36 そんなキャラでしたか
よろしくお願いします。区切りを考えてちょっと短めです。
日曜日は快晴で気持ちの良い日だった。
佐々木さんに誘われたものの、あの時は酔っ払っていたようだし、気の迷いなのではないかと思ったが、交換したSNSには待ち合わせの場所と時間が届いている。
それでも、もしかしたら酔った勢いでしたと謝られるかもと思いながら待ち合わせ場所に行くと、果たして佐々木さんがいた。
「お、オマタセシマシタ?」
「いや、今きたところ。チケット買っておいたから」
手渡されたチケットと佐々木さんを見ながらモゴモゴと答える。
「あ、ありがとうございます。あのぅ…」
「自分が誘ったのでチケット代はもたせてね」
「…はい、アリガトウゴザイマス…」
緊張してしまってうまく言葉が出ない。
だって勤務じゃない今、こうして外でよく見たら佐々木さんはカッコいい部類の人な気がする。なんだろう、立ち姿がスッキリしていて服がきれいに見える。ただの白っぽいシャツにグレーのパンツ、黒っぽいジャケットと普通なのに。
「どうかした?」
いつの間にかじっと見ていたようで佐々木さんが困ったような顔で聞いてきた。
「いえっ、何でもありません!」
「ふーん…もしかして、見とれてくれたり?」
「っ!!そんなことは!」
「そう?そのほうが自分としては嬉しいけど」
顔が熱くなってしまい『私ってチョロすぎ!』と恥ずかしくなる。佐々木さんは何もなかった風にアイスティーを買ってくれて、二人で座席へ向かった。
映画は昨日の飲み会で話題になったアメコミが原作の作品でマルチバースというのが私にはよく理解できないけれど面白かった。映画館の外はまだまだ明るくて、ドンパチしていた映画との落差に変な感じがした。
「え、難しかった?」
「ええ、少し。でも最後はすっきり終わってくれたので良かったです」
「ハッピーエンドがいいんだ?」
「うーん…そう、かな?」
ショッピングモールの中を移動しながら映画の感想を言い合う。なんて言えばいいのか考えている間、佐々木さんは待っていてくれる。
「そんなにすごい幸せにならなくても、一所懸命な人が報われるのは嬉しい、というか」
佐々木さんはニコニコしている。
「映画はもちろんヒーローが勝ってスッキリしたけど、途中ヒーローが普通の人たちのために頑張っていたのが、こう…」
「うん」
「あの…」
「うん?」
「…どうしてそんなに笑顔なんですか…?」
「頑張って説明しているのが可愛いなって思って」
「かっ…!?」
「あのさ、可愛いなとか好きだなとか思わなかったらデートになんか誘わないよ」
「デっ…!」
「さっきから一音でしか返事してないね」
「いっ!」
あははと笑う佐々木さんにそれ以上なんと言えばいいのかわからなくなってしまい、私はちょっと俯きつつ佐々木さんの横を歩いた。その後は本屋さんを除いたり文房具を見たりして、最後にアメリカンチャイニーズのお店でプレートを頼んで食べることにした。
「このお店、都会にしかなくて行ってみたかったんです。こんな場所に進出してくれるなんて嬉しい!」
「この甘酸っぱいチキンがオススメだよ。あとは…エビかな」
「ちょ、まさか、食べたことがあると?」
「前に出張で」
「えーいいですねぇ〜」
「まあ、ほら今日こうして食べられるわけだし」
「はっ、そうですよね!じゃあそのオススメにします!」
佐々木さんはその他に麺やご飯を選べるセットを頼んでくれたのでシェアすることにした。想像通りの味に夢中になってモグモグ食べていると佐々木さんがポツリと言った。
「食事をとるのが、こんなに楽しくなるとは思ってなかった」
「あ…ランチのこと?ですか?」
「うん、まあそれもあるけど。この2週間すごく忙しくて昼に出るなんて無理だったでしょ、それでも楽しかった。君が作って来てくれたオニギリを多田さんと三人で慌てて食べてさ、そんな状況なのに、カップの味噌汁が美味しくて、オニギリが美味しくて。役所で一人で食べるのがとかって思っていたけど、誰と食べるのかが自分にとっては大事だったんだなって」
ものすごく甘い雰囲気でニコニコしている佐々木さんにまた顔が熱くなる。そして、『あれ、この話の流れは…』と思う間もなく、
「あのさ、自分、相田さんが好きだよ。今回、仕事の途中から気づいていたけど、会議が終わるまではそんなこと言ってる場合じゃなかったから黙ってた。多田さんへの恩返しも絶対に失敗できないって思ってたし。でもこの後はそこまでの忙しさはないだろうし、他の人に君の目が向く前にきちんと伝えて意識してもらわなきゃって思って。それに多分、来年度は自分は海外に派遣になると思うからその時は一緒に…え、ちょっと、相田さん?」
びっくりしすぎてチキンが飲み込めなくて、佐々木さんがお水を差し出してくれなかったら大変なことになっていたかもしれない。
食事のあと佐々木さんは『仕方ないな、こんなに可愛くて』と言ってまた私を赤くさせた。どうしちゃったのこの人、というのと、正直嬉しいのとでチョロすぎな私はほんのり恋心が芽生えたのを自覚した。
お読みくださりありがとうございました。




