婚約破棄、国外追放
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それから会場に行き、へイエスはジュリアをエヴァたちに託し、「すぐ戻るからね。」と言い残して他の教師のところに行った。
言ったとおり、へイエスは間もなく戻ってきた。
ジュリアは一生懸命笑顔で楽しそうに話していたが、へイエスもエヴァたちも、それが空元気であることがわかっていて、どうかジュリアが傷つきませんようにと祈っていた。
そこに、第3王子たちが出てきた。
第3王子の横には腕に手を絡ませたキャシーがいる。
会場の多くの者は、キャシーに批判的な目を向け、同時にジュリアに同情的だ。
「なにあの子、ジュリア様がいらっしゃるのに失礼よね。」
「リズの婚約者があの子に夢中になっちゃってるって、リズが泣いてたわよ。」
「私はバーバラ様がやっぱり婚約者様がキャシーに夢中になっちゃって破談寸前だって聞いたわ。」
「なんだかね、王子様と取り巻きの方々がみんなキャシーの虜なんですってよ。ほかにもあの子のこと好きな男子がずいぶんいて、あの子、モテモテなんですって。そんなに魅力的な子だと思わないけどねえ。」
そんなヒソヒソ声があちらこちらから聞こえてくる。
第3王子の取り巻きの1人から
「皆の者、デビッド第3王子様からお話がある。」
城内が静まった。
「余はここにジュリア・マクレガーとの婚約を破棄することを皆に宣言する。」
会場がどよめく。
「ジュリア・マクレガーは醜い嫉妬心からキャシー嬢を長きにわたって虐げてきた。ある時は階段から突き落とし、ある時は会場から水を浴びせた。悪質ないじめでキャシー嬢は非常に傷ついている。ジュリア・マクレガーと私の婚約は今この時に無効となり、ジュリア・マクレガーは財産没収の上、我が国から追放とする。また、長らく虐待に耐えてきたキャシー嬢を余の婚約者とすることを宣言する。」
会場のどよめきは収まらない。
「ジュリア、なにか言うことがあるのではないか?」
と、取り巻きのひとりが言った。
ジュリアははっとして、
「委細承知致しました。」と言った。
王子はむっとしたような声で
「言うことはそれだけか?もっと言うことがあるのではないか?」
「と、おっしゃいますと?」
キャシーがそこに割り込んで
「謝罪の言葉がないのよ。」と言った。
ジュリアがちらりとへイエスを見、へイエスが頷いた。
それに勇気をもらったようで、ジュリアが
「恐れながら、婚約破棄の件に関しましては、私も同意致します。ただ、殿下からの理由ですが、いささか事実と異なることがございます。」
「なんと、口ごたえするのか。」
「口ごたえは致しません。事実を申し上げます。私はキャシーを虐待してはおりません。逆でございます。また、階段突き落としの件、水を浴びせたという訴えは、ことごとく、嘘偽りでございます。階段突き落としの件は私は全く知らぬこと、水を浴びせたということに関しましては浴びせられたのは私のほうでございまして、それには証人も何人もいらっしゃいます。そして、こちら。」
ジュリアは魔道具を取り出した。
「なっ・・・」キャシーが絶句した。
「これはキャシーが街の魔女の店にて購入したものでございます。キャシーの部屋から発見致しました。魔女様の証言で、購入した者は、栗色の髪に茶色の瞳。15−6才、背がすらりと高い、平民の格好をしていたが、ものの言い方が貴族で、傲慢で人を見下している、ということでございます。」
そこまで言うと、ジュリアはキャシーに向き直り、
「キャシー、魅了を解呪しなさい。」
キャシーは青ざめていたが、
「な、なんのことだかわからないわ。」
と答えた。
「キャシー、あなたが解呪すれば、あなた自身の体は大丈夫なのよ。でも、あなた以外が解呪すれば、あなたの体に相当大きなダメージが来るわ。だから言ってるの。自分で解呪しなさい。」
「いやよ。私はそんなこと、知らないわ。」
王子が
「妙な言いがかりはよせ。者共、この者を牢へ。」
騎士たちは少し戸惑いの表情を見せた。
そこに、へイエスの詠唱の声が低く流れた。
「なっ・・・なにをしている。」
その場が光った。そして、王子をはじめ、取り巻きの者たち、他に何人かの者たちが、蹲り、或いは膝を付き、呆然としている。
王子がすがりついているキャシーを見て言った。
「お前はなんだ?離れろ。不敬だぞ。」
「デビッドさまぁ、なにをおっしゃってるの?」
「殿下の名を呼ぶなど、とんでもない。今すぐ離れて控えろ。」
取り巻きのひとりがそう言い、騎士達が身構えた。
「なに言ってるの?冗談はやめてちょうだい。ああ、わかったわ、ジュリアね、ジュリアの仕業ね。デビッドさま。ジュリアを捕まえてちょうだい。」
「お前は狂っているのか。者共、この者を牢へ引っ立てぃ。」
「はっ。」
騎士たちはキャシーの両腕を持ってひきずって退出した。
その場にいた者たちは、皆、唖然としている。
「殿下、お気づきになりましたか?貴方様にかかっていた魅了が今解呪されました。そして、魅了をかけた者が解呪によってあのような姿に変わりました。ここからは、殿下、どうぞ陛下とお話になるとよいかと、失礼ながら申し上げます。それでは私はこれにて失礼致します。」
ジュリアはそう言うと、堂々と会場から出ていった。
あとには呆然とした王子、取り巻きたち、魅了がかかっていた者たちが残された。
王子はひとりで佇み、他の者達はそれぞれの婚約者を探して駆け寄っていた。が、喜んで迎えられた者はいなかった。
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