王撃
苦しい、どっちが前だろう…?
体が全然動かせない。
バラバラになりそうだ。
私が飲み込まれる直前、葵も含め全員が飲み込まれるのが見えた。
『全滅』という言葉が脳裏をよぎるがすぐにそれを消す。
私はまだ諦めてはいない。
ここまで来て諦めるなんてできない。
頑張れば魔法くらいなら出せる。
あの跳ね返し攻撃、半端な物じゃダメだ。
それに内部で攻撃をすると私自身がバラバラになる。
だから…吸収もできないほど大きな衝撃を!
それも外部からの攻撃で私が死なない程度に!
私は魔力を籠め始める。
ごめん、みんな。次のマザーシステムでは一緒に戦えない。
でもこんな終わり方は絶対させないから!
そして今できる魔法を繰り出す。
「メテ…」
「王撃」
ドカァン!!と近くで衝撃が起こる。
「うぷ…なに!?」
風圧で私に張り付いていた影が吹き飛んでいく。
まだ魔法を撃っていないのに衝撃があって解放された。
「ふむ、この程度か?余の筋肉は満足しておらんぞ」
「あ、あなたは…」
覚えのある声と姿に目を見開く。
「久しぶりだな、魔王殿。いつぞやの借りを返しに来たぞ」
「王様!?なんでここに!!」
信じられない人がここにいるのに
「なぜ?魔王殿が呼んだのだろう。前に共に来たアーサーという使いから呼ばれて飛び出してきたのだぞ」
「そっか、アーサーちゃん…いや待って」
納得しかけたけどトップが飛び出したらマズいでしょ。
「ぶはっ!なんじゃ!?新手か!?」
「ごほっ!ごほっ!」
「はぁ…くっ…」
次々と飲み込まれたみんなが影から脱出してくる。
「新手とかじゃないけど…いやほんと…」
「魔王殿の仲間か?見た顔もあるな!余が人間界の王である!」
「は?」
「なぜ王が!?」
もっともな疑問だ。
「おうおう!余を差し置いて何たる無礼な!これから余の大逆転が始まる予定だったんじゃぞ」
リリス…助けてくれたのにそんなヤンキーみたいな挨拶しなくても…。
「元気がいいな!今回はあきらめろ!次見せ場を作ればよい!」
「なんじゃと!?おぬし…ん?…強いのう。手合わせを願いたいものじゃ」
「それはいい!いつでも待っているぞ!」
なんか合わせちゃいけない二人を合わせてしまった感ある…。
「まぁ…これが終わった後でな」
王様の視線の先を見ると影が再生を始めているのが見えた。
まずい、とにかくこっちの作業を終わらせなきゃ!
「葵さん!…あれ!?どこ!?」
ワールドシステムの子機を見るとそこには誰もいない。
「こ…ここ…」
声の方を見ると手だけが地面から生えているのが見えた。
王撃で舞い上がった土をもろに浴びたらしい。
「うわあぁぁ!!葵さん!大丈夫!?」
「私たちも手伝います!」
ミドリとリッチーとハルが掘り起こし、ズメイが手をグイっと引っ張って救出する。
「し、死ぬかと…思った…」
「ごめん、救出してなんだけど作業続けられる?」
「や、やる…。もうこの場所…いや!早く終わらせる!」
そう言ってシステムの方へ走り出した。
完全に涙目だ。
「あ!そう言えば長老は?影にのまれたんじゃ…」
「大丈夫でござる!」
ロンギの方を見ると長老を担いでずるずると引っ張っているのが見えた。
よかったけど傷大丈夫なのかな?
「全員無事だな。見ているがよい、魔王殿、そしてその部下達よ」
王様は構えだした。
『は、排除を…継続…実行…』
少しおかしくなったかのようにシステムの声が鳴り響く。
「王様、ほんとに大丈…夫…?」
「王撃王撃王撃王撃ー!!」
壊れた機械のように王撃の連打をし始めた。
「ちょ…うわあぁぁぁ!!やりすぎやりすぎ!!」
地震が起きたかのように地面が揺れ、とてつもない轟音が鳴り響く。
災害でしょこれ…地形変わるんじゃないの?
そういえばこの人バグキャラの一人だったの忘れてた。
『は…い…じょ…』
そんなシステムの声など誰にも耳には入って来ない。
「こ、ここは…!できた!できた!も、もう影も…消えた!何もないから…!」
葵がこっちに向かって何か叫んでいるが轟音で聞こえない。
ほんと誰か止めて!
暴走させとけば勝ちみたいなキャラが一人いるとギャグがしやすくて助かります。




