初めて自分が腹が減っているのを自覚したよ。君もなにか食べないか?」

「よかったー。私はこれをご相伴します。」

ジュリアはソーセージと卵とトマトのサンドイッチ。

「君は私がサニーサイドアップが一番の好物なのをどうして知っているんだ?」

「えっ!ほんとですか!偶然です。私はただ、自分が好きなものを作っただけです。あははは」

「そうか、どれもとても美味いな。」

へイエスはむしゃむしゃと完食した。


お読みいただきありがとうございます。

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