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『彼女たちの『推し』の殺し方』〜天才俳優の一周忌、密室オフ会に集まった5人の女。全員【狂信者】につき〜  作者: GenerativeWorks


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第12話:『キサラギの真実』

「全員が引き金を引いた……」


密室を支配する絶望の沈黙。

誰もが己の犯した罪の重さに耐えかね、俯いていた。


そんな中、アサミだけがゆっくりと壁に近づき、貼られたメモ——『キサラギに、すべてを奪われる』を見つめていた。


「ねえ、麗華さん」


アサミが静かに問いかける。


「あなたは事件の夜、彼のアパートの部屋に入ったのね? そしてデスクの上に放置されていたこのメモを警察の目を盗んで持ち去った……違うかしら?」


「ええ……そうよ」


麗華はかすれた声で答えた。


「弟が飛び降りた直後、駆けつけた第一発見者は私だったわ。警察が来る前に部屋に入り、このメモを見つけた。……『キサラギ』という悪魔が渚を殺したのだと、そう信じたかったから……」


「なるほどね。けれど……私たちが探していた『キサラギ』という容疑者は、最初からこの世界のどこにも存在しなかったのよ」


「……え?」


ひまりが涙を拭い、顔を上げる。


アサミは全員に向き直り、メガネの位置をゆっくりと直した。


「考えれば簡単なことだったのよ。この部屋に集まった私たちは皆、彼を違う名前で呼んでいたわ」


アサミの指が、一人一人を指し示していく。


「麗華さんは実の弟として『ナギ』と呼んだ。

ユカさんと私は公式の仕事仲間として『ライトくん』と呼んだ。

イチゴは世界で唯一の親友として『うみ』と呼んだ。

そして、ひまりさんは地元の思い出として『なぎくん』と呼んだ」


アサミの瞳に、静かな確信が宿る。


「では、彼の本名は……? 麗華さん、あなたの苗字は何かしら?」


「私……? 私は……如月きさらぎ麗華よ」


「そう。彼の本名は『如月きさらぎ なぎさ』」


アサミは壁のメモを指差した。


「『キサラギ』とは、犯人のコードネームでも、秘密結社でもない。――彼自身の苗字よ」


「……っ!?」


麗華が息を呑む。ユカも、イチゴも、目を見開いた。


「どういうことだよ……!?」


イチゴが声を荒げる。


「あいつが自分の苗字を書いて、『すべてを奪われる』だの『ドアの前にいる』だの言ったってのか!?」


「そうよ」


アサミの声が密室に深く響く。


「『ライト』という虚像のスターを作り上げるために、彼は自分自身の本質……『如月渚』という人間を殺し続けた。ファンサイトの偶像であり、事務所の商品であり、夜の街の逃亡者であり、誰かの爆弾であり、故郷の王子様であり続けた……」


アサミの表情が、初めて痛切な歪みを見せた。


「けれど、あの日……すべての居場所を失った時、彼は悟ったのよ。自分を追い詰め、自分の人生と存在を食い尽くしていた真の化け物は、外部の人間じゃない。——『ライト』という虚像を演じ続けるために、泥を啜りながら生き残ろうとする自分自身……『如月渚キサラギ』という呪いそのものだったのだと」


『キサラギに、すべてを奪われる』


それは、芸能界の「ライト」が、己の中の「如月渚」に侵食されていく恐怖の悲鳴。


『キサラギが、ドアの前にいる』


それは、ベランダへ逃げようとした彼の目の前に立ちはだかった、ドアの鏡に映る自分自身の姿。


「あの子は……渚は……自分自身に殺されたの……?」


麗華が崩れ落ち、床に両手をついた。


「私たちが……私たちが彼に『完璧なライト』であることを求め続けた結果……彼は自分自身を化けキサラギだと感じて、絶望したというの……!?」


誰も言葉を発することができなかった。

事件のあまりにも惨めで、残酷で、完璧な真相。


その時、沈黙を守っていた密室のドアから、コンコンとノックの音が響いた。

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