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魔王様は足止めたい  作者: たっつん
マザーシステム
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本物

「う…ぐ…」

「あーあー、何も言わなくていい。よく頑張った、こいつは俺が引き受ける。お前は少し休んでいろ」

そんな声がしてドン!と一足で遠くへ移動するような音が聞こえた。

勇者がなんで…というかどうやってここに…?

考えていると続けて離れた場所からガシャガシャと何人もの人が走ってくる音が聞こえた。

そのうちの一人がこちらに駆け寄ってくる。

「魔王様!生きてますよね!私のことわかりますか!?」

かすんだ目を向けると見覚えのある金髪が揺れる。

「あ…」

少し会ってなかっただけなのに懐かしく感じる。

アーサーが間に合ったのだ。

「ひどい…。こんなになるまで…」

「ア…サー…ちゃ…」

「しゃべらないで!すぐ治療します!治療魔法の使える方は手伝ってください!」

「はっ!」

そうしてアーサーの後ろにいた人たちも私の周りに集まってくる。

「外傷は後だ!傷ついた臓器の確認から!」

「折れている骨に気をつけろ!」

慌ただしく私の状態を確認していく。

「安心してください、王都の騎士団の方々です」

魔法をかけ、全身に治療の光が灯っていくのを感じる。

「んぐ…!」

思ったよりマズい状態だったらしく治療によって痛みが認識できるようになってきた。


あ、そうだ!

影勇者だけじゃなくまだあと3人影はいるはず。

さすがにユウシエッドだけじゃ4人相手は…。

「ボロボロじゃないか。僕が出した手紙は役に立ったようだね」

「はっ!親父が世話になったようだな!そこで見とけ」

「まさか魔王さんをここまで…。これ以上傷つけはさせません!」

また聞き覚えのある声だ。

ファウスト、ワルク、ニチレンの勇者パーティが勢ぞろいしている。

そうか、本当にみんなを連れてきてくれたんだ。


「早く来てくれー!俺だけじゃきついって!」

どこからともなく声が聞こえる。

「お、勇者様がお呼びだ。ちょっくら行って来るからそれまで死ぬんじゃねぇぞ!」

みんなが走り出す。

そしてあちこちからとんでもない轟音が聞こえ始めた。

王様の王撃に近い轟音や極大魔法を撃ちあっている音、竜巻が起こってそうな風も感じる。

「…」

空を見上げると光の筋のようなものが二つ高速…っていうか音速レベルで行きかっている。

あれなんだろ…いやユウシエッドか。

端から端まで全部おかしいしこれについていくのは絶対無理だったね…。

「はぁ…」

なんかもうため息しか出ない。


「ん…」

そうこうしていると回復が効いてきたのか少し動けるようになってきたようだ。

手をグーパーとしてみる。

「応急処置は完了しております。魔王殿、動けますか?」

騎士団の人が回復魔法を止め、少し離れる。

「ふ…く…!」

私は上体をゆっくりと起こし始めた。

「あ!魔王様、もう少し寝ていても…」

「ありがとう、アーサーちゃん。…大丈夫。ほかの…みんなは…?」

周りを見るとあちこちで騎士団の人たちが治療をしているのが見えた。

「駆けつけたときは気を失っている状態でした。問題ありません、すぐに目を覚ますそうです」

「そう…よかった」


「お…おき…た!」

「え?」

後ろを振り返ると葵がマザーシステムの前で作業を再開していた

「葵さん!よかった、無事で。あ…それとごめん、中断させて。…間に合うかな?」

「わ、わからない…。でも…どうにか…する…」

うつむきながら葵は答える。

「そっか…。ありがとう、作業に戻って」

少し微笑むとまたせわしなく作業を再開した。


「…」

正直今まで助けられてばかりだったな。

圧倒的に強い存在ばかりで私自身、そこまで大したことはできなかった気もする。

今回がいい例だ。

できることはやったつもりだけど基本的にほとんど足止めや時間稼ぎ程度で最後は私ではない誰かが…。

「魔王様?」

アーサーが心配そうにのぞき込んでくる。

「いや…」


「なーにを辛気くさい顔しているんだ。似合わないぞ」

剣をしまいながらこちらに向かってくる人影…っていうかユウシエッドがいた。

「え?ユウシエッド!?あの影勇者は…」

「あぁ、倒した。強さは過去一だったかもな」

いやこんな短時間に…おかしいって。

「こんなバカみたいに強い奴ら、俺達に任せとけばいいんだ」

「そんなこと言ったってインフレした戦闘力のほうか襲ってくるし…」

「なんか言い訳してるよ」

両手をあげて少し小ばかにするような顔でこちらを見る。

何だこいつ、むかつく。

いやまぁそういうやつだったね…。

「はぁ…あなたも体験してみればわかるよ。立ち向かうしかなくなるから」

「そんな事態は起こらないだろ?俺最強だから」

「ぐ…」

さっきの二倍むかつく。


「お、なんだ?また勇者の自慢話か?」

「え、ワルクさん!?」

「僕はそれは遠慮したいな」

「ファウストさんも!」

ワルクとファウストが一仕事終えたような顔でこちらに向かってきた。

「じゃあニチレ…」

「魔王さーん!」

「ごふっ!」

ニチレンが私に頭突きする形で突っ込んでくる。

「あ!ニチレン様!魔王様は怪我をしていますので!加減を…」

アーサーちゃん…もうちょっと早く言って…。

「魔王さんのピンチ、もっと早く私を呼んでくれればよかったのに…!」

「あぁ、ごめんね。っていうかみんなもう倒したの!?この短時間で!?」

3人は顔を合わせてにやりと笑う。

「余裕だったぜ」

「でかい魔法撃つだけの機械のようなものだったからね」

「はい、私は少してこずりましたが…」


「魔王様…」

「え?」

ミドリの声が聞こえた方を向くと四天王全員とリリス、ロンギ、ハーピー達など私の部下達が集結していた。

「ここまでとは…我も修行が足りんな」

「不覚でした。目で追えないだけでなく中央に侵入まで…」

「わたくしもしれやられましたな」

4人が謝罪をしていく。

「まぁ…さすがに敵が強すぎたからね。ありがとう」

「…」

「リリス?どうしたの?」

リリスがむすっとした顔でこちらを見ている。

「…ここまで差があるとは思わんかったからのう」

「あー…」

多分反応さえできなかった自分に納得が言ってないんだろう。

ま、ほっとけば元に戻るでしょ。


「えーっとあとは…海王さんと王様か」

「余のことを呼んだか?」

血まみれの状態で王様がこちらに歩いてきた。

「え!?王様!大丈夫なの!?」

「あぁ、親父なら大丈夫だ。この程度、俺も昔よく親父に挑んでなっていた」

「え?」

ワルクがよくわからないことを言っている。

「ワルクの言う通りだ。余も修行が足りんということだな!」

王様もわけわからないことを言っている。

誰か助けて…。


「エルクルちゃん!」

王様の後ろから海王とシレーヌ、その部下たちが顔を出した。

「タゴサク殿!」

「ええい、本名で呼ぶな!」

ロンギが海王さんに近づいていく。

「よかった、無事やってんな!」

「あ、ありがとう、シレーヌさん」

「いや、それよりジャスティスキャノンが…」

「何言ってんねん!全員無事なんが一番の朗報やろうが!」

海王がシレーヌにベシペシとしばかれている。


「全員…全員無事…」

そうか、全員無事に切り抜けられたんだ。


「じゃあ後は葵さんを待つだけ…」

マザーシステムが急に赤く光り出す。

『外部からのコマンド入力。深刻なエラーが発生しました。ワールドシステム、継続不可能。最終処置を取ります』

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