地下の研究室
階段の奥の方を少し覗いてみるが薄暗い状態が続いているだけでなにがあるかはよく見えない。
「よし、心して…ってちょいちょい!!」
リリスがズンズンと進んでいこうとするので首元をつかんで止める。
「ぐえっ…何をする!せっかく先陣をきってやろうというのに。」
「何じゃないよ!さっき注意したでしょ?罠の可能性もあるし認識魔法なんてめちゃくちゃなもの使ってくるんだよ。慎重にいかなきゃ!」
「はぁ…ぬしよ。これだけ巧妙な隠し方をしておるのにもう罠などないじゃろうて。それに余は小娘が床の扉を開けたのをしっかりと見た。ぬしらもそうであろう。覚えているものがいる限り問題にはならぬ」
「う…そうだけど」
急にまともなことを言うね、でも…。
「ふむ、確かに。複数人であればこのバカの言う通りそこまで障害にはならないかもしれないですね」
ミドリが考えながら割り込んでくる。
「え?」
「それに辺りに充満している嫌な魔力はその認識魔法が原因の可能性が高いです。床の扉を外した瞬間、少しずつ魔力が弱まっています」
「そっか、じゃあそこまで身構える必要もないのかな?」
「緑のぬし…『バカ』とはなんじゃ。もう少し敬え」
バカ呼ばわりが気に障ったらしい、ちょっとめんどくさくなる気配…。
っていうかミドリさんの中でリリスの位はかなり低くなってる気がする。
「魔王様、大丈夫です。何かあってもこの『バカ』が全部引き受けてくれるでしょう。ほら、早く行け」
にっこりとこちらに向かってミドリが笑ったあと、リリスに対して手で払うような動きをする。
「こっちを見ろ緑の!勝負じゃ!余とぬし、どちらが強いかはっきりさせようではないか!」
「返り討ちにしてやる」
「ちょ…何やってんの二人とも!」
この二人こんな相性悪かったっけ!?
「はぁ…行かないなら私が先に行きますよ」
と思っていたら呆れ顔でアーサーが階段を下りていく。
「あ、待ってアーサーちゃん!私も行くから!二人とも、喧嘩は帰ってからしてね!」
「わかりました」
「ぬ…勝負は帰ってからじゃ!」
助かった、持つべきものはアーサーちゃんか。
そうして4人、一歩ずつ階段を下りていく音が聞こえる。
先頭はミドリとリリス、後方に私とアーサーだ。
一体何が待ち受けているのか。
そうして1分ほど降りていくと1枚の扉が見えた。
「目的のものはこの奥かな?」
念のため毒や罠の確認をしてからゆっくりと扉を開ける。
「ここは…」
見るとそこは何かの研究室のようだった。
中央に机、壁には引き出しだらけの棚、そして資料のような紙が地面や棚の上などに大量に散らばっている。
奥にも扉があってさらに部屋があるようだ。
「とりあえずここの主は片付けが苦手ってことはわかったね」
机の上は整頓されているようだが足の踏み場がほとんどない。
「…この素材は!こっちも!この研究室、とんでもなく貴重なものが大量にありますよ!」
先に入っていったミドリさんが楽しそうだ。
「何があるかわからないしあんまり引っ掻き回さないようにね」
「…いずれにせよ詳しく調べるのは時間がかかりそうですね。読めません」
資料をめくりながらアーサーは言う。
「どういうこと?」
そう言って一枚の資料を拾うと私にとって見覚えのある文字が現れた。
「これ…日本語だ」
どういうこと?
私以外にも転生者がいるということ?
「読めるのですか?」
「え?あー…うん。なんて言ったらいいか…とにかく知ってる文字」
この世界の文字は転生前の世界とは違う文字で構成されている。
私がこっちの世界の文字や言葉もわかるのは勉強したからではなく転生して最初からわかっていたかのように頭の中で理解ができたからだ。
なぜかはわからないけど多分転生特典とかいうやつだろう。
「そうだね、知ってはいるんだけど…内容が専門的すぎて何が書いてあるかわからない。期待されても困るかも…」
「いずれにせよこの量は読み切れんじゃろう、紙以外のものを探すべきではないか?」
確かに。
その前に先にあるドアを開けて安全を確保した方がいいだろう。
そう思い、先にあるドアの前に立とうとしたらアーサーが1つの資料を持ってくる。
「待ってください魔王様。この部分を読んでみてください。おそらく名前です。もしかしたらカルル・ヴェイルと書いてあるかもしれません」
「そっか!」
確かに研究の資料であれば書いた人の名前が書いてあってもおかしくない。
そう思い、資料を受け取って読んでみると、
「進藤…葵?」
「変わった名前じゃの。ここらのものではないのではないか?」
日本人の名前だ。
やっぱり転生者としてここで研究をしていたんだ。
ただ、
「カルルではなかったね」
残念、そう思っていると
「いえ、魔王様。不死鳥が言っていた通りならカルルは本名ではないはずです。このシンドウアオイという名前が本名なのかもしれません」
「あ、そっか!」
そう言えばあれペンネームだったね。
ダメだ、覚えておかなきゃいけないことが多くてよく記憶がすっぽ抜ける。
しっかりしなきゃ。
「ともかく、確実なことはまだ言えないし。次の部屋に行こう」
上にあった嫌な魔力はなくなったけど安全性はできるだけ確保しておきたい。
そうして全員がドアの前に立つ。
そして、それを開けると…
「これ…は…?」
「でかいのう…」
「…!」
「魔王様、アーサー、下がって!」
王都や不死鳥のところで見たものに類似した機械。
しかしその大きさは3倍ほど大きく、現在も稼働しているようだ。
中央の球体の手前には『World System』と書かれてゆっくりと回っている。
いやそれよりも気になるものがある。
上空にはとても大きなクリスタル。
その中に黒髪ロングの女の子が祈るように眠っていて閉じ込められていた。




