治療
魔王城の地下、冷たい牢屋の中で私とミドリが真剣に向き合っていた。
私、まるで罪人だね。
「では、行きますよ…」
ミドリがそう言うと深呼吸をしながら衝撃に備える準備を整える。
「…よし来い!」
その言葉を聞いたミドリは固定された私の右腕に注射器を刺し、中の液体を注ぎ込む。
「どうでしょう?」
注射器を抜いたミドリが尋ねてくるが、5秒、10秒と時間が経っても何かが起こっている様子はない。
「…?いや、何も起こってないように…。い!?」
瞬間、急に右腕が電気を帯びたようにビリィ!と激痛が走る。
「…!?いっっったあぁぁぁぁ!!!!」
え!?ちょ、やばいやばい!
ビクンビクンと右腕が自分のものじゃないかのように跳ね回る。
「おお!成功ですね!」
「ちょ…そんな悠長な!い!?ぐ…!」
ニコニコと興味深そうに右腕を観察しているミドリ。
「あと10分ほどの辛抱なので」
「10分!?長いよ!やばい痛い痛い痛い!ちょ…バカ!触らないで!」
「え?ですが拘束具が外れそうでしたので…」
あかん、これちょっとの刺激でもきつい。
これ耐えるしかないの!?
「ああぁぁぁぁぁぁ!!うおおぉぉぉ!!!」
どこから来てるかわからない怒りと気合で叫びまくる。
そうして10分、どうにか耐えきった。
「はぁ…はぁ…」
「大丈夫ですか?なにもこんなところで腕の神経の接続を行わなくても」
「いや、だって医療室で叫ぶと迷惑かなって…」
数日前、不死鳥の羽を持ち帰った私達。
それをミドリに渡し、動かなくなった私の右腕を直すための治療薬の調合をお願いした。
そして調合が完了したという報告を受け、ウキウキで向かったのだが治療中は激痛が走る可能性があると言われていくら叫んでも問題ない地下で受けることにしたのだった。
「でもこれ、麻酔とかでどうにかできなかったの?こんなに痛いのがわかっているなら」
「…可能ではあります」
「まぁできないよ…は?」
え?できるの?今の私はグーで殴ることも辞さないよ?
「待ってください!そうすると体の負担がかかりすぎるんです。不死鳥の効果は麻酔の効果も消す作用も生まれますので」
…なるほど、大量に麻酔が必要だし体が壊れる可能性が高い感じか。
「まぁ…だったらしょうがないか」
自然と戦闘態勢に入っていた体勢を平常時に戻す。
「でもこれで…」
拘束具を外してグーパーグーパーと違和感がないか、動けるかを確認していく。
「動けるようになったね!」
「お疲れ様でした。不死鳥の再生の力がこれほどとは…。本当に治ってよかったです」
「まぁまだちょっとビリビリはするけどね」
「治療を続けていればすぐに気にならなくなりますよ」
そうして地上への階段を上っていく。
重い地上への扉を開けると「うわ!?」「え?」といった声とともに何かがなだれ込んできた。
「え…?みんな!どうしたの!?」
アーサー、四天王、その他城にいる魔族たちがそこにいた。
「いえ、あの…。魔王様、右腕の治療について…その…どうだったのかと」
アーサー達がおずおずと心配そうにこちらを見ている。
なるほど、心配でわざわざ見に来てくれたのか。
だったら全力で応えないとね。
「お待たせみんな!完全に治ったよ!」
笑顔で右腕をあげて力こぶを作るポーズを作った。
「やったーー!!」
「よかったですぅぅ!!」
「病み上がりだ!それ以上は近づくなよ!」
こちらに飛び掛かりそうなみんなをミドリが止めている。
そして少し落ち着いた後、おずおずとリリスが前に出てきた。
「むぅ…すまなかったのう。余のせいで苦労を掛けたようじゃ」
リリスが珍しくいじらしい感じになっている。
「まぁ戦いにはこういうことよくあるもんでしょ。もう治ったし気にしてないよ」
「そ、そうか!」
なんだかんだでリリスもうちの一員だね。
今までのことがなかったかのように完全になじんでるよ。
リリスは魔王城に帰ってから四天王達に一対一で勝負を仕掛けた。
私がみんなに少しアドバイスをしたところ、ズメイ以外は完封される結果となった。
ズメイに関してはアドバイスを聞かず、絶対に真正面から戦おうとするため負け続きとなっている。
リリスはそのまま戦えば強いんだけど予想外の罠に弱すぎるんだよね。
ま、なじんだならいい結果だよ。
「よし、じゃあこれで次の行動が起こせるね。早速会議を始めよう!」
そう宣言するとリッチーが待っていましたとばかりに口を開いた。
「はい、右腕が治るまではと隠しておりましたがちょうど伝えたいこともございましたので」
「ん?どういうこと?何かあったの?」
「王都からファウストと名乗る者から手紙が来ております」
王都にあったワールドシステムの機械についてかな?




