森へ出発
出発当日。
門の前で私とミドリ、リリスでアーサーが到着するのを待つ。
見送りはリッチー一人だ。
「毎度思うのですが魔王様が出る必要はないのではないかと…」
「何言っているのミドリさん!魔族のトップだからこそ行かないといけないんだよ。私がいないと始まらないでしょ?」
「そ、そうですか…」
前回までの旅は事情があったのでともかく、今回は本当に私行く必要ないから正直ごり押しだ。
書類仕事もいいんだけど気が滅入ってくるし外に出る機会は逃さないようにしないと。
「城のことはお任せください」
「リッチーさん、毎度ごめんね」
「いえ、お気になさらず」
こう言ってくれるのはありがたいね。
「余は待っている方がよいのじゃが…」
「リリスは待ってたらトラブル起こすでしょうが」
連れて行かない選択肢はないと言っているのにね。
「あの、お待たせしました。…すみません」
そんなやり取りをしているといつの間にかアーサーが到着していてなぜか申し訳なさそうにこちらを見ている。
いや、なんでか想像はつくよ。
おそらく原因であろう人物を探す。
「大丈夫だよアーサーちゃん。ロンギさんお叱り会場はここで合ってる。今回は何をしたの?どこにいるの?」
キョロキョロと周りを見るがそれらしき人は見当たらない。
「いえ、今回はロンギ様でなく…」
「私が見送りでは不満か?」
城の奥からロンギさんとは別の聞き覚えのある声が聞こえた。
「えぇ!?海王さん!?」
いやなにやってんの…?
「ロンギからアーサーを頼むと言われてな。気合を入れてここに来た」
「はぁ…」
どういうことだろう?
「途中海があるだろう。対岸へ移動する必要がある、ということは私の出番というわけだ。それに旅の準備もこちらで行っておいた」
パチン!と指を鳴らすとガラガラと何かが運ばれてくる音が聞こえる。
「よっせ、よっせ」
海王さんの部下であろう小さいタコやイカたちが大きな荷車を持ってこちらへ近づいてくる。
私の全長2倍くらいありそうだ。
「足りないだろうか?」
「…ファイアボール」
おっと、手が勝手に動いた。
あー、荷物に火がー。
「な!?うおおお!!ウォーターボール!!」
必死のウォーターボールによって無事鎮火する。
多分燃えたのはガワだけだろう。
「一体何をする!?旅の荷物だぞ!」
「はぁ…。あのね、別に頼んでもないしこんなに持っていけないし迷惑になっちゃうんだよ。それに海って言っても魔境の中でしょう?転移ですっ飛ばせるから必要ないの」
「な!?…そうだったのか。どうりでシレーヌが何かうるさいことを言っていたはずだ」
シレーヌさんを振り切って来たのか。
これは海王さんが戻ったら大変なことになるかもね。
…というか出発だけに体力を使わせないでほしい。
「アーサーちゃんはちゃんと自分で準備してるし必要なものはないよ。笑顔で見送ってもらえれば十分だから」
「そ、そうなのか?」
「はい…」
少し申し訳なさそうにアーサーが答える。
かわいそうに。許可なくやってるしただの善意の押し付けだから気にしなくていいよ。
「まぁ気持ちだけは嬉しいから。今度からシレーヌさんや私に確認してから行動してね」
「すまなかった…」
わかってくれてよかった。
ロンギさんよりまだちゃんとしてるからやりづらいんだよね。
「じゃあ、そろそろ行くよ」
「気を付けて行ってこい。アーサーに何かあれば許さんからな」
「…当然だよ」
「転移の準備をします」
アーサーが転移陣を形成し始める。
「また歩き詰めかの…。腹を満たせるものがあるといいのじゃが…」
「ミドリ、魔王様を任せます」
「あぁ、わかっているよ、リッチー」
そうして転移陣の上に乗る。
「行ってきます。情報、絶対持って帰るから」
「お早いお帰りをお待ちしています」
転移陣が光り、目の前の景色が変わっていく。
…目の前に何か壁のようなものが見えた。
「え?」
なにこれ?転移失敗?
「魔王様、違います。少し下がってください」
ミドリに言われたように下がっていくと全貌が見えてくる。
これは…。
「でっかい…」
何千年選手だろう?
普通の木の10倍はありそうな太さがありそうな木がずっと続いている。
「自分の森にもないような種類ですね」
それにこれ、森というよりジャングルだ。
10メートルも進んだら位置がわからなくなりそうだ…。
これは…覚悟を決めなきゃ。
「よし、行こうか」
互いに頷きあい、森の中へと入っていく。
この先で魔王の真実を知ることとなるとは知らずに…。




