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魔王様は足止めたい  作者: たっつん
カルル・ヴェイル
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クリスタルに眠る人

「…」

顔だちがどう見ても日本人だ。

この人、転生じゃなくて転移してきたのかな?

しかもこの人がカルルなら300年以上も前に…。

「魔王様、この方です。初めてお会いしたときはうつむいていてよく顔が見えなかったのですが、今確信しています」

アーサーが見上げながら言う。

「どういう…あ、封印魔術について教えてくれた人!」

ということは私の命の恩人。

つまり、このクリスタルの中に入ったのは少なくともここ数か月以内の出来事ってことだ。

「ん?あれは…」

周りをよく見ると帽子が落ちているのが見えた。

魔女のイメージと言えばという三角の帽子だ。

「とがった帽子です…不死鳥様が言っていたカルル様の特徴と完全に一致します」

ここまでそろっていたらもう確定と言っていいだろう。

この人はカルル・ヴェイル、そしてケンタウロス封印の時に私たちを助けてくれた張本人だ。

「近づきたいけど…多分今までこの機械が原因で苦しめられているからね…」

というかそもそもどうしてこんなことになったんだろう?

「彼女を閉じ込めているもの、おそらく魔法石ですね」

「あんなデカいのが!?」

「おそらく。リリス、部屋の地面に足を付けず彼女のもとへ向かうことはできるか?できないなら…」

「なんじゃ?舐めとるのか?できるわ」

そう言って一度しゃがんだ後、一足飛びでクリスタル、もとい巨大な魔法石へへばりついた。

「よっ!どうじゃ!」

「なるほど、罠ではないと」

「ぶち殺すぞ緑の!!」

いろいろとひどい。

「まぁ半分は冗談だ、すまない。ではその状態のまま魔力を籠めれるか?何か反応があるはずだ」

「む…わかった。覚えておけよ緑の…」

半分しか冗談じゃないのか…。

リリスは特に疑問に思わずそのまま魔力を流し始める。

すると巨大な魔法石は虹色に輝き始めた。

神々しくかなりきれいだ。

「これは…。もう戻ってきていいぞ!」

「む?わかった」

そうして魔力供給をやめて飛び降りで戻ってくる。

と同時に魔法石は輝きを失い始めた。

「余がここまでしたのじゃ、何かわかったのであろうな」

「…」

ミドリは黙り込んでしまった。

どうしたんだろう?虹色だと何かあるのかな?

「おそらく純度が…」

「え?」

「そうだアーサー。魔法石の純度がこの世のものではありえないほど高すぎる。あれであれば確かに人をそのまま封印することはできるが、高すぎて中の人を取り出すことがかなり困難だ」

「通常であれば属性が大きい色に染まるのですが、あれほどきれいな虹色は初めて見ました」

それほどすごいものなのか。

いやそれよりも…。

「つまりこの人を救出することは無理ってこと?」

「…いえ、わかりません。この研究室の中には世界に数個しかないものも保管されていました。それを使えば何とか…」

そっか…。

「壊せばいいじゃろう」

「やってみればいい。腕の方が壊れるよ」

「ぐぅ…」

「どっちにしろ中の人も割れるから私が許さないよ」

「すまぬ…」

能天気なのはたまに助かってるけどね。

「とりあえず研究室の中を調べてみよう。ワールドシステムの機械を触ってみるのはそれが終わってから」

間違って動いてめちゃくちゃになるのはいやだからね。

そうして研究室の中を片っ端から調べて回ることにした。


「アーサー、この素材のAの部分を…」

「はい、こっちにありました」

ミドリとアーサーが二人でよくわからないことを話している。

私は素材とか全くわからないのでお手伝いしかできないね。

「えーっと、この資料は…」

とりあえず私にしかできないことをやらなきゃと思うけど…うん、わからん。

どれもこれも日本語で書いてあるけど素材とかも即興でつけたみたいな感じだし器具とか使い方も謎だしほんと暗号だ。

「ぐがー…がー…」

リリスは寝ている。

こんなところで…うらやましい限りだ。


そうして1時間ほど調べまわっていると事態は動き出した。

「魔王様、信じられないかと思いますが…」

ミドリがこちらに来た。

「どうしたの?何かあった?」

「あの魔法石、おそらく解除可能です」

「え!?難しいって話じゃ?」

「それが…必要な質の必要な素材が1箇所に全て集まっていました。それもほとんど手を加える必要もない状態で」

…どういうこと?

「アーサー、こっちへ持ってきてくれ」

「はい」

アーサーが薬液の入ったビーカーを持ってくる。

「いやあの、色がどす黒いんだけど…」

「これを魔法石にかければおそらく解除が可能です」

「…」

黒い液体はボコボコと沸騰しているかのような状態だ。

それに中で何かがグネグネと動いている。

「…これ、かけても大丈夫なの?」

「もちろんです、これ以上のものはありません。まるでこうなることがわかっていたかのようで…」

なんでこれ見て通常運行なんだ…。

…ま、見た目に反して安全っぽいし私にかかるわけじゃないしいいか。


「ほら、起きるんだ」

「ふぎゃっ!!」

リリスを蹴って起こしだすミドリ。

もう少し優しく起こしてあげて…。

「ふわあぁ…なんじゃゆっくり寝とったのにのう…」

意外と平気そうだ。

「これをさっきの魔法石にかけてくるんだ」

「ん?なんじゃこれは!?気持ち悪いのう!こんなものあのでかい娘にかかったら死ぬのではないか!?」

「問題ない。安全なものだからな」

「…まぁよいが」

「あ、間違っても自分にはかからないように」

「何が起きるんじゃ!?怖いことを言うでない!」

不安になって来たな…。


そうしてもう一度ワールドシステムの部屋に行き、リリスが液体を片手に魔法石にへばりついた。

「ではかけるぞ。2,1…」

スッと液体を上からかけてすぐに離れる。

ジュワアアァァ!!と熱いフライパンに水をかけたような音がする。

ゆっくりと魔法石は下降していく。

さっきまであった魔法石は完全に溶け、中の女の子だけが床へ転がった。


「ほんとに溶けた…」

…大丈夫だろうか?

正直駆け寄りたい。

ただ駆け寄っていいものだろうか…。

何かあったら…。


そうしてどうしていいかわからず待っていると

「ごほっ!ごほっ!はぁ…ごほっ!!」

あ、ちゃんと生きてる!

「はぁ…はぁ…ごほ…」

「あの、大丈夫…?」

「うひぇ!?」

急話しかけられて驚いたのか顔を隠すように身を縮めた。

「ごめん、私たちは…」

「あ…な、なに…!?あ…お…お…?」

「お?」

「お腹空いた…」

そうしてバタンと倒れたのだった。


第一声、お腹空いたか…。

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