転移とそして…
研究室を抜けて階段を駆け上がる。
きつく縛ってはおいたがシステムの力だ。
あんな拘束すぐに破るだろう。
「グルルルル…。ガウッ!!」
遠くの方でブチっという音が聞こえる。
ほら、やられた。
もうちょっとで地上だけど間に合うだろうか。
「葵さん!転移陣は地上出てすぐなんだよね!」
「うん…。あそこしか…おけなかった!」
「くっ…蔓よ!」
ミドリが後方に種を撒き植物の壁を作っている。
ワールドシステムの部屋、階段の入口もやっていたがどれだけ稼げるか…。
「せめて1秒でも…」
そう願っていると後方でブチブチと何かが引き裂かれる音が聞こえる。
足音も聞こえるが減速している感じは一切ない。
「あの牙チート能力すぎない!?」
そうして一心不乱に駆け上がって地上の小屋へと飛び出した。
「はぁ…はぁ…場所は!?」
「外に…!」
ドアを開けて全員が外に出た瞬間、狼も階段を登りきる。
すぐ目の前に転移陣が光っているのが見え、狼もすぐそこだ。
「間に合わん!余が…!」
「どけ!地上であれば…!」
ミドリがリリスを押しのけ地面から拳の形をした植物を生やす。
そしてその拳は小屋へと伸びて思いっきり叩きつけた。
「ギャウン!」
「おお!!」
バキバキ!と小屋が押しつぶれて原型を無くしていく。
「今の内に!」
私、アーサー、葵が転移陣に乗ったあと遅れてミドリとリリスが合流する。
「みんな乗ったね!お願い!」
「…転移!」
そうして目の前の景色が変わっていった。
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
数秒、全員が無言だった。
あたりを見渡すと見知った風景。
遠くの方に魔王城が見える。
「魔境…」
「咄嗟で…ここなら安全だと…」
う…。
「ぷはぁ…!助かった!」
全員が力を抜く。
「よかったです…。葵様、ありがとうございます!」
「い、いいえ。私だけじゃ…死んでた…」
「ミドリさんも最後助かったよ」
「死ぬ思いでしたよ…」
「余はもうあんなのと戦いたくはないのう」
はぁ…でもどうしよう?
あんな一撃で終わるみたいな存在、あそこに置いてきちゃった。
「あの狼、放置してて大丈夫かな?あたりを食い散らかしたり…」
「標的…私達。多分大丈夫…」
「あ、そっか、標的がいなくなれば悪さはしないんだね」
よかった、まぁどっちにしてもそれはまた後で考えよう。
「何はともあれ…」
そうして少し走り出し、遠くにある魔王城に叫び出す。
「帰ってきたぞぉぉ!!」
有益な情報と共にね。
その時、
「ガウッ!!」
地面から狼が現れ、私の左脇腹を食いちぎった。
「ぎっ…!!」
「なっ!?」
「魔王様!!」
「ぬしよ!」
「ひっ…!」
ぐ…やられた!
こんな…!地面に潜って一緒に転移していたのか!
「この…!」
そうしてどうにか反撃をしようとするがこちらへ向かって来ない。
その矛先を見るとアーサーに襲い掛かろうとしている。
「あ…?」
一体何を…。
ふざけるな、標的は私でしょ?
そんなことが許されて…。
頭の中が沸騰するかのように熱くなる。
「私は…ここだあぁぁぁぁ!!!!」
雷の槍を全力で狼に投げつける。
「ギャウッ!!」
走っていた慣性も加わりアーサー達を飛び越えて遠くの方へと吹き飛んでいく。
「こっちを見ろ!!」
「ガ…グルル…!?」
狼は怯えている。
そうして私は右手を上に上げ、唱える。
「メテオ!」
ズドォン!!という音とともに狼に隕石が降り注ぐ。
「ギ、ギャウ…」
まだ息がある。
「メテオ!!」
「ギ…」
「メテオ!メテオ!メテオ!メテオ!メテオォォ!!!」
ドゴゴゴゴゴゴゴオォォォン!!!
魔力を全て使い切って流星群を降らせる。
大きなクレーターができて狼がいた痕跡など何も残っていない。
ただのシミのようなものがそこにあった。
「魔王様…」
「あ…」
そうして私は倒れた。
6章終了です。




