家族へ紹介
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翌日、ジュリアとへイエスはスノウに転移してもらってへイエスの実家に行った。
門のそばで姿を現し、門衛に顔を見せると、門衛は驚いて中に案内し、執事が走り出てきた。
「坊ちゃま、おひさしぶりでございます。」
「ああ、元気だったか?」
「はい、おかげさまでこの歳になりましても風邪一つ引きません。」
「それはなにより嬉しいな。シュワルツには元気で長生きしてもらわないとなあ。」
「有り難いお言葉でございます。」
「父上はご在宅か?」
「はい、父上様も、母上様も、兄上様も、みなさまいらっしゃいます。」
「では、まずは父上に会いたいのだが。」
「はい、ご案内致します。」
「あ、彼女のことはふせておいてくれるか?婚約者なのだが、驚かせようと思ってな。」
「おお、そうですか。申し遅れました、私執事のシュワルツと申します。どうぞよろしくお見知り置きください。」
「ジュリア・マクレガーと申します。どうぞよろしくお願い致します。」
そう言ってにっこり笑うと、シュワルツは目を瞠った。
「坊ちゃま、こんなおきれいな方とどこでお会いになったのですか。いやあ、素晴らしい。」
フィリップの父は執務室にいるようだった。
シュワルツがドアをノックして、入っていき、2人はドアの外でフィリップが前にジュリアを隠すように立って待っていたところ、ドタドタと足音がして父がドアを開けた。
「フィル、どうした?なにかあったか?」
「父上、ご無沙汰しておりました。お元気そうで何よりです。」
「お前は大丈夫か?まだ学校があるのだろう?どうしたのだ?」
フィリップは少し体をずらしてジュリアが父の視界に入るようにした。
父はジュリアを見ると、フィリップに目を移し、
「あ、えー、初めてお目にかかる。アレン・へイエスと申します。」と言った。
「ジュリア・マクレガーと申します。どうぞよろしくお願い致します。」
「まあ、どうぞお入りください。」
父は明らかに戸惑っている。フィリップはそれを見て、明らかに楽しんでいる。
「シュワルツ、お茶を頼む。」
父はそう言って2人に応接椅子に座るよう促した。
「ところで、フィル、どういうことか説明してくれるか?」
「はい。実は私、この、ジュリアと婚約しまして、ジュリアの家の婿養子になることにしましたので、ご報告に参りました。」
「・・・ッ今なんと言った?」
「婚約の報告に参りました。」
「お前がか?この令嬢とか?」
「はい」
「フィル、どうしたのだ?」
「どうしたとは?」
「いや、その、なんだ、お前が婚約とかなにかの間違いではないのか?」
「俺が婚約してはいけないのですか?やめてください、ジュリアが不安そうな顔をしているではありませんか。」
「いやいや、ジュリア殿、決してそのようなことでは。私は息子は婚約をするような甲斐性があるわけがないので、少々訝しく思いまして。お気を悪くされると申し訳ないのですが、なにか息子が失礼なことでもしたのではないでしょうか。」
「とんでもない。へイエス様はいつも私を助けてくださって、とても優しくしてくださってます。」
「おい、本当か?お前、本当に婚約したのか?」
「はあー、ここまで信用がないとは。」
「そうか、本当なのだな。いや、これは大変失礼した。ジュリア殿、どうかお許しください。この息子はこの歳になるまで全く女気もなく、結婚など想像もできずにおったもので、驚きのあまり狼狽えて失礼なことを申しました。」
父はそういうと
「シュワルツ、ミシェルとウイリアムとハロルドを呼んできてくれないか。」
「畏まりました。」
「それで、いつ婚約したのだ?」
「先週末です。
「そうか、それでいつごろ結婚式をあげようと思っているのか?」
「できれば今日にも。」
「き、今日か?」
「詳しくは全員揃ってから説明しますが、そのつもりで来ました。」
「・・・・・・」
「父上、ジュリアがまた不安そうな顔をしています。」
「ああ、いやいや、決して反対するとか、疑っているとかいうことではありません。まあ、愚息のことは疑わんでもないのですが、あなたのようなご令嬢を疑うなどということはありませんので。」
父が汗を拭きながらそう言っていると、ドアが開き、母と2人の兄が入ってきた。
「まあまあまあまあ、フィル、あなた婚約したんですって?このお嬢さんと?可愛らしい方ねえ。はじめまして。母のミシェルです。よろしくお願いしますわね。」
母がにこやかに、そしてジュリアを上から下まで観察するように見て挨拶をした。
「ジュリア・マクレガーと申します。どうぞよろしくお願い致します。」
「ジュリアさんとおっしゃるのね。お若いわね。フィルは29ですけど、よろしいの?」
「はい。」とジュリアはにっこり笑った。
「まあー、かわいらしいこと。」母もニコニコしている。
若い方の兄が
「はじめまして。ハロルドです。よろしく。」
と、手を差し出してジュリアに握手をした。
「フィルなんかで本当にいいんですか?こいつ、気の利いたことも何も言えない朴念仁ですよ。」
ジュリアは
「まあ、朴念仁だなんて。フィル様はとても親切で優しくて、素敵な方ですわね。」
とにっこり笑った。
ハロルドは驚いたような目でそれを見て
「おい、フィル、どんな汚い手を使ってこんなきれいなご令嬢を落としたんだよ。」とフィリップに囁いた。
「ごほん、私はウイリアム・へイエス、フィルの兄です。どうぞよろしくおねがいします。」
上の兄は落ち着いた雰囲気の男性だった。
フィリップに小声で訊いた。
「お前、もしかして生徒に手を出して責任を取るのか?」
「人聞きの悪いことを言わないでください。確かに彼女は生徒でしたが、もう学園はやめています。。俺も今月末で退職です。クビではなく、自分の意思で退職します。」
「そ、そうか。いや、すまない。お前が婚約と言うのが、あまりにも驚きでな。」
「はあ、俺は家族からなんだと思われているのだ。」
フィリップは王子の婚約のことからのあらましを家族に話した。
母が涙を拭って、
「まあ、あなた、苦労したのねえ。これからは私が母ですからね。甘えてちょうだい。」
と言うと、ジュリアは嬉しさに涙を落とした。
「すみません、とっても優しくしていただいて、涙が出ちゃいました。」と困ったような顔で笑った。
「ジュリアはいつもすごく頑張っていて、空元気を出して強がって笑っているのだ。どうかみんな、ジュリアを可愛がってくれ。」
「もちろんですよ。お買い物行ったり、美味しいお菓子食べに行ったりしましょう。」
母が楽しそうに言った。
「はい!」ジュリアもにっこり。
「まあ、どうしましょ。ジュリアちゃんってすごく可愛いわね。これは危ないわ。フィル、気をつけなさい。ぼやぼやしてると横取りされるわよ。」
「母上様、私はそんなことありませんけど、私はフィル様があまりにも素敵すぎて、きっと女の人たちが群がってきて私なんか押しのけられちゃうんじゃないかって心配でなりません。」
ぶはっ、ハロルドが吹いた。
父とウイリアムも爆笑した。母ですら笑っている。
「あの、みなさまどうなさったのですか?私、なにかおかしなこと申し上げましたか?」
ジュリアが戸惑っているのを見て、フィリップが
「俺はこの家族からまったくモテない男だと思われているのだよ。そして、それは真実だ。」
と説明したのだが、
「まさか。フィル様ほど素敵な方はこの世にいらっしゃいませんわ。」と力説する。
「わっははははは、ああおかしい。おいフィル、やっぱりお前、なんか汚い手をつかっただろう。」
「ふん、なんとでも言え。」
「ところでフィル、あなたきょうにも結婚式を挙げたいって言ってたんですって?」
と、母が話題を変えた。
「はい。実はまあ、形だけでもしよう、それなら俺の家族とやろうということにしたんです。ジュリアはドレスは持参しておりますので、どこかホールででもできれば。」
「まあ!そうですの!じゃあ、これからジュリアちゃんを磨き上げて用意しますわ。あなたたち、会場の準備をしていただけますわね。」
「あ、ああ、そうだな。」父が同意し、兄たちがそれに続いた。
どうやらこの家のボスは母上のようだ。
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