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異世界派遣物語  作者: 青木薫


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14/40

14 出立

よろしくお願いします。

 教会に戻ってアル、ヴィタ、アリーチェたちと一緒に畑に苗を植えた。明日まで置いておいたら萎れてしまいそうだったから。水やりをして、シスターを呼んで見てもらった。彼女はとても喜んで子どもたちをたくさん褒めてくれた。


「これまで、小さいからって私がなんでもやってばかりだったけど、本当はもうみんなこんなに大きくなっていたのね。これからはいろいろと頼ってしまいそうよ、大丈夫かしら?」


「うん、私たちがんばる!」


「野菜だって毎日水やりしてちゃんと育てる」


「勉強も頑張るよ!ジーノに教えてもらうんだ!」


 シスターと話す嬉しそうな顔の子どもたちを見ながら僕の胸も喜びに満ちた。そして、ここを去る時がきたことを感じた。


 その夜、リーナが帰って来たので夕飯を食べてもらいながら話した。今日のディエゴとのこと、今までやるせなかった、向き合いたくなかった正直な気持ち。でもここ数日でそういう気持ちが薄れ、ここで生きていきたいという希望と目標が生まれたこと。


「僕は数日前に生まれ変わったような気がしたけど、きっと明日からの僕はまた今日とは違う僕になると思う。いや、これから、毎日新しい自分になっていける、そんな気がしているんだ。リーナ、これまですまなかった。不甲斐ない僕を許してほしい。これからはもっと頑張るよ」


 ちょっと情けない気持ちがしたけれど最後まで伝える。これは私ではなくジーノの気持ちだろう、でもこういうことが言えるようになったことが嬉しくもある。おそらく僕はうっすらと微笑むことさえできていたと思う。


「リーナ、この後、僕がまたメソメソしていたら叱ってくれ。ディエゴに話した時はあんなに偉そうにしていたじゃないかって、自分もみんなも一緒に幸せにするって言っていただろうって。そうしたらきっと僕は目が覚めてまた頑張れる。


 僕より子どものリーナにこんなことを頼むのはどうかなって思うけど、僕はもう1人で苦しいのを我慢する振りをするのは嫌なんだ。苦しい時は周りを頼って一緒に乗り越えてもらう。だって一緒に幸せになりたいからね。だから、リーナ、君が独り立ちするその時まで、どうかよろしく頼むよ」


シスターリカルダもお茶を淹れてくれながら聞いていた。


 リーナは、


「ジーノ、私だってここでみんなと幸せになりたいわ。独り立ちなんて」


と言ったが、僕は答える。


「今はね、そう思っていてもいいよ。でも、人は変わる。だから決めてしまわないで、そういうこともあるかもしれないって考えていてほしい。


 僕だって子どもたちが大きくなってしっかりして、この教会と院の運営が心配なくなって、僕の慰謝料も貯蓄に回るようになってきたら、他にしたいことをしようって思うかもしれないし。


 でもさ、独り立ちしてここを出ていくのは決して悪いことじゃない。それだって幸せの1つだって僕は思う。何と言っても自分の居場所が増えていくっていうことなんだから」


シスターがウンウンと頷いていた。


「ディエゴだって、あんな奴だけど、今日出会った時と帰りに荷物を運んでくれた時は、別人みたいに変わっていただろう?これからもすごく変わるかもしれないじゃないか。人って、そういうものなんだと思う」


「ディエゴさん…」


リーナの眉が下がり、困った気持ちが丸わかりになる。


「ああ、リーナに言い寄って迷惑かけていたのはあいつが悪いけど、彼は彼で大変だったからね、それこそ僕と同じで。気持ちはわかる。ま、行動は許せないから釘を刺しておいたしこの先も失礼なことをしたら締め上げてやるけど。


これからこの教会に通ううちに改心して立派になってくれるかもしれないから、そういう様子が見えるようになったら、話ぐらいは聞いてやってほしい」


「…」


「まあ、無理にとは言わない。でも変わろうとする姿が見えたらそこは認めてあげてね」


「うん…それは、そうする」


「ありがとう、じゃあ、今日はもう寝ようかな。明日はまた勉強と畑の世話と建物の中の掃除だ。することはたくさんある。でも少しずつがんばるよ。シスター、今日は僕、少しワインを飲んでもいいかな。実は街で買ってきたんだ」


「まあ、めずらしいこと。いいわよ、でも飲みすぎないようにね」


「はい、わかっています」


 そう答えながらも僕はきっと二日酔いになるほど飲んでしまうんだろうなと思っていた。そして、結果は思った通りになったわけだった。

お読みくださり、ありがとうございました。

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