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いよいよ戦い

お立ち寄りいただきありがとうございます。


 数日後、マーサがジェフからの手紙を持ってきてくれた。

『方法はわからなかったが、買った人の特徴はわかった。栗色の髪に茶色の瞳。15−6才、背がすらりと高い、平民の格好をしていたが、ものの言い方が貴族で、傲慢で人を見下している。』

「マーサ、これをお願い。」

『方法はわかったわ。買った人の情報、とても助かりました。ジェフ、本当にありがとう。」

「マーサ、ジェフにとても助かったって私が言ってたと伝えてね。」

「まあ、お嬢様、ありがとうございます。」


 あと少しで舞踏会という日、ランチを友人たちと一緒にとっていたジュリアはエヴァに

「舞踏会の日は大丈夫?」と訊かれた。

「うん、王子様に、当日はエスコートしないから1人で来い、また、青いドレスは着るなって言われたわ。」

「なによそれ!ふざけてるわ。」エヴァが怒っている。

サマンサが

「ねえジュリア、ひとりで舞踏会に行くの?もしよかったら私の兄でも弟でもエスコートするわよ。」と言った。

「ありがとう。でもね、へイエス先生がエスコートしてくださるってことになったの。」

「へイエス先生が?」

3人の友人たちは一斉にそう言ってニヤニヤしだした。

「へイエス先生ならお似合いだわね。」グレイスがそう言う。

「そうよ、へイエス先生はファンが多いから、ヤキモチ妬かれちゃうかもよお。」

サマンサがからかう。

「いやあね、そんなんじゃないわよ。」

エヴァが

「ふーん、じゃあどうしてあなた、赤くなってるのよ。」

「えっ?えっ?いやだ、なんでもないわ。」

焦りまくるジュリアを見て、友人達が

「よかったわ。へイエス先生がついててくださるなら安心だわ。」と言ってくれた。

エヴァが

「それで、ドレスの色は何色にするの?」と訊くと、

「そうなのよね、まあ、青以外ならなんでもいいから、今まで青いドレスばっかりだったから、なにかお母様のを見繕って着るわ。」

グレイスが

「それなら緑がいいわよ。」

「どうして?」とサマンサが訊くと

「そりゃあ、似合うからよ。」

と、グレイスが言って、ジュリアに気づかれないようにサマンサにウインクした。

「そうかしら?私、緑って似合うかしら?」

ジュリアが訊くと

「うん!似合うわよ、とても。」とサマンサが言い

「そうね、ジュリアの髪の色とも合ってるし、なんか、緑ってジュリアって感じ。」とエヴァも言う。

「そう?そうかな。じゃあ、緑のドレスにするわ。みんな、ありがとう。」

とジュリアはホッとしたように言った。

それを見てエヴァが

「私達の見立てを信じてね。きっとその日、うまくいくわよ。」と言ったので

「ありがとう。大丈夫。負けないわ。」と言いながら、ジュリアもなんとなくラッキーカラーのような気がして、心強く思うのだった。


 さて、当日。

へイエス先生はわざわざジュリアの屋敷まで迎えに来てくれたのだが、ジュリアは屋根裏の自分の部屋にいたので、なかなか出ていくまで時間がかかってしまった。

「お待たせしてすみません。私の部屋、遠いもので。」

ジュリアがそう言うと、先生はちょっと不思議そうな顔をしたが、

「いや、全然問題ないよ。」と、にっこり笑ってくれた。そして、

「きれいだね。いつも制服だから君のドレス姿はなかなか新鮮だ。」と言ってくれた。


 舞踏会に行く馬車の中で、ジュリアは

「これね、母のドレスなんです。私、婚約してからいつも青いドレスだったので、でも新調なんかさせてもらえないし、母のドレスを少し直して着てます。エヴァたちが私は緑が似合うから緑を着ろって言ってくれて、そう言ってくれたらなんだか緑のドレスがラッキーアイテムのような気がしてきました。私って、へイエス先生がこうして気遣ってくださるし、エヴァ達みたいに良い友達がいて、すごく幸せ者だなあって思います。」

と、とっても嬉しそうに言う。

「ドレスは新調してもらえないのか?」

「あ、あの、それは」

「いや、すまない、立ち入ったことを訊いてしまった。申し訳ない。忘れてくれ。」

「いいえ、先生だったら話しちゃいます。私ね、叔父たちとは違う生活をさせられてるんです。私の部屋は屋根裏部屋だし、ドレスとか新調してもらえないし、学園に行かない時は家の掃除や洗濯をしてますし、食事は使用人と一緒に賄いを食べてます。でもね、それがまたいいところがあって、使用人のみなさんはとってもやさしくしてくれるし、お料理覚えたし、掃除や洗濯も、アイロンかけだってできるし、お裁縫もできるようになりました。それにね、屋根裏部屋って空が近いでしょ?鳥さん達が来てくれるんです。とってもかわいいんですよ。」

ジュリアは楽しそうに教えてくれた。

「そうなのか。君は偉いね。逆境にひねくれないで、明るく笑ってる。でも、我慢し過ぎちゃいけないよ。無理しないで人に頼ることも大事なことだ。私で良ければいつでも相談に乗るからね。遠慮するんじゃないよ。」

「へイエス先生って優しいですね。ありがとうございます。でも、だめ。きょうはこれから舞踏会です。なんか面白いこと話しましょう。でないと私、泣けてきちゃう。めったにしないお化粧したのに。あはははは」

へイエスは無理して笑うジュリアを抱きしめてやりたかったが、余計泣かせてはいけないと、ぐっとこらえて頭を撫でた。

「先生、こんど、先生のところに」

そこまで言いかけた時、会場に着いた。

馬車を降りる時手を取ったへイエスはジュリアが震えているのを感じた。

へイエスは小声で「大丈夫だよ。」と囁いた。


お読みいただきありがとうございます。

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