最後の砲撃
『エネルギー充填…20%』
全員が立ちすくんでいる。
無理もない。
最高戦力であるユウシエッドたちが繰り出した技が一切効かないのだ。
さらに向こうの攻撃はニチレンのシールドでさえ簡単に破られ、ガード不可ときている。
どう考えても太刀打ちができない。
だから必敗、あがくだけ無駄…。
しかしユウシエッドは違った。
なぜなら勇者だから。
拳を握り、顔をあげ、その覚悟を決める。
「俺が全力の魔法で…」
「私が倒す」
だがそれを言わせるつもりはない。
「…は?」
信じられないような顔をしながらみんながこちらを見る。
しかし私は不敵な笑みで返してやった。
「魔王様!?さっきの攻撃を見てなかったんですか!?」
「そうじゃぬしよ、何を言っておる!そんな体で対抗なぞできるわけなかろう!」
アーサーとリリスが反論する。
でも誰かが犠牲になる覚悟なんて私は認めない。
そんなこと許されていいはずがないから。
「私が倒すよ」
もう一度言う。
「待ってください!…我々が時間を稼ぎます!そしてすぐに逃げれば…!」
「我もできる限りのことを!」
「ミドリさんらしくないよ。ズメイさんもどうやってあれを足止めするつもり?それにもう逃げればなんて段階はとっくに過ぎてるんだよ」
「いやしかしその間に葵の力を借りて…葵?」
「…」
葵はマザーシステムの前で立ちすくんでいる。
「もう…限界なのですね」
リッチーが少し悲しそうに言う。
「うん、私の体の方がもう持たない」
ゆっくりと浸食をしていた全てを消し去るモザイクもほとんど全身を回っている。
私自身もう存在が曖昧になってきているのを感じている。
「しかし…しかしそんな体で倒すなんて!」
「ハルさん…」
確かに今はアーサーとハルに支えられて何とか体を支えている。
一人で立つこともできない。
でも…
「大丈夫、私がやらなきゃ」
いずれにせよあれを倒さなければ何も終わらない。
「また…また犠牲になるのですか?」
「違うよアーサーちゃん。一度宣言したはず、私はもう自殺をしないって。そうじゃなくて生きるために私がやるんだよ」
「どういう…?」
こうなった以上もうどうしようもない、私は私自身を賭けに乗せるつもりだ。
「ふむ、悪くない目だ。そこまで言うからには勝算はあるんだろうな?」
ユウシエッドが剣を収めながらこちらに向かい合う。
「もちろん。ただ、みんなにも協力が必要だけど」
「なんでもしよう。それよりいい加減もったいぶらず教えてくれないか?あれを倒す方法を」
私はにやりと笑った。
一撃で山でさえ消し去るほどの熱線。
おそらくマザーシステムどころか魔境自体を消し去るつもりなのだろう。
だけど私にはそれに対抗する技を一つだけ持っている。
「魔功砲を撃つ」
「…?まこう…?」
「む!余を倒した時のか!あれはたしかにすさまじかった!」
王様が少しうれしそうに言う。
「しかしあの程度では傷一つ付けられんのではないか?」
「違うんだよ。この技は周囲の魔力を取り込んで撃つ攻撃。あの化け物が本当に魔力の塊なんだとしたら、あいつ自体をエネルギー源として撃てるはず」
「!!」
まぁその分反動もあるけど…。
「…いくつか質問をさせてほしい」
ファウストが聞いてきたので私はそのまま頷く。
「どうぞ」
「あれほどの魔力だ。撃った時点で魔境自体がなくなるんじゃないか?」
「無理やり収束させて斜め上に撃つ予定。全体に爆発なんてさせるつもりはないよ」
「周りへの被害は?」
「大穴が開いて宇宙へ飛んでいく。この場所へは被害は来ないよ」
「規模は?」
「ちょうど魔王城サイズ」
「協力と言っていたね、あれは?」
「あの化け物を取り込むにはそれなりの規模が必要だからね。私にありったけの魔力を分けてほしい」
「君自身は…いや、もう時間がないか。充分だ」
ファウストは役割を終えたと後ろに下がる。
「はぁ…本当に君はなんてことを考えるんだ」
ユウシエッドがため息をつきながら言う。
「正直こんな手段はとりたくなかったけどね。みんな、絶対に生きて帰るよ」
そうして私はみんなを見た。
みんなも私のことを見ている。
『エネルギー充填…80%』
「さ、もうほんとに時間がない!みんな、お願い!」
私は目をつぶって辺りに充満している魔力を集め始めた。
「わ、私…少しだけど…」
「葵さん」
「なんかわからへんけど魔力を分ければいいねんな!」
「シレーヌさん」
「これでダメだったら容赦しないぞ」
「海王さん」
「支えながらですが私も!」「自分も」「わたくしも」「我も続くぞ!」「魔王氏!拙者のパワーを!」
「四天王のみんな、ロンギさん」
「あー!!これで死んだらぬしのせいじゃ!」
「リリス」
「僕の魔力、全部持っていくがいい」「まさかこんなことになるとはな」「魔王さん…信じてます」
「ファウストさん、ニチレンさん、ワルクさん」
「王は逃げん」
「王様」
「我々王の剣、ここに捧げる」
「騎士団の人たち」
「魔王のため、海王様のために!」「行くぞ野郎ども!」「うおおぉぉぉ!!」
「海王さんの部下のみんな、ハーピィさんたち、城からついてきてくれたみんな」
「俺も忘れるな」
「…ユウシエッド」
「ふっ。そういえば俺は呼び捨てなんだな。惚れたか?」
「いや、下に見てるだけ」
「おい」
アホなことを言わないでほしい。
というか『さん』付け気持ち悪いからやめろって言ったのあなたでしょうが…。
そして最後に…
「魔王様、信じていいんですね」
アーサーの言葉に力強くうなずく。
「もちろん!アーサーちゃん!」
みんなの力にあふれてる。
こんな魔力、今まで感じたことがない。
今なら何でもできそうな気がする。
私は遠くにいる敵を見据えた。
「じゃあね!もうこんな因縁が起こらないことを願ってるよ!」
手をゆっくりと前にして唱える。
『100パー…』
「魔功砲!」
全てを終わらせる砲撃を放った。




